児童精神科診療における自身の経験に基づく診療上の注意・その1
- sayoarashi
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児童のうつには内因性疾患はほとんどない。あったとしても双極性障害であり、それも絶対数は少ない。内因性単極うつは、16,7歳あたりからようやく少しだけ見られる程度。児童の抑うつを見たら、適応障害(ASD不適応含む)、神経症性抑うつ、統合失調症(中学以降)の初期、虐待などを考える。
2013-05-27 13:51:22自閉症やアスペルガーのこだわりを強迫症状と捉えてアナフラニールやパキシルなど抗鬱薬を処方されることが時折あるが、効果が出ることは少ない(試してみる価値がないわけではないが)。
2013-05-27 12:38:31強迫の本質は、本人が苦痛を感じておりやりたくないのにやらないと不安を感じる自我違和感であり、ASD系のこだわりにおいてはそれがないと言われる。
2013-05-27 12:40:34ただし児童では症状が未分化であることが多く、自我違和感のない強迫も存在する。 逆に、明確な自我違和感がある場合は高い確率で強迫と考えてよい。
2013-05-27 12:41:13強迫であればfluvoxiamineなどのSSRIが奏功することがあるが、児童では抗鬱薬によるactivationが出やすいため、処方するなら入院で開始する。外来で処方するならば、効果が出る可能性は低いが副作用も出にくいSertralineあたりを使う。
2013-05-27 12:46:29ASDのこだわりは本人の意識が対象に固執しているものであり、叶わないと強い焦燥感を感じて癇癪やパニックを起こすことがある。 ただし、これだけで強迫と鑑別できるわけではない。
2013-05-27 12:54:45ASDに強迫が合併することもある。 明らかな三つ組を持ち、Asp.と診断されているが、手洗いや家具の位置直しなどに明確な自我違和感を訴え、SSRIが著効した例もある。
2013-05-27 12:56:49ASDのこだわりの場合、SSRIの効果はあまり期待できず、内服で改善しようとすると鎮静系の薬を使うことになる。症状によっては内服をためらうべきではないが、あくまで対症療法であって、こだわりをうまくコントロールできるような環境を整えることも重要である。
2013-05-27 13:01:19ただし、無害なものであれば放置して本人の思う存分こだわらせるのがベストである。生活に支障が出ないことが重要なので、このあたりはひとりひとりに対して適切なバランスを設定する必要がある。
2013-05-27 13:05:41やや難しいのが巻き込み型のこだわりへの対応であるが、これは両親が過干渉な場合に多い。両親が本人に先んじて行動し、本人が自分で判断する間もなく急かされることにストレスを感じて、両親にやってもらわないと気がすまなくなることがある。この場合、親の過干渉をまず改める必要がある。
2013-05-27 13:09:21こだわりをうまく活かすことができれば、漢字や魚や電車にめっぽう詳しくなることもある。「歩く◯◯辞典」「◯◯ハカセ」などと呼ばれるのはこのケースであろう。
2013-05-27 13:14:17否定よりも肯定のほうが指示が入りやすい。否定の指示が入りにくいのは、それがわかりにくいからである。入りやすいのはわかりやすいからである。
2013-05-27 13:20:20言葉を意味として知っていても、それを理解して行動に結びつけるには複雑な経路が必要である。経路はできるだけシンプルなほうがよい。つまりわかりやすいことが重要である。
2013-05-27 13:20:55こだわりは不安などによって増強することがある。こだわりの治療には、それを助長している因子を取り除く必要がある。自宅が片付いておらず混乱してしまう、逆に枠が強すぎて疲弊する。学校、家、療育機関など場所によってルールが違う、など。統一されることが望ましい。
2013-05-27 13:23:55言葉の意味がわかることと、「理解する」ことは異なる概念である。ASDは、言語性IQに問題のないケースであっても、聴覚情報を理解しにくいことが多い。聞いた内容を一言一句に至るまで記憶しており、それらの意味も知っていても、行動できないことがある。聴覚入力が悪い場合は、視覚入力を使う。
2013-05-27 13:29:34視覚化は、もともとは言語に障害のある児童に対して考えられた手法だが、知的に問題のないASDにも応用出来る。聴覚で入らなければ文章で見せる。文章がだめならイラストを使う。イエローカードやレッドカードなどのカードシステムも有効である。
2013-05-27 13:33:40評価するときにも視覚化は有効である。よい行動、悪い行動が事前に視覚的に提示され、それぞれがどれだけ行われたか、どれだけ評価されたかが視覚化されると、行動変容するきっかけを作りやすい。
2013-05-27 13:35:14評価はできるだけ本人が現状でできるものから始める。いきなり難しい目標を提示されて失敗すると、失敗体験が重なって継続する意欲をなくす。達成できたら少しだけ難しいものを導入していき、その後の達成度に応じて内容を変えていく。ただし、変更はsmall stepであることが原則である。
2013-05-27 13:38:01他の症状と同様。児童の抑うつの症状も非定型的であることが多い。抑うつや意欲低下よりも、不安や焦燥感が前景に立つことがある。リストカットやODに至ることもある。内服が必要なこともあるが、あくまで環境調整とセットで行われるべきである。
2013-05-27 13:54:13児童に抗鬱薬を処方するのは、成人よりactivationのリスクが高く推奨できない。 抗不安薬は脱抑制やせん妄のリスクがある。
2013-05-27 13:59:02児童のうつは多彩な症状が出る。焦燥感を鎮め、不安を抑え、不眠も改善したいが、内服管理やODのリスクを考えると、複数薬剤を処方しにくい。これらをできるだけ一つの薬で済まそうとすると、必然的にMARTAが残る。OLZまたはQTPが使いやすい。
2013-05-27 14:00:33