twnovelログ(ezory)

主に自分(@ezory)用。
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ezory @ezory

塔の群れは天ではなく地を穿って伸び続けている。直径は日々太くなり、いつかは地球全土が塔に浸食される日が来るのだろう。その時「内」と「外」が反転し、放出された地球の残りかすは月に続く第二、第三の衛星になるのさ。そう語る彼の目は既に両方が失われていた。えぐられて。 #twnovel

2013-06-28 16:26:53
ezory @ezory

涙の数だけ弱くなる君。けっして泣くことはなかった。あの絶望の戦の時、君は千切れた体で最初で最後の涙を流し「私より強くなりなさい」と言った。僕は敵将を一撃で倒し、もちろん泣きはしなかった。玉座は冷たく僕を迎える。石は、涙を吸わない。それが王になるということなのだ。 #twnovel

2013-06-30 01:54:58
ezory @ezory

彼は数を知らない。ひとつ、ふたつ、指で数えられるもの以上はたくさん。あざ笑う者がいると、彼は己の指をチョコレートのようにポキポキ折り、相手の口に右手の指全部を突っこんで去った。次に会った時にはまた指が揃っていた。つまり彼の「たくさん」は真の無限だったのである。 #twnovel

2013-07-01 22:58:34
ezory @ezory

許されざる罪を犯しました。金持ちの友人の鼻につく発言。彼が「限定の一千色色鉛筆買ったぜ」と自慢したのが火をつけました。絵もろくに描かない奴のくせに。そして私は彼の留守中に、一本ずつ色の違う千本の色鉛筆を……ケースから全て出し、床にばらまいてきたのです。合掌。 #twnovel

2013-07-02 18:20:19
ezory @ezory

世界に一冊だけの本。全ページ袋とじ、さらに鉛、青銅、黄金の箱に三重に入れられて海中へ没している本。作家自身が製本を行い、元の原稿は焼却され、作家は生涯誰にも存在を公表しなかった。ではこの本は本当に「在る」と言えるのか? ……と作家は書き終え、製本に取りかかる。 #twnovel

2013-07-03 23:44:04
ezory @ezory

惑星墓園。この星の名物は墓。資産家たちはピラミッドを模し、未来建築の粋を凝らし、競って豪奢な墓を作ったのだから。最後の墓守りの少女は宙に語る。「もう訪れる人もない。私が死んだら、お墓の中の人たちは?」少女はクローン培養器へ歩み寄った。終わりの星で歴史が始まる。 #twnovel

2013-07-04 23:54:00
ezory @ezory

はじめに猫と犬があった。次に彼らの腹を満たすための小動物と、清流と、森が生まれて大地に広がった。次に仲間の猫と犬が、次に敵となる大型の動物たちが生まれた。こうして猫と犬たちは楽しく暮らしていた。ある日川の上流から桃が流れてきたが、無視された。物語は始まらない。 #twnovel

2013-07-05 20:56:37
ezory @ezory

世に、蠱毒あり。多数の虫を閉所で飼い共食わせ、残りし最強の虫を使う呪いなり。「ならば書では」仙人は、万巻の書に命を吹きこむと書斎を密す。百年後に扉を開けば、割れた無数の竹簡の中すっくと立つ若竹在り。刀でえいと断ち割ると全てがはじけ、宇宙は無へ戻りきし。 #twnovel

2013-07-06 23:19:35
ezory @ezory

海を買って庭に置いた。広さと深さは子供用のビニールプールほど、値段はそれが純金製だったらという程度。ちいさな波が皺のように押し寄せるさまは何時間見ていても飽きない。今日はあいつを招待した。おれの在住地を「海無し県」とバカにしやがった奴。さあ、海開きパーティーだ。 #twnovel

2013-07-07 19:00:16
ezory @ezory

嘘をつくと作動する爆弾を埋めこまれた僕は、約束の場所に走る。「もーう、また遅刻じゃない。仕事と私、どっちが大事?」膨れっ面の彼女を強く抱きしめて「君だ、君に決まっているじゃないか!」と叫ぶ僕。爆弾はどうなったのかって?君の予想と同じだよ。これを読んでいる君の。 #twnovel

2013-07-08 18:27:48

11~20

ezory @ezory

伝説の刀匠が鍛えた伝説の一本。刀匠曰く「人を斬るためのものにあらず」「魔物は?」「無理」「無機物は?」「同じく」「目に見えぬ何か?」「なにも斬れん」国一番の勇者が刀を携え旅に出るも、確かに匠の言うとおり。以上が伝説の打撃武器「バールノヨウナモノ」の由来である。 #twnovel

