茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第996回「飛び道具の国、日本」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第９９６回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、報道されている麻生副総理の発言に思うこと。

茂木健一郎 @kenichiromogi

とに（１）麻生副総理のワイマール憲法下でのナチスの台頭についての発言が、問題になっている。ナチスについて、このような発言をすればどうなる、というシミュレーションが事前にできなかったのは残念なことだが、日本はおそらくナチスにはならないし、批判しても仕方がないような気もする。

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とに（２）日本って、どんな国？　昨日、千歳空港でラーメンを食べていたら、周囲の半分が「外国人」だった。ヨーロッパ系、北米系、中国、韓国系。みんなおいしそうに味噌ラーメンを食べている。隣にいたヨーロッパ系の青年など、ラーメンが来る前から箸を割って、カモーン！　みたいな態勢だった。

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とに（３）国の強さにはさまざまある。ぼくは日本で生まれ、５０年間この国で育ってきて、つくづく、日本には強いところも、弱いところもあるなと思う。味噌ラーメンはもちろん強いところである。英国南部、ブライトンの「回転寿司や」でイギリス人が「カツカレー」を注文してた時は頭くらくら。

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とに（４）世界の歴史をきちんと押さえ、その中での文化の発展の脈絡を踏まえた上で、何か次の一歩を示す、というのは、日本があまり得意なことじゃない。そういう訓練を、学校教育の中でもやってないし、世界も、日本には、あまりそういうことを期待していない。（残念だけど）。

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とに（５）全体主義との闘いだとか、人権思想だとか、そういうものが苦手なことは、最近の安藤美姫さんに対するハラスメントや、夫婦別姓や同性婚についての議論が本格化しないことを見て居ても明らか。世界は、日本に対しては、先進的な人権思想も、自由に関する鋭い洞察も、別に期待してない。

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とに（６）日本の強さは、いわゆる「サブカル」にある。「サブカル」という上下をつける、あるいは下から目線を敢えてやるニュアンスがあまり好きではないので、ここでは「飛び道具」と呼ぶ。日本は、飛び道具の国なのだ。哲学とか思想とかじゃなくて、世界があっというとび道具が、時々現れる。

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とに（７）ウルトラマンだとか、ガッチャマンだとか、エヴァンゲリオンだとか、攻殻機動隊だとか、そういうものを、善と悪に関する倫理思想、神学、身体性といった思想で分析しても、それなりに気が利いているだろうが、おそらく空しい。それよりも、そのような「飛ぶ道具」がでちゃうことの方が凄い。

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とに（８）逆に、コンピュータの理論的基盤をつくったアラン・チューリングや、言語から人間の自由まで縦横に論じるノーム・チョムスキー、あるいはそのような人たちを大切にする文化からは、ウルトラマンやエヴァンゲリオンのような「とび道具」は、おそらく出にくいのではないか。

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とに（９）麻生さんの今回の発言は、何か体系的な思想が背後にあるとかそういうことではなくて、一種の「飛び道具」。あるいは、麻生さん自身が「飛び道具」。政治家が、哲学者である必要があるか、ぼくにはわからない。むしろ、日本は、飛び道具の方が政治家として出世する国なのではないか。

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以上、連続ツイート第９９６回「飛び道具の国、日本」でした。