ムーブメントとしてのミステリ

ミステリの捉え方として、フツーに「ジャンル」として考えることに疑念を抱きつつあるので、少し考えをまとめてみました。
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じねん @jinensai

「本格冬の時代」について、つらつら考えている。猛烈な逆風が吹いていたのは事実だ。だが、逆風だったのは果たして本格だけだったのだろうか? 当時のマスコミは何かしら事件が起こるたびに、推理小説や推理作家を目の敵にし「犯人は推理小説を参考にし~」などという世迷い言を垂れ流していた。(続

2013-07-24 20:11:12
じねん @jinensai

承)その状況と折り合い推理小説を継承してきたのが「社会派」だ。彼らは本格の敵では決してない。痛み耐性に欠け、逆風に大人気なく過剰反応し、コアなファンが(勝手に)ついてきてくれていることに営業努力を怠り殿様商売をしてきたことの反省もなく「社会派」を後ろから撃つのは卑怯に感じる。(続

2013-07-24 20:12:37
じねん @jinensai

承)逆風はミステリ全般に対して吹いていたのだ。「社会派」と「本格」の明暗は対処法の違いにすぎない。抵抗(というより開き直り)が実を結んだ「社会派」ではあったが、やがて陳腐化という自壊作用を起こすこととなる。「何か目新しいものはないか?」と白羽の矢がたったものが新本格ではないか。

2013-07-24 20:13:43
じねん @jinensai

大まかな流れを俯瞰すると、私にはそう思えるのである。

2013-07-24 20:14:18
じねん @jinensai

さて、銭湯入ろう…。

2013-07-24 20:15:17
じねん @jinensai

ちょいと連投しておきます。

2013-08-02 02:58:01
じねん @jinensai

時々ミステリとは何かについて考えてることをアウトプットしていっているが、最近はジャンルというよりムーブメントなのではないかと考え始めている。佐野氏の訃報に接して所感を述べた時、ミステリをジャンルとして捉えれば「名探偵論争」は理論的には佐野氏に軍配をあげざるを得ないと感じたが、(続

2013-08-02 02:59:28
じねん @jinensai

承)同時にそれはジャンルとして捉えることの限界も示していると感じたのだ。なぜなら従来の文学ジャンルが「テーマ」を語る「手段」としてきた表現技法・素材の調理法をミステリはむしろメインに据えているからだ。「目的の手段化と手段の目的化」という逆転現象である。(続

2013-08-02 03:00:05
じねん @jinensai

承)極論するとそれまでの全ての文学ジャンルが駆使してきた「技法」の方を特化させ、本来重視されてきた人生如何に生くべきか的「テーマ」を「技法」を魅せるためのネタに使用しているということだ。敏感な文壇関係者が眉を顰め、攻撃や無視をきめこんだのもそこが引っ掛かったからだろう。(続

2013-08-02 03:00:47
じねん @jinensai

承)三島由紀夫の「推理小説批判」(「Yの悲劇」批判)が発表された昭和35年は松本清張が長者番付トップに躍り出た年でもあり、乱歩や木々らが強力な後ろ盾あるいは緩衝材として機能していた時分は、「少々風変わりな文学」として文学ジャンルの一翼に認識されてはいたのだろう。(続

2013-08-02 03:01:43
じねん @jinensai

承)だが、乱歩の逝去以降は急速にその立場は悪化する(味皇様のいないミスター味っ子世界とでも言うべきか)。「犯罪を扱うなどけしからん」とか「犯罪を助長する(三億円事件等)」といった他愛もない批判が罷り通り、猛烈な逆風となる状況に抗するだけの理論的支柱はなかった。(続

2013-08-02 03:02:31
じねん @jinensai

承)ざっくり言って「ついてこれる奴だけついてこい」が本格であり、「推理小説」の「推理」だけでは物語を支えきれないと「小説」のレベルを上げてバランスをとろうとしたのが清張。そして彼の成功をリアリティの追求にあると誤認し追随したのが社会派という図式になろうか。(続

