村上隆、映画『風立ちぬ』を語る

takashi murakami @takashipom

＃風立ちぬ アニメに固執し始めた宮崎駿においては、その作品は絵描きそのものの評価とへも直結可能である。白隠和尚が死ぬ間際の書や達磨図が最高傑作となっていったように、宮崎アニメはスタッフによっては、今後も増々右肩上がりの芸術作品を造って行ける可能性がある。

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＃風立ちぬ 「美」への言及に終始し、人間の存在理由の希望を、どうしても捨てられない、が、カペローニさんの狂言回しと相まって、悲壮感を持たずに表現できていて、そういう発明が出来ていることが羨ましい。

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＃風立ちぬ 自分の事を話させてもらうと、僕がアニメーションに本当に没入したのは、「宇宙戦艦ヤマト」経由「劇場版 銀河鉄道９９９」で、特に９９９のラストの金田伊功と友永和秀のメーテル星爆発に魅せられた体験が基礎なのだが、つまりは手描きの鉛筆の線から、宇宙の爆発が描けてしまう不思議

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＃風立ちぬ に出会ってであったが、風立ちぬに登場する巨大水乗艇の煙のエフェクト表現や、旋回する飛行機の僅かなデッサンの狂いに、あの当時、３２年前の感動が蘇ってきて、涙したのだ。

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＃風立ちぬ たくさんたくさん、感動の糸口がある作品なので、ひとつひとつ説明したい衝動に駆られるが、そういうことを全部ひっくるめて、僕も表現者の端くれだし、自分のものづくりに活かしてみようと思う。

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#風立ちぬ しかし、この作品へのネガティヴ評価の圧力は何だ？アニメーション作品に何を期待しているんだろうか？世界最高峰のアニメーション作品の誕生に立ち会える幸せを、３０年前、予想できたオタク第一世代はいなかったと思う。。。そういう、夢の様な作品なのに、、、。。。

takashi murakami @takashipom

＃風立ちぬ そういえば、エンジンの効果音、人の声っていう部分。ジブリミュージアムで、タモリさんとかの実験短編あったけれども、こうして長編で使うというのは、本当に前衛的ですよ。より、人間に近づけよう。心、気持ちに肉薄させようと、人の肉声を使うという冒険。本当に凄いですよね。

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＃風立ちぬ ある意味、二郎の生きた時代、戦争の時代。戦争そのものを否定しようがそれは事実であり、その中で生きるしか無いとき、それ故に、人は美にしか縋れないという。今の日本も、福島の原発の惨状とか、でも、事実なんだし、隠しても少し賢きゃわかってることだし。その時代をどう生きるか。

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＃風立ちぬ 僕なりに観てて、東浩紀さんの「チェルノ」本の刊行、観光地化という定義と山本太郎への嫌悪は、つまりはそういうことなのかなぁ〜と。戦争反対言うても、戦争の時代に戦争停止出来ないし。ならば、満身創痍になっても「美」に縋りつく、人間の哀しさを描こう。その部分で似てるのかなと。

takashi murakami @takashipom

＃風立ちぬ そういう人間の悲しい性としての「美」への突進を、宮崎さんは身を持って体現してきて、つまり、人間が生きる最後の砦は「美」だ、という。そこに集った戦後日本アニメの伝説の絵描きたちの競演が、もう素晴らしすぎて、不自然さがなくなってしまうレベルまで高レベルで。。。

takashi murakami @takashipom

＃風立ちぬ だから「美」の使徒である、芸術家は平和な社会の中では、本当に無能で、有事にこそ、きらめき始める。でも、それは社会とのコントラストの相対化が呼び起こすきらめきであるという皮肉もあったりして。

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＃風立ちぬ http://t.co/Ncczk84Mbw この純粋な芸術作品で興行１００億を狙えることが、戦後日本の文化のありようを物語っています。僕らが見たい展覧会は、「風立ちぬ」の原画、背景、様々なメイキングと、それを解説する学芸員がいる美術館での展覧会です。

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＃風立ちぬ キーワードを幾つか配置し、今一度「風立ちぬ」の意味を考えてみよう。１，YouTubeで観たメイキングで、庵野さんが「足が地についた作品ですね」とつぶやいていた（ような気がする）。２，劇中人間１０年間頑張る時期があると言っていた（ような気がする）

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＃風立ちぬ ３，「俺達はもうやるべきことはやった。何もやることがない！」と宮崎駿が未来少年コナンの時の落書きを記憶している（気がする）。。。さて、宮崎駿とくれば、師匠、高畑勲である。この師と共に疾走した作品は「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」の２つのTVシリーズだ。

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＃風立ちぬ 「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」の２作品に通底しているテーマは非常な人間社会の現実とそんな中でも子供は生きる希望を無根拠に持ちつづけ、その事実によって人は生きる意味を価値を持てる、というものだった気がする。差別、妬み、騙し、友愛、裏切り、金！

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＃風立ちぬ 人助けの貧民医療を達成させようとする父の理想を具現化するためには金が必要ながために母は出稼ぎに出かける。「母をたずねて〜」のお話の骨子だ。TVアニメという枠の中でアニメの限界を超えて高畑と宮崎、そして小田部、奥山、篠原、他、旧東映動画の一派はアニメの次元を押し上げた！

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＃風立ちぬ 宮崎が「風立ちぬ」の中で何度も繰り返す１０年。宮崎にとっては、「ハイジ」と「母を〜」の２作品を作ったその時期だったに違いない。そして日本のアニメの底上げを達成したのもこの２作品であることは間違いのない事実なのだ。

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＃風立ちぬ 「母をたずねて〜」のシリーズ中、多くの話数 絵コンテを描いたのはあのガンダム富野由悠季だった。富野においても彼らの闘争をいろいろ複雑な思いを持って身をもって体験しただろうし、その結果、ガンダムの複雑な世界観が生まれたのではないかとも推論できる。

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＃風立ちぬ の白眉な部分は戦前戦中の日本の上流階級、エリートの社会を軸にお話を描いたことである。「母をたずねて〜」でも「ハイジ」でも貧しい主人公からの視点で書かれているが故、多くの共感を得られた訳だが、その辺が今回はわけが違う。主人公の設定が社会のカウンターではないのだ。

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＃風立ちぬ 宮崎自身の生い立ちの中で、疎開時に宮崎がトラックに乗っている時に、すがる親子を払いのける同乗者へ「のせてやって」と言えなかった自分への懺悔を語っていたが、下層階級ではなかった自身の生い立ちへのコンプレックスへの自己言及と、ニヒリズムでの対抗策を語ったようにも見える。

takashi murakami @takashipom

＃風立ちぬ まとめ。１，足が地についた作品、は、「母をたずねて三千里」の文法を使ったと思われる。２，宮崎らの頑張った１０年は「ハイジ」「母をたずねて〜」の十年であったのでは？

takashi murakami @takashipom

＃風立ちぬ ３，やるべきことはやった、とは、アニメで人間社会を活写する事が可能か？というテーゼへの答え出しは完了していた。故に、宮崎は自虐し続け「コレで引退だ」と叫び続けてきたのだ。

takashi murakami @takashipom

＃風立ちぬ しかし、今回、なぜ、宮崎は自作で涙したか。そこには高畑では出来なかった日本の階級社会の活写が達成出来、かつ、「母をたずねて〜」の時には出来なかった日本の戦後のアニメ文化の理想形を画力においても達成出来たらなのではないかと思う。

takashi murakami @takashipom

＃風立ちぬ つまり、映画作家 宮崎駿の人生全てがコンプリートした作品になりえ、感無量だったのではないかと思うのでした。