【twitter小説】ナィレンの暴走列車#4【ファンタジー】
体当たり同然にミガサスはホームに着地した。それと同時に列車が到着する。うめき声を上げ、ミガサスは立ちあがった。ジェットパックの燃料は尽き、大分軽くなっていた。火炎放射器の燃料と共用しているため、火炎放射器はもう使えない。 83
2013-07-29 16:36:18ドアが開く。ミガサスは火炎放射器と背嚢を捨てると、列車に飛び乗った。内部は蜘蛛地獄である……が、彼女は無策だったわけではない。腰につけた二振りのナイフを抜くと、ナイフから炎が迸った。近接戦闘用の特殊装備だ。 84
2013-07-29 16:41:42「燃えてしまえ!」 ナイフを巧みに操り、ミガサスは道を切り開いていく。蜘蛛の化け物は本能的に炎を恐れているようだった。しかし化け物たちも黙って見ているわけではない。彼らは先の戦闘で戦闘力を向上させているのだ。 85
2013-07-29 16:47:37装甲を持った化け物が進路を防ぎ始めた。奥には……怪しい紋様の浮き出た個体! 魔力の高まりを感じる。魔法を使うらしい。ミガサスの背後にも装甲を持った個体が壁を作ろうとしていた。包囲し、遠距離から攻撃するつもりだ。 86
2013-07-29 16:55:50ミガサスはゴーグルを下げ、腕を前方、化け物の群れに向けた。次の瞬間、化け物の魔法が炸裂すると同時にミガサスのグローブから液体が発射される! ビシビシと魔法の破片が彼女に振りかかるが、致命傷というほどではない。 87
2013-07-29 16:59:34魔法の破片に耐えながら、ミガサスはグローブから液弾を発射し続ける。この液体は酸と猛毒の混合物で、酸で皮膚を破壊し強力な毒を浸透させるものだ。液弾は前列にいた化け物の装甲を貫通し、やがて化け物は苦しみ暴れ出した。一気に化け物の陣営はパニックに陥る。 88
2013-07-29 17:06:41その隙をついてミガサスは蜘蛛の化け物に突進する! 火を吹くナイフの赤熱した刀身は装甲を貫くことは出来なかったが、液弾で開いた穴に突き刺すと蜘蛛の化け物は火を噴いて絶命した。魔法を使う個体も混乱状態で魔法が使えないようだ。 89
2013-07-29 17:12:22化け物の陣営は総崩れになり、慌てふためいて逃げだした。だがそれらにかまっているミガサスではない。進むことを最優先にし、炎のナイフで活路を切り開いていく。とうとう、操舵室のドアまで辿りついた。化け物は戦意を喪失し遠巻きに見るだけだ。 90
2013-07-29 17:16:44ドアの開錠をはじめる。先程開けたばかりなので作業はスムーズに終わった。プラズマの罠を警戒しながらドアが開くのを待つ。 「誰……ミガサスさん!?」 ミェルヒとエンジェが驚いた顔で出迎えた。 91
2013-07-29 17:24:49プラズマの罠は作動しなかった。操舵室に人がいると作動しないのか、理由は分からなかったがとにかくミガサスは解読作業に加わる。 「大分作業は進んでるみたいだね」 「ここから先が分からなくて……」 92
2013-07-29 17:29:05100年前の資料と同じだ。機械の乗る台の下部の扉が開き、隠されたコンソールが露わになっていた。これは特殊な操作を行うためのもので、ラベルが無くて進めなかったのだ。ミガサスは手早くコンソールを叩く。 93
2013-07-29 17:36:20すると台の上の機器が左右に割れスライドし始めた。そしてレバーのついた台がせり上がってきたのだ! ミガサスはレバーを思いっきり引く! すると、ガゴゴゴゴゴと歯車が軋むような音が聞こえ、車体が揺れ始めた。 94
2013-07-29 17:44:25やがて列車は次第に減速していき、完全に止まった。そしてゆっくりと逆走し始めたのだった。ミガサスは大きく息を吐くと、その場に座り込んだ。ミェルヒもエンジェも安堵の笑みを作る。 95
2013-07-29 17:48:10ナィレンは今日も静かな朝を迎えた。栄光の都市の残骸を眺めながら、薄汚れたバラックの群れは朝日を浴びる。列車が暴走したレールの上はしばらくは建築を行わないことにした。また列車が来るかもしれないからだ。 97
2013-07-29 18:00:45しかしまた100年も過ぎれば記憶は薄れ建物は立つだろう。それは仕方のないことではあるが。ミェルヒとエンジェはバラックでできたカフェテリアのテーブルで朝食を取っていた。エンジェは大きなオムレツを行儀よくナイフとフォークで切り分け食べている。 98
2013-07-29 18:07:29結局あの後駅で降りて旧都市部に帰っていく列車を眺めることになった。今回も破壊することはできなかった。ミェルヒは手から零れそうなほど大きなサンドイッチにかぶりついている。 99
2013-07-29 18:11:32「今回は大変だったね。私も遺物管理の勉強しなくちゃ」 「何かと役に立つからね……今回の報酬でしばらく楽できるから、勉強に専念してもいいかもしれないね」 カフェテリアには、おこぼれにあずかろうと小鳥がたくさんやってきては客を遠巻きに見ていた。 100
2013-07-29 18:16:30そのとき街角から悲鳴が上がった。そちらに目を移すと、昨日の蜘蛛の化け物が街人を追いかけている。 「あいつ……昨日駅でドア開いたときにでもはぐれたのかな」 「みたいね」 101
2013-07-29 18:21:12「誰かー! 助けてくれー!」 ミェルヒとエンジェは目を合わせ、笑い合った。そして同時に立ちあがる。ミェルヒは隣の席に置いてあった兜を拾い被る。 102
2013-07-29 18:27:31「さて、今日も仕事を始めるかな!」 化け物の叫び声が響き渡り、鳥の群れが飛び去った。今日もナィレンの日常は過ぎていく。 103
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