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【twitter小説】ナィレンの暴走列車#3【ファンタジー】

古代都市ナィレンの列車システムが復活! 街をなぎ倒し暴走する列車に挑むのは騎士ミェルヒとエンジェ! @decay_world はツイッター小説アカウントです。この話は#4まで続きます
文学 書籍 減衰世界 Twitter小説 ファンタジー
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減衰世界 @decay_world
――ナィレンの暴走列車#3
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 操舵室は狭く人間二人分の奥行きしか無い。列車の復活と共に灯ったであろう照明がチカチカ点滅していた。キッチンの流し台のようなカウンターテーブルには様々な機器が光っている。用途不明のレバーもいくつかあった。 62
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「どうしたものか……解読できそうな文字はある?」  機器にはそれぞれ古エシエドール語で書かれた金属プレートがついている。ミェルヒは兜のバイザーを上げ、細かい文字を凝視する。 63
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 灰土地域の辺境にはエンジェやミェルヒのように古エシエドール帝国の末裔であるエシエドール人が住んでいる。人類帝国標準語が普及してきているとはいえ、彼らエシエドール人は固有の言語を持つ。だがそれは古エシエドール帝国崩壊と共に大分変化してしまっていた。 64
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「ミツメタマエ、コレ、ミズカキラ、ノチ、テイイゲイ、ヲシラス……いくつか分からない単語があるな。ミズカキラってなんだ?」 「ミズカキラ……水偏の単語みたい。調べてみる」  エンジェは鞄からポケット辞書を取り出し、単語を探す。 65
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 人類帝国標準語も、古エシエドール語も神の言語を元にした象形文字である。いわゆる漢字によく似た言語で、部首を持ち大抵一文字で一語を現す。そのため非常に大量の文字があり解読が困難になっていた。 66
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「ミズカキラ……安定する水……うーん、テイイゲイは定位置という意味だし、何かの計器っぽいね」 「別なやつを見てみよう。ココロエ、ミガシ、ソロヨ、デンハ……」  とにかくこうして一つ一つ解読していくしかない。 67
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 遺跡の機械はでたらめに操作すると大変なことを引き起こす可能性があるのだ。もちろんそうでない機械も多いのだが、非常に強力な装置が暴走した場合手がつけられなくなってしまう。適当に操作していたら爆弾だったという話もある。 68
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 古エシエドール帝国は魔法金属の扱いに長けた科学文明だった。しかしその技術は古エシエドール帝国崩壊と共に失われた。技術は断絶し、理解不能な機械だけが取り残されてしまった。都市は暴走し、いまやその莫大なエネルギーは化け物の餌にすぎない。 69
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 列車が停車する。駅についたようだ。遠くから駅のチャイムの音が聞こえる。 「駅は5つだったよな……あと3つ、急ごう」  ミェルヒは制御装置の場所を探しているが、なかなか見つからない。とにかく計器が多いのだ。 70
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 作戦を聞いたときの話では、確かに制御装置は列車内にあると100年前から伝わっていた。しかし、制御装置を弄った列車は逆走し始めたため駅で脱出し図面などは残せなかったという。制御装置は緊急時にしか使用しないせいか、複雑なセーフティを解除しないと現れない。 71
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 ミガサスはその知識を持っていた。これは失敗だった。ミガサスはそれを詳しく教えておけばよかったと後悔した。彼女はゆっくりと立ち上がった。装備はボロボロになり、装備を縫うように伸びているパイプはあちこちが外れていた。 72
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 状況を確認する。いま彼女は線路から外れた廃屋に突っ込んでしまっていた所だ。身に纏わりついたプラズマはその衝撃でようやく分散した。列車を追いかけねば……彼女はゆっくりと歩き出し、そして線路に復帰すると走りだした。 73
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 しかし装備は重く、彼女はすぐに歩きに戻る。ミガサスは頭を振り、冷静になろうとした。走って列車に追いつけるわけがない。ジェットパックを使うか? しかし飛んでいける距離にも限りがある。列車はどこまで進んでいってしまったのだろうか。 74
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 そもそも高速で移動する列車に並走するくらいしかジェットパックの速度は出ないのだ。追いつけるわけがない。彼女の脳裏に作戦失敗の文字がよぎる。いや、もしかしたらミェルヒとエンジェが上手くやって列車を止めるかもしれない。 75
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 彼女の歩みは遅くなり、とうとう立ち止まってしまった。そうだ、私の役目はもう終わりだ。無駄な労力を使っても、結果は変わらない。それはすでにあの二人次第なのだ。しかし、彼女の胸はそれを考えるたびちくちく痛んだ。 76
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 彼女はまだ出来ることがある気がした。本当に全ての道が閉ざされているのか? 閉ざしてしまっているのは自分の絶望ではないのか? 考えよう……最後のときまで、考えるのをやめるのはやめよう。彼女は装備を確認しつつ、歩き出した。 77
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 腰につけておいたポシェットをまさぐったとき、彼女の脳に電流が走った。地図だ。駅の場所が記してある……なんでこんな単純なことに気付かなかったのだろう。相手は暴走するイノシシではないのだ。列車は決まったルートを走る。 78
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 自分の場所を推測する。列車は大きく弧を描いて曲がりくねっている。直接最後の駅に行けば間にあうかもしれない。幸いなことに、自分の場所と最後の駅はジェットパックを使えばすぐだ。いける! ミガサスは機械の点検を素早く開始する。 79
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 壊れていた個所に急いで応急処置を施し、彼女はジェットパックを起動させた。背嚢はジェットを吹きだし、彼女は一瞬で宙に舞った。飛ぶのは初めてではない。訓練で何度もやったものだ。高い場所から街を見下ろすと、遠くで街を貫く列車の土煙が見える。間にあうか!? 80
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 轟音を上げミガサスは空を駆ける。最後の駅は街の繁華街に続く大通りにあった。凄まじい勢いで風景が後ろに消えていく。駅は、最初の駅のようにたくさんの機器がせり上がっていた。列車はあと少しで最後の駅に到着しようとしていたのだ。ミガサスもまた同じだった。 81
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「間にあえええええ!」  ミガサスは叫んだ。ホームの列車を告げるチャイムの音はその叫びにかき消されて消えた。 82
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――ナィレンの暴走列車#3 (了) #4へ続く
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