2013年7月9日

第七十三話:兄、再来す。 第七十四話:お面 第七十五話:氷

角川Twitter小説コンテストにて執筆中の『チョッとした話』を読みやすいようまとめてみました。読了後面白いと感じてくださったら章タイトルや本文のファボやRTなどいただけるとありがたいです。 以下のURLからもどうぞ。http://commucom.jp/t/fo9FMO
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さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 部屋に戻ると、兄さんが当然のような顔をして座っていた。 「よぉ」  勝手に冷蔵庫のビールとつまみを取り出して一杯やっている。 「鍵どうしたの」 「管理人に開けてもらった。ついでに、入口の妙な女追い払っといたぞ」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-06 23:32:17
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 たぶん、あの悪魔のような女のことだろう。 「用件は何?」 「用がなきゃ、来ちゃいかんか」  相変わらずの言い草で、僕は苦笑した。  兄さんはことりとビール缶を置いて僕を見る。 「っつったが、ないわけじゃない」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-06 23:32:44
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 前に預けた卵、あるな? と、兄さんは聞いた。すっかり忘れるところだった。 「棚の上に置いてあるよ」 「お前にやる」 「え?」  思わぬ返事に、少し驚く。よくは覚えていないが、あの卵は曰くの品だったはずだ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-06 23:33:53
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「どうして」 「やっといたほうがいい気がしたんだ」  兄さんはスルメをぶちぶち噛み切った。  そのままバラエティ番組を見ながら酒盛りになって、翌朝目を覚ますと、もう兄さんはいなくなっていた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-06 23:34:02
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 ビール缶が散乱していなければ、兄さんの来訪はきっと夢のようなものに思えただろう。僕は二、三度首を振ってから、アイスを食べようと立ち上がり、冷凍庫を開いた。  その冷凍庫の中に、白髪の女の首が置いてあった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-06 23:34:26
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「――はじめ、まして」  咄嗟に無言で閉める。  疲れているのか、二日酔いなのか。にしたってタチが悪い。 「開けて、ください」  中からくぐもった声がしたので、僕は仕方なく、恐る恐る冷凍庫を開いた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-06 23:34:44
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 今度は女の子の脚がニョキりと伸びてきた。脚、腕、体、顔、ゆっくりと順番に、彼女は姿を現す。 「はじめまして、あなたのお兄さんの紹介で来ました。どうぞお世話をさせてください」  彼女は丁重に三つ指を付いた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-06 23:35:04
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 ――と思ったら、七月の熱に蒸発して、いなくなってしまった。 「……何なんだ一体」  彼女の姿は、跡形もない。  そのあと兄さんに連絡を何度か入れたけれど、ずっと話し中で応答してくれなかった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-06 23:35:12
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 それにしたって、出オチもいいところだと思わないか。  綺麗な女の子だったから、少し惜しいことしたと、思ったけどね。  もし次出迎えるときは、ちゃんと冷房を効かせておくよ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-06 23:35:17
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 子供の頃、部屋に狐の面が立て掛けてあった。  特に使っちゃダメとは言われなかったんだけど、なんとなく触れちゃいけない気がしててね。反面で、なぜだか一度かぶってみたくもあった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 22:56:09
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 それである日、母さんが外出して一人で留守番してた時に、こっそりかぶってみたんだ。 「コンコン」  って、狐の物真似なんかしてみてね。  そしたら、窓ガラスを叩く人がいた。見ると、ひどいつり目の男がいる。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 22:56:18
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「やあ坊や、狐なのかい」  と、男はにこやかに笑った。 「コン」  そう返事すると、男はひょいと手を伸ばして僕の頭を撫でた。 「えらいね、君はいい子だ」  理由はわからなかったけれど、悪い気はしなかったよ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 22:58:01
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 その時、母さんが家に帰ってきた。僕は慌ててお面を外そうとした。けど、紐が絡まってうまくいかない。 「何してるの!」  母さんの素っ頓狂な声がした。つり目の男は母さんに驚いて逃げていった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 22:58:20
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

僕は母さんに後ろから抱きかかえられて、ようやくお面を外した。 「触っちゃダメって、ちゃんと教えてなかったかしら」  母さんはふぅと息をついた。 「これはね、動物の世界が見えるお面なのよ」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 22:58:33
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「だから、これをかぶって人間を見たら、もう二度と人間に戻れなくなるの」  もうかぶっちゃだめよ、と言って、母さんは僕の頭を何度も撫でた。それで、僕はふと、なぜガラス越しの男が僕の頭を撫でられたんだろうと思った。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 22:59:22
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 あのお面は、どこかに行ってしまって、今はもうない。  けれど縁日で狐のお面を見かけると、僕は、あの日見たつり目の男を思い出す。  そして、母さんの手とあの男の手を思い比べて、母が無性に、懐かしくなるんだ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 23:02:26
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 かき氷を砕く機械が欲しかったんだ。自宅でかき氷を作れたら、その都度アイスクリームを買うよりよっぽど経済的だろ?  というわけで、早速新品を購入して帰った。氷をセットして、さぁ作るぞ、とハンドルに手をかけてさ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 23:30:33
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 途端、耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。驚いて手を離すと、上蓋がバネのように跳ね跳んだ。驚く僕の目の前に、奇妙なやつらが立ち上がったんだ。  つららのように先端を尖らせた、氷だ。 「氷殺し!」  奴らは叫んだ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 23:31:13
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「俺たちをなんだと思ってやがる!」  奴らはきぃきぃ喚いて、鋭く尖った先端をずらりと僕に向けた。 「落ち着けよ……」  僕の言葉も虚しく、奴らは激しく怒り狂う。次の瞬間、ナイフのような氷が僕めがけて飛んできた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 23:31:57
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 咄嗟に目を閉じて、逃げの構えを取る。  と。  目の前に真っ白なものが立ちふさがって、僕を守った。キィキィ喚いていた氷たちが、一気におとなしくなる。 「大丈夫ですか?」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-07 23:32:26
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