掌小説語り~自作ついのべる集6~

自作ツィノベルをまとめました。 2012年12月分
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リュカ @ryuka511

月光の五線譜に星の音符が舞っていた。夜空から届くその不思議な音楽を聞いた人々は、忘れてしまった大切な何かを思い出し目を潤ませる。ある者は愛を、ある者は郷愁を。奏者が何者なのかは誰にもわからないまま、月光の五線譜は演奏を終え静かに闇夜へ消えていく。 #twnovel

2012-12-02 00:24:08
リュカ @ryuka511

お城の中庭で王女は溜息をついた。立場こそ王女だが、次女である彼女を顧みる者は少ない。いずれどこかの王族と政略結婚をさせられるのだろう。何故王家に、しかも次女として生まれたのかと嘆く彼女のブーツに犬がじゃれてくる。抱き上げると彼女を慰めるように小さく鳴いた。 #twnovel

2012-12-02 23:59:41
リュカ @ryuka511

海に出た海賊は常に臨戦体制だが海賊船のシェフも同様である。突然の戦闘で船が傾ぐと皆の食事を守る戦いが始まる。棚から落ちる茶碗を全て受け止め卓上から滑空した大皿をキャッチする。盛り付けた料理は溢さない。海賊達が勝利の祝杯を上げられるのは彼の密かな戦いのお陰である。 #twnovel

2012-12-03 23:43:35
リュカ @ryuka511

多忙なご主人様の仕事中、私はいつも金庫の中。そりゃ沢山宝石を散りばめたドレスは高価だし、私自身も希少で高価な人形だけど、一日の大半をずっと暗い金庫で過ごすのは淋しいわ。側にいる時はとても大切にして下さるのだけど、ご主人様は愛情の表し方を間違っていると思うわ! #twnovel

2012-12-05 00:09:40
リュカ @ryuka511

あの時もっと素直になれていたら何かが変わっていただろうか。彼女は思い出の木の前で溜息をつく。夢を追う恋人と別れてからちょうど3年。今更会いたいなんて虫が良すぎるね。乾いた木の表面は仄かに温かく彼女を慰める。そして。「やっぱりここにいた。」懐かしい声に振り返る。 #twnovel

2012-12-06 00:08:22
リュカ @ryuka511

幼い王子を抱いて夜明けの街を全力疾走で駆け抜けた。クーデターが起きて王が討たれ、まだ幼い王子の命まで狙われている。私は燃え盛る城に涙しながら背を向け走る。何も知らない王子は無垢な茶色の瞳で私を見上げた。この純粋な美しい瞳を復讐に染めぬように守り抜くのが私の使命。 #twnovel

2012-12-06 23:44:38
リュカ @ryuka511

親友と同じ人を好きになった。親友が恋のライバルになってしまうと、恋と友情の狭間で悩む私をよそに彼女はさっさと彼に告白してしまったという。でも彼の返事は「付き合ってる人がいる」だった。私も彼女も失恋したけど、親友を失わなくて良かったと2人で笑い合った。 #twnovel

2012-12-07 23:46:21
リュカ @ryuka511

外套の裾を初冬の風にはためかせ、青年は俯きながら歩いていた。宛てもなく街をさまよい歩く。恋慕う人を流行り病で亡くした彼は、生者でありながら死者のようであった。彼女の死を何故とひたすら問い続ける。靴底が落葉を踏む音だけが虚しく響いた。#twnovel

2012-12-08 23:53:20
リュカ @ryuka511

神は世界を新たに作り直そうと決めた。終末を迎えた灰色の世界に手をかざし神は呟く。「真の世界を今度こそ……」だがそこで神はふと手を止めた。「真の世界とは、何だ?」思いのままに作れるはずなのに満足のいくものは作れない。「真の世界とは……。」神の迷いに答える者はない。 #twnovel

2012-12-09 23:52:18
リュカ @ryuka511

僕は大人にならなきゃいけない。君と僕を引き裂く大人の都合からきみを守るために。君の手を握って僕は走る。君を「お嬢様」と呼んでお屋敷に閉じ込めようとする大人達に君は渡さない。いつも泣きそうな顔の君を、笑顔にできるのは僕だけだ。君の笑顔と自由を守る。 #twnovel

2012-12-11 00:30:59
リュカ @ryuka511

廃墟の城に残された人形の私を幼いご主人様は気に入って下さり、そのままこの廃墟で暮らし始めたのです。お家は、ご両親はどうされたのか。私を抱きしめるご主人様の悲しそうな瞳に何も聞けません。ならば私が家族になりましょう。ここが私達の家、誰が何と言おうと私達は家族です。 #twnovel

2012-12-11 23:34:51
リュカ @ryuka511

風邪をひいて寝込んでしまった。こんな時は余計に一人の淋しさが身に染みる。君がいてくれたらと、未練がましく君がよく座っていたソファを見つめた。誰もいないソファはやけに大きく感じて、思わず涙ぐんでしまう。静かな夜の部屋に、咳込む音だけが響いていた。 #twnovel

