使用済核燃料の中間貯蔵について

将来の原子力利用の是非や核燃料サイクル政策の如何に関わらず、避けては通れない使用済核燃料や放射性廃棄物の処理。それらについての解説や情報は非常に少なく、多くの誤解が蔓延しています。多くの人が興味を持つ話題ではありませんが、知りたい人が勉強する際に情報を探すきっかけとなることを期待して、基礎的なところから解説してみました。また、使用済燃料プールに対する行き過ぎた不安から乾式貯蔵を過大評価する風潮に対しても、反論を試みています。 私自身はバックエンドの専門家ではなく、内容には誤解や誤りがあるかもしれません。まとめの内容を鵜呑みにするのではなく、自分で調べて勉強してほしいと思います。キーワード検索がしやすいよう、用語等はなるべく正確なものを使うよう心がけました。間違いがありましたら指摘して頂けると幸いです。
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Flying Zebra @f_zebra

原子力発電に伴い必然的に発生する使用済燃料については、再処理してプルトニウムとウランを再利用し、残りをガラス固化体として処分する、あるいは再処理せずそのまま処分する方法があります。いずれの場合も、最終処分するまでは何らかの形で「貯蔵」する必要があります。

2013-07-12 23:42:46
Flying Zebra @f_zebra

よく誤解されるところですが、ここでいう「処分」とは、人間による管理を前提としない処分という意味です。人間の生活環境から隔離し、一旦処分してしまえばそのまま永遠に放置することになります。そのため、極めて長期間に渡って確実に人間環境から隔離される設計となります。

2013-07-12 23:44:00
Flying Zebra @f_zebra

「極めて長期間」というのが具体的にどの程度かを決めておかないと設計ができませんが、基本的には放射能(放射線を出す強さ)のレベルが元の天然ウランと概ね同等になるまでの期間としています。その期間は、どのような形で処分するかでかなり異なります。

2013-07-12 23:44:49
Flying Zebra @f_zebra

まず、発電に使った燃料の形で何の処理もしない場合(直接処分)であれば10万年以上、プルサーマル用に再処理した場合は1万年くらい、高速炉サイクルが完成した場合には300年程度まで短くすることも可能です。

2013-07-12 23:45:38
Flying Zebra @f_zebra

数百年程度であれば人間が管理する「貯蔵」もそれほど非現実的ではありませんが、数万年以上となると着実に引継ぎをしつつ管理を続けるのは不可能で、だから完全に隔離し、満杯になれば坑道も潰して二度とアクセスできなくする「処分」が選ばれているのです。

2013-07-12 23:46:39
Flying Zebra @f_zebra

以上は最終処分についてですが、今回はその前のステップ、中間貯蔵に着目したいと思います。なぜわざわざそんな中間工程を挟むのかと言えば、まだ崩壊熱の高いうちに最終処分すると安全のためにはキチキチに詰め込むことができず、効率が悪くなるからです。

2013-07-12 23:48:03
Flying Zebra @f_zebra

中間貯蔵はある程度の期間(数十年)の後には取り出して最終処分場に移すことが前提なので、自由にアクセスできる必要があり、そのためセキュリティを含めた管理も必要となります。とは言え、臨界状態で運転する原子炉ほどには管理の要件は厳しくありません。

2013-07-12 23:48:53
Flying Zebra @f_zebra

中間貯蔵は、方式としては湿式(プール)と乾式、サイトの場所としては発電プラント敷地内と発電プラントとは別の場所にある専用施設での集中管理があります。原子力発電が「トイレのないマンション」などと揶揄される割には掘り下げた報道がないので、個別に解説しておきます。

2013-07-12 23:49:11
Flying Zebra @f_zebra

まず貯蔵方式の湿式と乾式ですが、湿式はプールの水で冷却と遮蔽を行うものであり、除熱性能に優れ、大容量、高発熱の燃料を貯蔵できます。一方、発電所とは別の専用施設の場合は非常用電源や予備の冷却系統などを別に用意する必要があり、高コストになりがちです。

2013-07-12 23:50:11
Flying Zebra @f_zebra

発電所のSFP(使用済燃料プール/ピット)としては一般的な湿式貯蔵ですが、専用の貯蔵施設としてはスウェーデンのオスカーシャム(Oskarshamn)にあるCLAB中間貯蔵施設などの他にはあまり例がありません。

2013-07-12 23:50:37
Flying Zebra @f_zebra

乾式貯蔵は水プールの代わりに閉じ込め、遮蔽、除熱、臨界防止の機能を持つ容器に収めて貯蔵する方式です。容器の種類により、さらに金属キャスクとコンクリートモジュールに分けられます。一般的なのは、初期費用の安い金属キャスク方式です。

2013-07-12 23:51:20
Flying Zebra @f_zebra

金属キャスクによる中間貯蔵の実績としては、専用の貯蔵施設ではドイツのゴアレーベン(Gorleben)やスイスのビューレンリンゲン(Wurenlingen)、発電所敷地内では米国のサリー(Surry)発電所があります。ちなみに、ゴアレーベンは最終処分場の候補地でもありました。

