わいたんべ(y_tambe)さんに質問しました『がんの中鎖脂肪ケトン食療法』てなんぞ?

”今あるがんが消えていく『中鎖脂肪ケトン食療法』:ブドウ糖を絶てばがん細胞は死滅する!” 身内にがん患者がいる場合は、この手のお話は切実です。 不躾を承知で伺いました。
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うさぎ林檎@ししょーPPMPP💉💉💉💉💉 @usg_ringo

あー、こういうのはだね……わいたんべ(@y_tambe)さーん! RT @sayakatake @う うんとこれだなhttp://t.co/MZsDiqEhkH

2013-07-18 17:29:48
Y Tambe @y_tambe

@usg_ringo @sayakatake 「エビデンスないよ」で片付けたいねえ。結構、ややこしい話になるから。

2013-07-18 17:34:15

まーそー仰らず。

Y Tambe @y_tambe

がん細胞で、グルコース代謝のシフトが起きていて…あたりは正しい。Warburg(ワールブルグ)効果と呼ばれてて、その最初は1950年代のオットー・ヴォーバーグの発見にまで遡る。

2013-07-18 17:40:31
Y Tambe @y_tambe

おっと、いかん。Otto Warburgが、がんの代謝の変化を発見したのはもっと古かった。1930年に出た英語版の著書が最初で、その前にドイツ語版が出てるはず。もう80年以上だ。

2013-07-19 01:07:19
Y Tambe @y_tambe

1950年代に出してるのは別の論文の方だった。

2013-07-19 01:12:07
Y Tambe @y_tambe

んで50年の時を経て、ここ数年で、このWarburg効果の分子メカニズムが明らかになってきて、がんの基礎研究分野のトピックの一つになってる。

2013-07-18 17:41:47
Y Tambe @y_tambe

で、例えば、細胞を人工的に培養する培地からグルコースを除いてやると、確かにがん化した細胞の方が死にやすかったりはするんだけど、ここらへんはがん細胞の種類とか、どの程度まで除くかとかでも結構まちまちなので、一概には語りにくいのね。

2013-07-18 17:43:43
Y Tambe @y_tambe

そもそも、なんで癌細胞だと、呼吸よりも解糖系(この辺の解説ははしょりたい)が優位になるような代謝シフトが起きるのかというのも、まだよく分かってはいない。一応、癌(固形腫瘍)ができると、その内部は酸素や栄養が少なくなるので、それに適応するように変異した癌細胞が生き残る説はあるけど

2013-07-18 17:47:23
Y Tambe @y_tambe

あとまぁ細胞にしても「ブドウ糖がなければケーキを食べればいいじゃない」…じゃない、アミノ酸とか脂肪とかをエネルギー産生に回して、それらが補完的に働く。ただまぁそうすると、タンパク合成とか核酸合成にしわ寄せがいくのでそれをまた別の形で帳尻合わせて…と、かなり複雑に絡んで動く。

2013-07-18 17:51:20
Y Tambe @y_tambe

多分、増えてる癌細胞の種類とか状態によっては、供給されるブドウ糖を断つのが有効な「場合もある」だろうとは思うのね。ただ、すべてのケースに当てはまりはしないだろうと。あとおそらくは、単独よりも抗がん剤との併用で増強的な方が効きそうではある。

2013-07-18 17:54:46
Y Tambe @y_tambe

in vitroでブドウ糖(グルコース)除くと、一気にいろんな反応おきるから、正直、何見てるのか分かんないようなところもあってねえ…小胞体ストレスとかも動くし。グルコース濃度をどこまで減らすか、短時間/長時間、元の細胞株なんかでも変わってくる。

2013-07-18 18:06:21
Y Tambe @y_tambe

つか、そもそも培養細胞みたいに、単層培養で、空気中と変わらん酸素濃度で、栄養豊富な培地(それも高グルコース)とかで培養してる状態を基準に、それが減った状態での細胞応答を「ストレス」とするのは正しいのかとか、いろいろと抜本的な問題もあってなあ…

2013-07-18 18:09:23
Y Tambe @y_tambe

…とまぁ、いろいろと細かくてわけのわからない話になってしまうというか。専門家の間でも、まだいくつかの可能性が指摘されつつあり、なおかつ、がん以外のいろんな現象にも関わってくるものでもあるから、評価しづらいのが現状。

2013-07-18 18:15:10
Y Tambe @y_tambe

ただしまぁ、期待されてる点としては、このワールブルグ効果は、がん細胞の中でも比較的、悪性化したものとか、抗がん剤抵抗性のものとかが強く示す性質ではないか、と言われてる。なので、その機構を解明することが、治療への応用に繋がる可能性がある。

2013-07-18 18:17:22
Y Tambe @y_tambe

ただ、現時点ではあくまで「可能性の段階」ね。

2013-07-18 18:18:35

決め台詞が出ましたが、続き

Y Tambe @y_tambe

さっきのリンク、 http://t.co/cVNQkx0P2g 最初の二節は、まぁ大きく外れてはいない(ただしグルコーストランスポーター(Glut)だけで説明するのは誤り。他にもいろんな遺伝子によるものが見つかってる)。けど後は駄目。がん細胞だってブドウ糖使えなきゃ別のを使う。

2013-07-18 18:30:02
Y Tambe @y_tambe

で、ひとくちに「がん細胞」と言っても、いろんなものがあって、それぞれ何かしらの遺伝子変異や遺伝子発現の異常を抱えてるのだけど、それで例えば脂質からのエネルギー産生が弱かったりすると、ブドウ糖まで削るとさらに死にやすくなったりとかするわけで。

2013-07-18 18:32:07
Y Tambe @y_tambe

このあたりの話は、どこまで噛み砕けばいいのか、正直よく判らん。

2013-07-18 18:37:57
Y Tambe @y_tambe

ワールブルグ効果自体についてなら、頑張ればそこそこ噛み砕いた説明は可能だと思うのだけど、下手に分かりやすい解説にしちゃうと、さっきのリンク先にあるようなトンデモの土台になりかねないという辺りがなあ。

2013-07-18 19:00:16
Y Tambe @y_tambe

(それとまぁ、ぶっちゃけ、この辺りは今やってる研究テーマの一つだったりする…本丸に切り込んでるわけではないけど)

2013-07-18 19:01:42
Y Tambe @y_tambe

総説としては、この辺りが参考になるかな。 | [第4回マルチオミクス] ワールブルグ効果の再興―がんは代謝研究だった? | メタブローグ - http://t.co/wkfaHuz67i

2013-07-18 19:04:53