2013-08-02 03:03:06
じねん @jinensai

承)結果的にこの社会派の動きが逆風を凪の状態に引き戻す貴重な働きを担うわけだが、弊害として奇人・変人の類に分類される名探偵は死滅してしまう。お話もリアリティが一人歩きしてヤニ臭いオッサン刑事の独壇場となり、むしろ海外翻訳の方への流れが加速することとなった。(続

2013-08-02 03:04:02
じねん @jinensai

承)そうした流れの中、それに抗おうとしたのが「黄色い部屋はいかに改装されたか?」であろう。「トリック不要」も「名探偵よ復活せよ」も前者が本格の「ついてこれる奴だけついてこい」批判、後者が社会派の「くそリアリズム」批判と捉えれば(都筑氏の脳内では)矛盾はしていない。(続

2013-08-02 03:04:38
じねん @jinensai

承)一方で「ミステリーは泥臭くてはいけない」(小泉喜美子)と「泥臭いミステリーがあったっていいじゃないか」(佐野)という論争未満のやりとりもあるのだが、これもミステリを洗練された技法とみるか小説としてみるかの立場の違いで、私の立場は小泉の主張の延長上にある。(続

2013-08-02 03:05:16
じねん @jinensai

承)都筑以降、流れは確かに変わった。しかしそれは都筑の想定になかった事態へと推移することとなる。それは貪欲に文学をネタ化するミステリが自らをもネタ化するという多分に自家中毒的傾向であり、あるいはそこが「新本格」のキモなのかも知れない。(続

2013-08-02 03:06:27
じねん @jinensai

承)しかしそれは蛸が自分の足を食べているような状態でもあり、そこにかなり危ういものを孕んでもいる。「系」あるいは「環」が閉じているものは外部から愛でるしかない。そこには読者代表(ワトソン)を作中で活躍させたり読者との知恵比べを前提にしたフェアプレイは成立し難いだろう。(続

2013-08-02 03:07:17
じねん @jinensai

承)作品中に読者の活躍(ボードゲームにおける自分のコマ=ワトソン、あるいは脳内での作者の仕掛けとのバトル)を内包・想定し、外部から愛でるだけの立場に追いやらないことが肝要だろう。作品を媒介に作者と読者がともに考え、それが掛け合いとして反映される方が楽しい。(続

2013-08-02 03:07:53
じねん @jinensai

承)あ、そろそろおねむの時間なので寝ます。今晩(未明)はここまで。

2013-08-02 03:08:28
じねん @jinensai

一見成功したかに思える松本清張方式にも問題はある。「推理」と「小説」のバランスはとれたが、融合あるいは不可分な緊密には至らなかったことだ。だが、そのことが逆に「小説」部分は活かして「推理」部分は最新技術に置き換えるリメイクを容易にしているとも言える。(続

2013-08-02 20:42:52
じねん @jinensai

承)しかしこれは「文学ジャンルの一翼を担うミステリ」の域を出ていない。ムーブメントからは明らかに後退している。老刑事が聞き込みで手がかりにたどりつく人間ドラマが結果的にミステリに対して吹いていた「逆風」を軽減したとしても、手法として如何にも役不足だ。(続

2013-08-02 20:43:26
じねん @jinensai

承)都筑氏が「論理のアクロバット」を前面に押し出したのも、小説的に「いい話」を「フーン」と拝聴するより、「想定読者」の思い込みや思考介入までも織り込み、また利用したどんでん返しこそミステリの真骨頂であり可能性だからではないか。(続

2013-08-02 20:44:05
じねん @jinensai

承)ゆえに読者との双方向性を拒み、作中に読者が介入することを許さない自己中心的なモノは、魅力的で論理的なミステリ要素を備えているとしても、出来には疑問符がつく。とどのつまり「どうせ解決するんでしょう」で終わり、読者が関心を持つことは難しい。(続

2013-08-02 20:45:11
じねん @jinensai

承)要は、鍵は読者にあるのだ。

2013-08-02 20:45:28