2013-07-12 23:52:13
Flying Zebra @f_zebra

日本では、発電所敷地内の金属キャスク貯蔵としては福島第一(東電)と東海第二(原電)で行われています。また、青森県むつ市に建設中で今年10月に操業開始予定のリサイクル燃料備蓄センターも金属キャスク貯蔵です。

2013-07-12 23:53:16
Flying Zebra @f_zebra

コンクリートモジュール方式にはコンクリートキャスク方式とサイロ方式がありますが、日本で検討されているのはコンクリートキャスク方式のみです。いずれの方式も北米を中心に普及が進んでおり、専用建屋のない屋外貯蔵が多いという特徴があります。

2013-07-12 23:54:23
Flying Zebra @f_zebra

中間貯蔵施設の場所(発電所の敷地内か外部か)については、原子炉が過酷事故を起こした際の影響を考えると発電所とは別に専用の施設がある方が好ましいのですが、用地の確保が難しいのはどの国も同じで、発電所の敷地内に設置するケースが多いようです。

2013-07-12 23:55:15
Flying Zebra @f_zebra

発電所敷地内の貯蔵施設であればSFPからの移送も簡単で、発電所の供用期間中であれば非常用電源や冷却系統の確保にも困りません。ただし、使用済燃料の貯蔵は原子炉が廃炉になった後も数十年間続くことを考えれば、ライフサイクルコストとしては無駄が多くなります。

2013-07-12 23:55:51
Flying Zebra @f_zebra

長期的な視野に立てば、今後原子力発電の利用が続くにしろフェードアウトするにしろ、最終処分場は必ず必要で、より効率的に処分するためには発電所とは別に中間貯蔵施設がある方が良いのは明らかです。中間貯蔵は、最終処分までの単なる時間稼ぎではないのです。

2013-07-12 23:56:38
Flying Zebra @f_zebra

中間貯蔵施設に貯蔵されるのは、乾式の場合金属キャスクに入れられるくらい崩壊熱の下がった使用済燃料を、そのまま輸送・貯蔵が可能で大気放熱以外に特段の冷却も必要としないキャスクに収めたものです。それ自体のリスクは、ほとんどありません。

2013-07-12 23:57:12
Flying Zebra @f_zebra

また、施設の規模も小さくて済み、地域への影響もあまりありません。使用済燃料の搬入、搬出も何年かに1回程度であり、交通事故のリスクが大きく増えるわけでもありません。それでも、施設の受け入れには原子力発電所と変わらないくらい大きな反発があるのが普通です。

2013-07-12 23:58:13
Flying Zebra @f_zebra

一つには、あまりに影響が小さいためにメリットも小さく、経済発展への貢献などもほとんど期待できない、つまり旨味が少ないこともあるでしょう。しかしより大きな理由は、そのリスク(が小さいこと)が十分に理解されていないことではないでしょうか。

2013-07-12 23:59:17
Flying Zebra @f_zebra

個人的には、自分の住んでいる所に中間貯蔵施設ができて、それが仮に家の隣や子供が通う学校の隣であったとしても全く気になりません。原子炉や最終処分場にしても、立地や地盤の条件を満たしているのであれば受け入れに賛成します。そういう人は少数でしょうが。

2013-07-12 23:59:59
Flying Zebra @f_zebra

さて、少し話は変わるのですが、福島第一原子力発電所の事故、とりわけ4号機を巡る当初の混乱から、SFPの使用済燃料をなるべく早く乾式貯蔵に移した方がよいという意見があります。その方が安心だ、と感じるからでしょうが、果たして本当に安全なのでしょうか。

2013-07-13 00:00:50
Flying Zebra @f_zebra

実は日本だけでなく、アメリカでも福島事故の後、使用済燃料を早期に乾式貯蔵に移動するよう求める声が一般や政治家からあり、それが安全であるとの考えが広まっていました。これに対し、EPRIと会計検査院(GAO)が否定的な報告を発表しています。

2013-07-13 00:01:23
Flying Zebra @f_zebra

2012年11月号のNuclear Newsに掲載されたEPRI(エネルギー政策研究所)、GAO(会計検査院)による報告書 http://t.co/d79JRcHdpk によれば、従事者の被曝とコストでリスク便益評価を行った結果、移送を早めるメリットはない事が明らかになりました。

2013-07-13 00:02:06
Flying Zebra @f_zebra

大きな理由は、SFPのリスクは一般や政治家が考えるほど大きくはないことです。燃料被覆管のジルコニウムが水と反応して燃え上がり、核分裂生成物を撒き散らすというイメージは派手で恐怖心に訴えやすいのですが、そう簡単に発生するものではありません。

2013-07-13 00:02:43
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コメント

ささた さひこ スイフトスポーツは気持ちいい車 @kuro_kuroyon 2013年7月23日
まとめ本体で言及されている「定量的なリスク評価の結果は…イメージだけで判断すると、結果的により大きなリスクを背負うこともあります」は、とても重要な考え方。人類が天然痘の被害から解放されたのは、ジェンナーの功績。しかし当時は多くの迷信にと批判を受けていた事実を忘れてはいけない。
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