2013-07-09 20:55:09
ezory @ezory

男は高僧の元を訪れ「我不安なり」と打ち明けた。僧答えて曰く「ならばその不安な心とはいずこに在り。出してみよ」男は胸に手を置くと「不安」を引きずりだした。驚く僧の前で「不安」は奇怪にのたうち膨れ上がり、寺と山三つを破壊して飛び去った。魔王誕生の巻である。 #twnovel

2013-07-10 19:38:31
ezory @ezory

大富豪の友人に連れてゆかれたのは、百均ならぬ「一億円均」店。純金製の何やらから不動産まで。からっぽのケースの中身を尋ねると「『一億円払って何も得なかった』という虚無でございます。売れ筋ですよ」と店員は答えた。嘘ではないことを俺は悟った。空は青く、皆狂っていた。 #twnovel

2013-07-11 19:25:58
ezory @ezory

20xx年。石油が枯渇し、水素エネルギーが普及した社会に、とある閉鎖的コミュニティが生まれた。広大な菜種畑で油を自給自足し、バイオディーゼル仕様に改造したバイクを駆るラスト=ボウソウ=ゾクだ。特攻服を身にまとい、彼らは今日も爆走する。天ぷらの匂いをまき散らして。 #twnovel

2013-07-12 22:19:09
ezory @ezory

天から雨のように矢が降り注ぐ。高官が首をかしげた。「我々は何と戦っている?」誰もその問いに答えられはしない。攻撃が止んだ後には弓が無数に刺さっており、処理に困って土をかぶせて放置したら緑が芽吹き、本当の山ができた。通称・いくさ山は今日も登山客でいっぱいだ。 #twnovel

2013-07-13 22:46:30
ezory @ezory

別荘には壊れたアンドロイドが一体残っているだけだった。通信機能もない旧型。俺はそこの備蓄食料を荒らしながら、冬を耐え忍んだ。だが春、近所の住民に見つかってパトカーが俺を迎えに来た時、あのアンドロイドは突然言葉を発したのだ、「いってらっしゃいませ、ご主人様」と。 #twnovel

2013-07-14 19:55:04
ezory @ezory

遺品の中に、切手帳が一冊。ページを繰っても見知らぬものばかり。テレッケ、案盤、だらめさらめ。奇怪な国名と共に異形の植生物、偉人らしき肖像画等が緻密に描かれている。三つ目のものもあった。窓を開くと切手は群れをなして飛び去った。想像の世界へ還ったのかもしれない。 #twnovel

2013-07-15 23:53:03
ezory @ezory

姫は百年の間、眠りにつく呪いをかけられました。夢の中で眠って夢を見る繰り返しのうちに、姫は自分が誰なのかすら忘れました。つまりあなたや私が姫の夢の中の登場人物にすぎない可能性や、あなた自身が姫だったという真実すらありうるのです。だからってどうにもなりませんがね。 #twnovel

2013-07-16 22:47:56
ezory @ezory

兄のビー玉で、流線形の模様入りのがうらやましかった。こっそり持ち出し。手が滑った。気がつくと、あの模様が宙に舞っていた。「呪いが解けました。お礼に願いを一つだけ叶えます」私はビー玉を元に戻させた。模様を再び閉じこめて。私は勇者でも賢者でもなく、子どもだったのだ。 #twnovel

2013-07-17 18:19:55
ezory @ezory

突然、見たこともない形の宇宙船が空にびっしり現れた。さらに色とりどりの光跡を描きながら船は飛び交い、去った。なにがなんだかわからないうちに。百年後に学者たちが映像を解析しつくし「地球、あなたがたの単位で47億歳おめでとう」のメッセージを見つけるまで。 #twnovel

2013-07-18 21:48:06

21~30

ezory @ezory

箱を用意。中に原稿の束を入れる。その他の放射性物質などもろもろの手順は省くが、いま私の目の前に、量子力学における重ね合わせの状態を完璧に作り出した箱が存在する。蓋は奴に開けさせてみようかな、と思った。もし原稿がつまらないままだったら奴が悪いのだ。ああ、暑いね。 #twnovel

2013-07-19 23:55:42
ezory @ezory

師曰く「我、短文小説の定義を発見せり」。弟子驚いて「偉大なる我が師よ、どうか其を我に教えたもう」と叩頭し願うと、師、鬼の如き形相で「愛しき弟子よ、百四十文字は我が教えを記すにはあまりにも短きかな」と弟子を散々に打ち据えり。修行の日々はかくの如し過ぎぬ。 #twnovel

2013-07-20 22:40:27
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