茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第989回「だめなやつには、魅力がある」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第９８９回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、最近、考えていたこと！

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だみ（１）最近のこと。ある大切な友人に会っていた。彼の人生の転機だったのである。転機の前に、どうしても会いたいと言ってきたので、仕事の合間に会って、乾杯した（アイデンティティを明らかにしないためにわざとぼかしています）。おめでとう、と言って話し始めたら、とんでもなかった。

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だみ（２）つもる話がある、というので聞いていたのだが、なんともダメダメな話だった。彼のここのところの出来事を聞いたのだけれども、「お前なあ」「なんじゃ、そりゃあ」「・・・・」（絶句）というような感じで、徹底的にダメな男の、どうしょうもないダメな話を聞くこととなったのである。

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だみ（３）それで、彼が私にどうしても会いたい、と言っていたのも、ようするにそのダメ話を聞いて欲しかったんだなあ、とわかった。やたらと人に言うことができない本当のダメ話。ぼくは、あきれながらも、彼の友情、というか、ぼくに対する信頼の気持ちが、実はうれしかった。

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だみ（４）それで、以来考えているのだけれども、なぜダメな人は魅力的なのだろう。もちろん、その人に他になにかすぐれたところがあって、見所がある場合に限られるのだけれども。女性には、「ダメンズ」専門みたいな人がいるけれども、彼女たちは、ダメ男たちに確かに魅力を感じている。

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だみ（５）どこも隙のない、完璧な人は、どこか魅力がない。例えば、祖父方も祖母方も日本を代表する文化人であり、本人も日本文化に深い造詣を持つある男、酒を飲むとからきしダメで、酒癖が非常に悪いが、だからこそ、何とも言えず魅力的だ。あんたのことだよ、白洲信哉！　@ssbasara

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だみ（６）だめなやつには、どこか、無防備なところがある。小林秀雄も、「君子欺くべし」という言葉を引いて、ダマされるくらいのやつが心が大きく、小心者はいつもダマされないようにしようとびくびくしていると話しているが、そんな側面は確かにある。だめ、ということは、大きさの証明でもある。

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だみ（７）だめなやつは、噂話の対象になりやすい。人間の会話の７割は人間関係についであり、そのかなりの部分がその場にいない人についての噂話である、という研究もあるが、「あいつさ」とか、「あの子がね」と噂話になるのは、たいていダメなやつで、みんなその引力圏にとらわれている。

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だみ（８）だめなやつで、最も良いパターンは、一つのことに情熱を込め、他のことを省みないので、結果として破滅する、というような場合であろう。何かにとりつかれていて、ついつい足もとの小石に躓いてしまう、みたいなだめさは、見ていても気持ちがよい。そういうだめなやつは、伴走してみたい。

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だみ（９）鑑賞に値するだめなやつは、案外自分を省みない。だめでナルシスト、というのはかなり食えない。だめなんだけど、大空を見ていて、自分にとらわれず、むしろ他人のことや、世界のことや、真実ばかり気に掛けている。そんなやつがいたら、ぜひ友だちになって、だめさを肴に酒を飲みたい。

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以上、連続ツイート第９８９回「だめなやつには、魅力がある」でした。