2013年7月16日

第八十三話:腹の虫 第八十四話:魂の歌 第八十五話:灯火涙

角川Twitter小説コンテストにて執筆中の『チョッとした話』を読みやすいようまとめてみました。読了後面白いと感じてくださったら章タイトルや本文のファボやRTなどいただけるとありがたいです。 以下のURLからもどうぞ。http://commucom.jp/t/fo9FMO
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さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 僕は寝っ転がって、でかいカラスを見上げていた。 「やぁ」  カラスは口をきいた。 「君、何かしら困ってるだろ」 「あぁ」  苦痛に顔を歪めると、カラスはニヤリと笑う。 「腹痛だね? 随分苦しめられてるんだろ」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-13 23:53:11
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「あぁ、苦しくて動けない」  だから、自分の部屋で寝そべって、ぼんやりと口を訊くカラスなんぞを見上げているのだ。 「助けてやろうか」  と、カラスは言った。 「痛み虫を、食いだしてやろう」 「頼むよ」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-13 23:53:27
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 僕はろくろく考えもせず言って、窓を開いた。  カラスはばさりと舞い降りて、僕の腹の上に止まった。そして、とぷんと僕の腹の中に嘴を突っ込んで、黒い大きな虫を引きずり出した。 「ほら、もうこれで痛くないだろう?」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-13 23:53:41
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 言われて腹をさすると、なんともない。 「ありがとう、すごいな」  僕は礼を言って、さっさと出て行ってもらおうと窓に手をかける。  と、カラスは首を振った。 「お礼はまだかね?」 「お礼?」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-13 23:54:00
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 そこで僕はようやく、面倒な奴に頼み事をしてしまったのだと気づいた。 「やれやれ、やられたなぁ」  苦笑して、首を振る。カラスはにやりと満足げに笑っていた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-13 23:54:44
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 というわけで、年甲斐もなくビー玉なんか買いあさってたのさ。  あの腹痛を戻されるよりは、よっぽどましだろ?  君も食中毒対策に、ビー玉でも買うといい。  あのカラスに出会えるなら、だけどね。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-13 23:55:02
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 君が夏の暑さですっかり溶けていなくなってしまったので、僕はひとりでコンサートに行った。  出演する学校の友人から、ノルマチケットを売りつけられててね。渋々買ったんだけど、行ってみたら随分いいコンサートだったよ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:51:15
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 街の中で一番いいホールで上演されるだけはあった。大トリには著名な演奏家が招待されていて、これであの値段ならいい買い物だ。  途中で入った休憩で、僕は手土産を持って控え室に向かった。ちょっと顔を出そうと思ってね。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:51:50
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「お疲れ」  声をかけると、衣装から着替えた友人はおう、と手を挙げた。 「わざわざサンキューな。差し入れ持ってきてくれるなら、チケットただで譲ったのに」 「気にしないでいいって。思ったよりも立派で驚いたよ」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:52:23
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「まぁな。残ってる演目もいいから、最後まで観てけよ。専門学校の奴らもいるから、本格的な筈だぜ」 「うん、楽しみにしてる」  そんなことをしゃべっていると、友人のサークル仲間がわやわや集まってきた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:53:04
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「じゃあまたね」 「おう、ありがとな」  僕らは互いにちょっと手をあげて、別れた。  それで、少し控え室を見て回ることにしたんだ。客席に戻っても退屈だろうしね。  と、ひどく派手な衣装の女がいるのが目に付いた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:53:30
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 オペラ歌手なんだろうか。化粧も随分派手で、カツラまでかぶっている。  不意に、嫌な感じがした。 「あの」  僕は彼女に声をかけた。  けれど彼女は僕の方を向かず、一心不乱に闇を見つめている。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:54:06
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「あの」  もう一度呼びかけると、彼女はようやく僕の方を向いた。 「何か用ですか? 出番はまだでしょう」 「あ、いや、そういうことじゃなくて」  僕は少し言葉を探して、結局上手く見つからず、単刀直入に訊く。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:54:20
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「そこに何かいるんですか」  彼女は険しい表情をみせた。 「いいえ、誰も。――じゃあ」  彼女は頭を小さく下げて、さっさと歩き去る。  なんだか腑に落ちなかったけど、そろそろ開演が近かったので、僕は客席に帰った。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:55:42
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 やがて幕が上がり、彼女が登場した。  ビリビリと痛いほどに、空気が張り詰めた。会場は水を打ったように静まり返った。僕は自分がひどく緊張しているのに気がついた。  それは多分、周りの観客たちも同じだろう。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:57:23
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 ステージに姿を現しただけなのに、今までとの格の違いを感じたんだ。  静寂の中、彼女の喉から、音がこぼれた。  僕は、生涯で最高の音楽を耳にした。オペラなんて初めてだったにも関わらず、すっかり彼女に魅了された。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:59:06
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 寝静まっていた客も皆目を覚まして、彼女の歌声に聞き惚れていた。涙を流している人さえいたぐらいだ。  やがて、歌が終わった。  会場は彼女に魅せられたままだった。  まっさきに拍手したのは、来賓客だった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 12:59:55
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 我に返った人々は、スタンディングオベーションを惜しまなかった。  割れんばかりの拍手の中、彼女は不意に、ふ、と、遠い表情を見せ、緩やかにお辞儀をした。  そしてそのまま、倒れ込んで、動かなかった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 13:00:16
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 会場は混乱した。  その中で、僕は、見た。  黒いマントを着た死神が、彼女の魂を連れて天へ昇ってゆくのを。  彼女が、死んだのを、見たんだ。  帰りの電車の中で、僕は見覚えのあるひとりの男と隣り合った。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 13:01:55
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「やあ」  僕は彼に声をかける。 「さしずめ君がオペラ座の怪人か」  男は少し笑った。 「いや、メフィストフェレスさ。彼女が言ったのだ、『時よ止まれ、汝は美しい』と。あの歌は永遠に残る。彼女の命と引き換えにね」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 13:04:10
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「またまた」  僕は少し笑う。  そして、問いかけた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 13:04:58
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「言わせたんだろう、君が。彼女の魂と、才能欲しさに」  その問いかけに。  『君』は、意味深に笑ってみせた。  そういう訳で、僕は今、『新しい君』といる。  君とふたりで、君の最後の歌を聴いているところ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-07-14 13:05:27
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