夕焼け・土方歳三はゆく【シナリオ版】 第二章「めぐり逢い、そして・・・」
お待たせしました! 「夕焼け・土方歳三はゆく」【シナリオ版】第6回 第二章「めぐり逢い、そして・・・」第1回 ゆるゆると始めて行きたいと思います。 #試衛館の青春
2013-07-13 18:00:52① 元治元年七月某日・壬生新選組屯所一室 歳三、「豊玉発句集」を手に、句を考えている。 斎藤一が竹刀を片手に汗を拭いながら 庭から歩いて来て濡れ縁に腰掛ける。 歳三「総司と平助は?」 斎藤「呑みに行きました」 #試衛館の青春
2013-07-13 18:02:19歳三「お前は?行かなかったのか」 斎藤「酒は一人で飲むもんです」 歳三「お前って奴は・・・。ま、人夫々だからな。でもな、斎藤、ちょっとは、仲間の事、考えろ」 斎藤「えっ」 #試衛館の青春
2013-07-13 18:03:51歳三「二人とも病み上がりだ。ついててやろうとは思わなかったのか」 斎藤「あっ・・・俺、気付かなくて・・・今から追いかけます」 歳三「今更いい。二人のことだ。大丈夫だろう」 斎藤、目を伏せ、肩を落す。 #試衛館の青春
2013-07-13 18:05:17② 京の町・ある露地 千代が薬箱を持った佐吉の前を歩いている。 千代と佐吉の後ろを四人の浪人者がつけている。 千代「一人、二人・・・四人か」 佐吉「えっ」 #試衛館の青春
2013-07-13 18:06:44千代「私達はつけられているようです」 佐吉「そ、そんな・・・」 千代「私が合図したら、走って下さい。振り帰らずに・・・。そして、そのまま帰ってください」 佐吉「でも、先生は・・・」 #試衛館の青春
2013-07-13 18:08:16千代「大丈夫。これでも多少の心得はありますから」 千代、にっこりと微笑む。 千代「さっ、走って!」 佐吉、走る。 千代、懐剣に手をかけ、振り返り、浪人達と対峙する。 #試衛館の青春
2013-07-13 18:09:22③ 居酒屋「ひさご」 沖田総司と藤堂平助が店の主人や他の客たちと談笑している。 佐吉が、転がるように飛び込んでくる 佐吉「え、えらいこっちゃ、千代先生が、浪人者に・・・」 #試衛館の青春
2013-07-13 18:11:38藤堂、沖田を見る 沖田、頷く。 藤堂「案内して下さい」 沖田、藤堂、立つ。 #試衛館の青春
2013-07-13 18:12:36④ ②の露地 千代、三人の浪人者と対峙。 千代の手には、浪人から奪った刀。 千代の足元に、一人倒れている。 佐吉に先導されて、沖田と藤堂が来る 藤堂「佐吉さん、有難う。ご苦労様。もういいよ」 佐吉、去る。 #試衛館の青春
2013-07-13 18:15:24藤堂「三人か」 沖田「いや、四人ですよ。もっとも、一人は既にのびてますけどね」 藤堂「えっ」 沖田「相当な腕ですね」 三人の浪人者、沖田と藤堂を意識。 千代、平然としている。 藤堂「そろそろ、行くぞ」 #試衛館の青春
2013-07-13 18:17:29藤堂、沖田、歩速を上げて近づく。 藤堂「おい、そこで何をしている」 三人の浪人者、一斉に逃げていく。 藤堂「総司、どうする?」 沖田「やめときましょう。今日は非番だ」 千代、持っている刀を倒れている浪人の傍に置き、二人の方に来る。 #試衛館の青春
2013-07-13 18:19:27千代「危ないところを、どうも有難うございました」 沖田「いや。でも、危なかったのは、あの浪人達の方じゃなかったのかな。ねえ平助さん」 藤堂「そうだな。私達が来なかったら、三人もその男みたいになってたろうな」 #試衛館の青春
2013-07-13 18:21:16千代、少し困ったように微笑み、首を横に振る。 藤堂「斬ったんですか」 沖田「嶺打ちですよ。血、出てないもん。 そうですよね」 千代、頷く。 #試衛館の青春
2013-07-13 18:23:11藤堂「たいしたもんだ。すごいですね。男 四人に囲まれて、嶺を返す余裕があるなんて・・・」 千代「そんな・・・私、ただ、もう、夢中で・・・」 藤堂、沖田、千代を見て微笑む。 千代、照れたように微笑む。 #試衛館の青春
2013-07-13 18:24:57藤堂「さてと、私は、この人を送っていく。総司は、ひさごへ、この人の無事を知らせてくれ。ついでに勘定も頼む」 沖田「ずるいな、平助さんは。いつもいい方にまわるんだから・・・。後で半分もらいますからね」 沖田、去って行く。 #試衛館の青春
2013-07-13 18:26:33⑤ 帰り道 千代と藤堂が並んで歩いている。 千代「あ、私、千代と申します」 藤堂「私は・・・」 千代「新選組の藤堂平助さん」 藤堂「えっ、どうして・・・」 #試衛館の青春
2013-07-14 18:04:38千代「だって、さっきの方が、平助さんて呼んでいらしたし、あの方のことは、総司って・・・。だから、新選組の藤堂平助さんと沖田総司さんだなあって・・・」 藤堂「へえ、私達も有名になったもんだ」 藤堂、微笑む。 千代、ぎこちなく微笑む。 #試衛館の青春
2013-07-14 18:06:43藤堂「先生って呼ばれてたけど・・・」 千代「医者なんです。駆け出しですけど」 藤堂「京の人じゃないですね」 千代「武州です」 藤堂「武州?」 千代「ええ、多摩なんです」 #試衛館の青春
2013-07-14 18:07:35藤堂「えっ、じゃあ、ひょっとして、千代さんの剣、天然理心流?」 千代「ええ、まあ・・・でも、正式に習ったわけでは・・・兄にちょっと教えてもらっただけなんです」 藤堂「へえ、でも、それだけでその腕前なんだ。すごいな。兄上って、私達の知っている方だったりして・・・」 #試衛館の青春
2013-07-14 18:09:53千代「いえ、そんなこと・・・、ない、です」 ⑥ 山田伊織の診療所の前 千代「有難うございました。ちょっとお寄り下さい」 藤堂「今日はやめときます。でも、また、会ってくれませんか」 千代「えっ」 #試衛館の青春
2013-07-14 18:11:39藤堂「ダメ、ですか」 千代「いえ、そんな事、ないですけど」 藤堂「いいんですね。じゃあ、近いうちにまた来ます」 藤堂、嬉しそうに微笑み、帰りかける 診療所の中から、山田伊織の声。 山田「土方、帰ったのか」 藤堂「土方?」 #試衛館の青春 藤堂、驚いて振り返る。
2013-07-14 18:14:13千代、慌てた様子で、藤堂に作り笑いを向けて、中の山田に 千代「は、はい、只今帰りました」 そして、小声で呟く。 千代「もうっ、滅多に土方って呼ばないのに、こんな時に限って・・・」 #試衛館の青春
2013-07-14 18:16:50藤堂「土方って・・・まさか・・・?うちの土方さんの・・・妹さん?」 千代、気まずそうに頷く。 藤堂、呆然とする。 #試衛館の青春
2013-07-14 18:18:05千代「従兄妹なんです。本当は。でも、兄妹のように育ったものだから・・・。私に会ったこと、黙っていて頂けませんか。知らないんです。私が京に居る事・・・」 #試衛館の青春
2013-07-14 18:19:11