ギリシア哲学書をギリシア語で読んでみた プラトン『国家』第8巻
- Hellenike_tan
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きっかけは、参院選挙の翌日の思いつきでした…
【プラトン『国家』】昨日は、選挙が行われて囂しい夜になりました。選挙から一夜明けたこのタイミングではありますが、政治哲学に燦然と輝く大著、プラトンの『国家』をひもといていきたいと思います。とりあえず、第8巻544Cの「政治体制の分類」から。
2013-07-22 13:30:19導入-政治体制の分類
【導入】"οὐ χαλεπῶς, ἦν δ᾽ ἐγώ, ἀκούσῃ. εἰσὶ γὰρ ἃς λέγω, αἵπερ καὶ ὀνόματα ἔχουσιν" "χαλεπῶς"は「難しい」で"οὐ"がつくので「難しくない」です。(続きます)
2013-07-22 13:35:16(承前)"ἦν δ᾽ ἐγώ"は「私は言った」という意味で、プラトンの対話編では「ソクラテスの台詞」として頻出します。台詞の合間に地の文のように「~と私は言った」と継ぎ足されるものです。"ἀκούσῃ"は"ἀκούω"(聞く)の直説法未来二人称単数中動態です。(続きます)
2013-07-22 13:40:19(承前)"εἰσὶ γὰρ ἃς λέγω"は、「"ἃς λέγω"(私が言うもの)が~であるから」という意味です。"αἵπερ καὶ ὀνόματα ἔχουσιν"は「それはまさに聞いたことのある名がつけられている」という意味です。(続きます)
2013-07-22 13:45:14(承前)全体で「難しくはない、と私は言った、君は聞くことになるだろう、私が言うものは、まさに聞いたことのある名がつけられているものだから」となります。
2013-07-22 13:50:131番目:スパルタ風の体制
【1番目の政体】"ἥ τε ὑπὸ τῶν πολλῶν ἐπαινουμένη, ἡ Κρητική τε καὶ Λακωνικὴ αὕτη" "ὑπὸ τῶν πολλῶν"は「(複数の)ポリスから」です。(続きます)
2013-07-22 14:30:21(承前)"ἐπαινουμένη"は"ἐπαινέω"(賞賛する)の現在分詞中・受動態女性形単数主格です。"Κρητική"は「クレーテーの」、"Λακωνικὴ"は「スパルタの」という意味です。全体で「諸ポリスから賞賛されている、クレーテーとスパルタのそれ」となります。
2013-07-22 14:35:132番目:寡頭制
【2番目の政体】"καὶ δευτέρα καὶ δευτέρως ἐπαινουμένη, καλουμένη δ᾽ ὀλιγαρχία, συχνῶν γέμουσα κακῶν πολιτεία"(続きます)
2013-07-22 15:30:19(承前)"δευτέρα"は「二つ目の」という序数です。直後の"δευτέρως"は副詞型で"ἐπαινουμένη"にかかります。"καλουμένη"は"καλέω"(呼ぶ)の現在分詞中・受動態女性形単数主格です。(続きます)
2013-07-22 15:35:13(承前)"ὀλιγαρχία"。"ὀλίγος"(少ない)と"ἀρχή"(支配)の合成語で直訳すると「少数者支配」です。ラテン文字に転写された"oligarchy"は通常「寡頭制」と呼ばれますね。(続きます)
2013-07-22 15:40:16(承前)"συχνῶν"は"συχνός"(長い・大きい)の複数属格。"γέμουσα"は"γέμω"(満ちる)の現在分詞女性形単数主格で、"κακῶν"が"κακός"(悪い)の複数属格なので"συχνῶν"と結びつきます。(続きます)
2013-07-22 15:45:16(承前)"πολιτεία"は「政治」あるいは「政治体制」。『国家』と訳されるこの本の原題でもあります。全体で「二つ目の、そして二番目に賞賛されているのが、『寡頭制』と呼ばれるもので、多くの悪さに満ちた政治体制である」となります。
2013-07-22 15:50:143番目-民主制
【3番目の政体】"ἥ τε ταύτῃ διάφορος καὶ ἐφεξῆς γιγνομένη δημοκρατία" "ταύτῃ διάφορος"は「それに対する敵」、"ἐφεξῆς"は「順番に続いて」という意味です。(続きます)
2013-07-22 16:30:15(承前)"δημοκρατία"―せっかくなので解説をつけておくと、"δημος"(民衆)と"κράτος"(支配力)の合成語で直訳すれば「民衆の支配」、すなわち「民主制」です。全体で「それに対する敵として次に生じてくる民主制」となります。
2013-07-22 16:35:154番目-僭主政
【4番目の政体】"καὶ ἡ γενναία δὴ τυραννὶς καὶ πασῶν τούτων διαφέρουσα, τέταρτόν τε καὶ ἔσχατον πόλεως νόσημα."(続きます)
2013-07-22 17:30:16(承前)"γενναία"は「生まれの確かさ」という意味の形容詞で、ここでは「高貴な」という意味で用いられます。"τυραννὶς"は―ラテン文字に転写すると"tyrannis"です。だいたい想像いただけるでしょうか…(続きます)
2013-07-22 17:35:15(承前)現代では単に「独裁政治」「専制政治」程度の意味で用いられる"tyrannia"。元々は家系にも選挙にもよらずに権力を掌握した人物が統治する体制のことでしたが、プラトンが論じようとしているそれは「独裁的」「専制的」なことによる弊害を伴うものです。(続きます)
2013-07-22 17:40:14(承前)"πασῶν"は"πᾶς"(全ての)の複数属格。"διαφέρουσα"は"διαφέρω"(過ぎる・別の道を運ぶ)の現在分詞女性形単数主格。ここでは"πασῶν τούτων"(これら全ての)に対して「別次元を行く」といった意味になります。(続きます)
2013-07-22 17:45:14(承前)"τέταρτόν"は「四つ目の」という序数、"ἔσχατον"は「極端な」。"πόλεως"は"πόλις"(ポリス)の単数属格で"νόσημα"は「病」。全体で「そして高貴な僭主政、これら全てに立ち勝り、四番目にしてポリスの極度な病である」となります。
2013-07-22 17:50:16