最近の気になったコンテンツ自分用メモ:『HHhH』(小説」が「正義」を成すとはどういうことなのか) / 「有頂天家族」 / 倉俣史朗

favがたまってきたので排出用のメモ。それぞれのコンテンツのみどころとか
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佐々木敦 @sasakiatsushi

ローラン・ビネ『HHhH』、昨夜から集中して今朝読了した。素晴らしい小説だった。作者はこれがデビュー作らしいが、個人的に出会いの鮮烈さとしてはロベルト・ボラーニョ以来とさえ言えるかもしれない。歴史を書くことの、小説を書くということの、フィクションを造り出すことの苦悩と希望。

2013-07-09 16:46:52
佐々木敦 @sasakiatsushi

この小説については、いつか長い批評を書くだろう。僕は大概の小説を読むけれど、実は苦手なジャンルが二つあって、ひとつは歴史もの(時代小説を含む)、もうひとつはファンタジーである。後者については今は述べないが、歴史/時代小説は、これは事実である、という保証がうざい、ということがある。

2013-07-09 16:50:56
佐々木敦 @sasakiatsushi

多くの読者が歴史/時代ものの、とりわけヒロイックな作品を好むのは、ドラマチックな興奮を味わいながらも、そこに「本当にあったことである」という担保が付いていることで安心(?)するということがあるのではないか。これはつまり、かつてケータイ小説が流行ったのと同一の構造を持っている。

2013-07-09 16:53:40
佐々木敦 @sasakiatsushi

或いは都市伝説が拡大していくのとも似たメカニズムが、そこにはある。僕はそうした「事実性」によってフィクションが支えられるということに、根本的な警戒感というか疑いがある。だがビネのこの小説は、まさにこの「これは本当に起こったことである」ということ、それ自体と必死で格闘している。

2013-07-09 16:56:20
佐々木敦 @sasakiatsushi

そこには甘えは微塵もない。むしろ「これは本当にあったのか?」「本当にこうだったのか?」という問いを膨大な資料に当たって厳密に検証していくことによって、歴史を小説化することに前提として潜む欺瞞や詐術からどうにかして遠ざかろうとしてみせる。だがそれが完全には不可能なことも認めつつ。

2013-07-09 17:00:12
佐々木敦 @sasakiatsushi

とにかく、これは類い稀れに感動的な「歴史=小説」だ。しかも断章形式の語りには読み出したら止められないリズムとスピード感があり、文章もすこぶる読み易い。訳者の高橋啓氏に敬意を払いたい。

2013-07-09 17:04:09
佐々木敦 @sasakiatsushi

あと、ナチスの高官ハインリヒ暗殺事件を書こうとしている「僕」は、大量の資料を参照しているのだけれど、その中には映画や他の作家の小説もある。映画だとフリッツ・ラングやダグラス・サークやエリック・ロメールなんかが出てくるし、小説だと何と言ってもジョナサン・リテルへの言及が面白い。

2013-07-09 17:06:40
佐々木敦 @sasakiatsushi

「僕」が『HHhH』を書き進めている途中にリテルの『慈しみの女神たち』が出版され大評判となり、ゴンクール賞を受賞した(『HHhH』もゴンクールの最優秀新人賞を貰っている)。「僕」はちょっとだけ焦りつつ、リテルにツッコミを入れたりする。あとサン=ジョン・ペルス批判も興味深い。

2013-07-09 17:09:45
佐々木敦 @sasakiatsushi

僕はかねてより、十代の子に「正義」について教えるなら、アントニオ・タブッキの『供述によるとペレイラは… 』を読ませればいいと思ってきた(ユリイカのタブッキ特集にもそう書いた)。それと舞城王太郎の「熊の場所」か「スクールアタックシンドローム」を。このリストにもう一冊が加わった。

2013-07-09 17:13:22
佐々木敦 @sasakiatsushi

『HHhH』は、「小説」が「歴史」に対峙するとはどういうことか、を問うものであるとともに、「小説」が「正義」を成すとはどういうことなのか、を見事に描き出した作品でもある。

2013-07-09 17:14:53
Bake Baker @bakebaker9

「有頂天家族」1話。超ロングショットアニメな「つり球」終盤みたいな、そういう見せ場を用意しているアニメだったらいいなあ。このままさらっと行きそうな気もするけど(お話は何かしらあるんだろうけど)これはこれで立体感重視っぽいキャラの動きが楽しい。

2013-07-09 16:55:12
Bake Baker @bakebaker9

碁盤の目を行ったり来たりする中で弁天をはじめとするキャラ達と鉢合う、あるいは窃視でつながるみたいな動きをフィジカルに感じられるものとして演出するアニメ、という感じが今のところあって、これからそれがどんどん入り組んだ(積み重ねていく)ものになっていったらすごく面白そう。

2013-07-09 16:58:06
平凡社 @heibonshatoday

ファイドンから出た倉俣史朗のモノグラフ、「決定版」という感じ…悔しいけど。http://t.co/FiXREGJjeu

2013-07-09 17:29:00