2012-12-12 23:40:36
リュカ @ryuka511

コンプレックスを無くしたくて整形をした。顔を整形したら体形も変えたくなった。美しい顔と体を手に入れたら知性が欲しくなった。美しい顔と体に知性を手に入れたら老化で失うのが怖くなった。老化防止手術をしたらコンプレックスは無くなったけど何の為だったのか解らなくなった。 #twnovel

2012-12-14 00:10:02
リュカ @ryuka511

締切間近になっても原稿は白紙のままだった。デビュー作がヒットした新人作家にとって、二作目へのプレッシャーは計り知れない。生みの苦しみ、散々使ってきた言葉が真に迫る。一発屋で終わってたまるかという気概だけが彼を原稿へ向かわせた。 #twnovel #twnvday

2012-12-14 23:45:58
リュカ @ryuka511

脱出マジックの手順を確認しながら、師匠の身体に鎖をかける。今までに無いトリック、タネを知っているのは師匠と私だけ。だから−− #twnovel タネも仕掛けも無い箱は、師匠を乗せて燃え盛る炎の中へ突き進む。私は、本気だったんです。さよなら、師匠。

2012-12-15 23:44:58
リュカ @ryuka511

「独りぼっちなの?一緒だね」俺を撫でようとした女に背を向ける。何故人間は野良猫を見ると孤独な寂しい野良猫だと思うんだろう。俺は独りでも寂しくない。俺のせいで命を落とした幼い飼い主がいたから。好いた奴を失うのは辛い。俺の罪を忘れない為にも俺は独りでいるべきなんだ。 #twnovel

2012-12-16 23:37:16
リュカ @ryuka511

革命が起き王が追放された。新しい王が誕生したが、彼は先々代の愚王を出した家系の出身だった。民は落胆する。王家の一族の中から王が生まれる限り、同じ事が繰り返され、民意が反映される事は無いだろう。 #twnovel

2012-12-17 23:34:23
リュカ @ryuka511

船の沈没を予知して逃げるネズミのように、地上の滅亡を予知して星屑逃げる。滅びの闇が夜空まで届かぬうちに。滅びを地上に警告する事もなく。夜空から星屑が全て逃げ去った頃、地上に滅びが訪れた。 #twnovel #世界もう滅ぼしたい協会

2012-12-18 23:35:50
リュカ @ryuka511

女の子はいつの時代もお姫様。童話の王子様たちと恋をする。やがてお姫様が大人になって、本物の王子様を見つけたら、童話の王子様たちは絵本と共に忘れられる。けど、お姫様と王子様の間に新しいお姫様が生まれたら、帰ってきた王子様たちは新しいお姫様と恋をする。 #twnovel

2012-12-19 23:20:35
リュカ @ryuka511

兵隊さんの1日は早朝のラッパから始まります。一番若い兵隊さんの持ち場は、お城と街を結ぶ城門の前。街を駆ける子供達を優しく見守り、泥棒をあっという間に捕まえた彼は街の人気者。王様の警護に憧れたりもしますが、お城と街の人々を守れる門番の仕事に彼は誇りを持っています。 #twnovel

2012-12-20 23:56:08
リュカ @ryuka511

予知能力を持った少女は神の子と崇められ神託を記す為に神殿に幽閉された。自分が予知する恐ろしい未来に怯える彼女に、世話役の少年は心を痛める。「ここを出よう」「私が去ったら世界は…」「放っておけばいいさ」途絶えた神託に世界滅亡の噂が溢れ、2人は幸せに暮らしたという。 #twnovel

2012-12-22 00:03:21
リュカ @ryuka511

古い映画館の閉鎖が決まり支配人はロビーを見渡した。映画が好きで自転車で通いつめた少年時代、映画館で働きたくて必死に勉強した青年時代、この映画館に勤務が決まり支配人に上り詰めたこれまでの事が蘇る。自由に映画に打ち込めた事に感謝し生涯を捧げた場所に深々と頭を下げた。 #twnovel

2012-12-22 23:29:10
リュカ @ryuka511

クリスマスが近づくとサンタの村は大忙し。彼らの駆け回る音は楽しげな鈴の音となり世界中に響く。子供達は勿論、世界中の誰かの幸せの為に働くサンタ達。クリスマスの鈴の音はあなたにどんな風に響くだろう?大切な人と過ごす人、1人で過ごす人。誰の耳にも幸せな音に響くように。 #twnovel

2012-12-23 23:47:37
リュカ @ryuka511

クリスマスプレゼントをたくさん積んでサンタのソリは出発する。箱が1つソリから落ちたが、追おうとしたトナカイを止めサンタは静かに首を振った。 #twnovel プレゼント箱は街の大きな病院の上へ落ちていく。屋上に現れた少年は嬉しそうにそれを抱えると、光に包まれ天へ昇って行った。

2012-12-24 23:31:19
リュカ @ryuka511

イブに彼女と大喧嘩した男は翌日、ファミレスで一人食事をしていた。家族連れやカップルで賑わう店内に辟易していると斜向かいに一人でいる彼女を見つける。同じ物を注文した事に気付くと男は席を立った。「考える事も食べる物も似ている俺達は一緒にいるべきって事かな」「…バカ」 #twnovel

2012-12-25 23:48:30