ユニークな研究をするために

誰も発見したことのないユニークな研究をするためにはどういうことを心がければよいのだろうか?少なくとも、ユニークな研究ができなくなる人は、一定の傾向がある。それに注意して思考を遊ばせれば、ユニークな研究をする端緒がつかめるだろう。
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shinshinohara @ShinShinohara

「ユニークな研究をするにはどうしたらよいか講演してくれ」という依頼が来た。正直、ユニークな研究ができるかどうかは運もある。私は様々なツキに恵まれて、多くの人からユニークと評価してもらえる研究成果を得ることができた。ただ、運を引き寄せるにもいくつか法則はあるように思う。

2013-07-29 18:55:18
shinshinohara @ShinShinohara

一つは「疲れないようにすること」。きまじめな研究者の中には、まだどんな結果になるのかも分からないうちに、膨大な実験作業を計画する人がいる。これでは失敗が続くと途中でイヤになってしまい、「この研究はダメだ」と自らレッテルを貼ってしまいやすい。こうした人は二度と同じ研究をしない。

2013-07-29 18:59:11
shinshinohara @ShinShinohara

私は、どうなるか予測がつかない状況では「ざっくり実験」を行う。細かいことは分からなくてもそこに新現象が潜んでいるのかどうかだけは判別できる簡単な実験にする。もし新現象が潜んでいそうな結果が出ればもう少し細かく実験を組み立てる。大きく網をかけるだけにとどめて、疲れないようにする。

2013-07-29 19:01:53
shinshinohara @ShinShinohara

二つ目は「失敗を大切にすること」。きまじめな研究者は、失敗すると「この研究はダメだ」とレッテルを貼り、それ以上検討することをやめてしまう。私は、失敗すると「何が起きたのか?」を丹念に調べる。失敗とは予想と異なる結果が出たということであり、予想外の現象が潜んでいる可能性が高いのだ。

2013-07-29 19:04:57
shinshinohara @ShinShinohara

三つ目は「結果を信じ、解釈は参考にとどめること」。融通の利かない人は「論文に書いていたから」という理由だけで信じ込んでしまうが、論文は実験結果という事実と、その著者の「解釈」が混ざっている。実験結果は信じて良いが、解釈は間違っていることがある。ここは注意が必要だ。

2013-07-29 19:08:19
shinshinohara @ShinShinohara

例えば昔は「リンゴが茶色くなるのは鉄分が酸化するからだ」と言われていた。しかし今ではリンゴの茶色は鉄分ではなく、ポリフェノールが原因だとされている。リンゴが茶色くなるのも、鉄分が酸化すると茶色くなるのも事実だが、「鉄分の酸化が原因」というのは「解釈」だ。解釈は間違うことがある。

2013-07-29 19:14:15
shinshinohara @ShinShinohara

どんなに権威と言われる人の言うことでも、信じ込む必要はない。実験結果は事実起きた現象だからそのまま信じて良いが、解釈はその人の考えが混じるため、間違うことがある。解釈とはその人の「仮説」でしかなく、参考にするのはよいが信じ込むのは良くない。

2013-07-29 19:15:53
shinshinohara @ShinShinohara

四つ目は「仮説を立てること」。きまじめな研究者の中には結果を目の前にしても、そこから思考を遊ばせることができない人がいる。それだと、「実験結果が出ました。終わり。」になってしまう。せっかくイノベーションの芽が潜んでいるかもしれないのに、陰に隠れて腐ってしまう。

2013-07-29 19:19:32
shinshinohara @ShinShinohara

私は大胆すぎるくらいに仮説を立てる。「こんなことが起きるなら、もしかしてこんなメカニズムが後ろに潜んでいるのでは?」と、想像を膨らませる。膨らませた後で現実的に考え直す作業が必要だが、まずは思考を自由自在に遊ばせ、目の前の現象の後ろに何が潜んでいるのか、想像を膨らませる。

2013-07-29 19:21:40
shinshinohara @ShinShinohara

五つ目は「連想する」。きまじめな研究者の中には学問を縦割りに考えすぎて、「それは異分野の話だろ?関係ない」と、一顧だにしない人がいる。そのために、現象を目の前にしながら、次にどう取り組んだらよいのか分からないでいる人がいる。

2013-07-29 19:24:27
shinshinohara @ShinShinohara

私はアナロジー(類推)を大切にしている。異分野で起きたイノベーションのエピソードは、目の前にしている現象をどう理解するかの助けになる。できるだけ様々な分野の面白い話を仕入れておくと、目の前の現象を様々な角度から切り込んでいける。

2013-07-29 19:29:29
shinshinohara @ShinShinohara

六つ目は「人の解釈を楽しむこと」。先に人の解釈を信じ込む必要はない、と述べたが、かといって「疑え」と言っているのではない。大いに参考にすべきである。きまじめな研究者の中には、自分の好みの解釈に固執して、他人の解釈を疑い、否定する人がいる。しかしこれでは思考にふくらみが出ない。

2013-07-29 19:31:30
shinshinohara @ShinShinohara

私は学生が口にする面白発言も、思考を柔軟にするための契機として活用するよう努めている。なぜそんなことを思ったのか理由を尋ねていくうちに、自分だけでは思いもつかなかった着想を得ることができることがある。学生の解釈に誤解が潜んでいても、その誤解の仕方を知ることで新しい着想を生むのだ。

2013-07-29 19:34:13
shinshinohara @ShinShinohara

七つ目は「寝かしておく」。きまじめな研究者は全力で実験し、疲れ切ってしまうのでうまくいかなかった分野には二度と関心を示さないか、「あれはダメだ」とレッテルを貼って否定してしまう。そこに新しい発見が潜んでいるかもしれないのに。

2013-07-29 19:35:37
shinshinohara @ShinShinohara

私は、失敗が続いてうまくいかないときは「今の私には何か足りないのだ」と考え、疲れてしまう前にさっさと実験を止めてしまう。その代わり、いろんな分野のニュースに目を配り、新しい情報が得られたら「あのテーマを復活させられるかも」と、実験を再開する。私には、そうした「原石」が数十個ある。

2013-07-29 19:38:03
shinshinohara @ShinShinohara

創造性の高いビジネスをすることも、創造性の高い研究をすることとやることは似ているように思える。起業家の話は研究にも通ずることが多い。自分の専門分野に閉じこもらず、様々な分野の話を聞くことは、創造性を高める上で重要だ。専門家になりたければ、百芸に耳を傾けた方がよい。

2013-07-29 19:40:53