#3　幻想曲 ♪ ワン・ウーンド

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―夕方。 「はぁっ！…ああ…うぐっ…ああ」 １ＬＤＫの狭い部屋。ベッドの上で浅空勇矢は苦痛に喘いでいた。 右胸から脇腹辺りまでがごっそりと無くなっている。 魔力も半分未満に低下している。 回復強化で強引に再生させると血肉が薄まり過ぎるため、今は現状維持に留めている。 1

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チン！ とベッド脇の電子レンジが鳴る。 無理に身を起こす。 まず隣の冷凍庫から次を取り出し、入れ替えに解凍済みの骨付きチキンを取り出す。 ゆっくりと肉を喰い、骨も噛み砕く。 栄養素の１μｇも逃さず吸収せんとするが如く咀嚼した。 冷蔵庫から茶と栄養剤も取り出して飲む。 2

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「はーーぁっ」 文字通りに一息吐く。 ここは自宅では無い。 新潟県某所。海辺に面した８階建てアパートの一室。 緊急避難拠点の一つ。 通気口や上下水道を塞ぎ、空気清浄機や冷蔵庫等のみを常時稼働させてある。 万一に備え、非危険物…保存食や医療品類のみをストックしてある。 3

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部屋の壁やドアには対魔術師・軍・警察全てを想定した侵入対策を施している。 最も元がオートロックすらない安アパートであり、防御性能は薄紙レベルだ。 その代りに侵入の痕跡や前兆だけは高精度で見抜く。 対した機密は無い休息用の部屋なので、奇襲さえ防げればそれで充分なのだ。 4

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…血肉の材料を吸収したところで、回復出力をローからミドルに上げる。 何らかの敵の奇襲を、あまり心配せず眠れる貴重な場所だ。 自宅の他には同様の施設数か所と、隆光のいる時の部室と…… 「いやアレはダメだな」 あそこはある意味地球上で最も安全だが、別の意味では最も危険である。 5

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…四年一か月ほど前の出来事を、全力で首を振って頭から消し去る。 「いぎいぃぃぃっっ！！？」 首振りの刺激で傷口が痛む。ただでさえヒールアクセルは痛みが倍増するのだ。 大人しく休むに限る。 じっとしていると今日の出来事が思い出される。 あれは一時間前―― 6

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ドラゴン三匹にビッグキャンサー二十弱、ミドル千ほどの標準的なフォームド群。 国防軍の展開も間に合っており、彼等だけでも勝てる戦闘の筈だった。 体の『不調』もあり、放っておいても良かったが、ホワイトが行かないことで余計に弾薬…国税が消費されたり、万一死者が出ても面白くない。 7

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何より、今朝の様なリハビリとしては丁度良いタイミングだ。 前回の日曜のフォームド群は市街地に突然現れた為に被害こそ大きかったが、ドラゴンがおらず、さして苦戦しなかった。 １体でキャンサー１万匹以上に比肩する脅威度のアレがいないこと自体は良かったが、リハビリには不足だった。 8

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そして出動し、順調に敵を蹴散らした。 艦船に穴をあけうるビッグ群を数体、危なげなく蹴散らした。 次に、全力でドラゴンを一体瞬殺。 戦闘機を援護して、二体目を倒させる。 そして三体目が光線を盾で防ぎ、障壁を中和。 巡洋艦のミサイルがそこに撃ち込まれる。 までは良かった。 9

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水平線の向こうから飛来した三発のミサイルが一筋の光線で撃墜された。 そのまま近くの戦闘機を狙うが、危うく回避。 光線の気配を感じたホワイトが、その線源を探ると…ドラゴンの長首の中程から頭が生えていた。 これまでに双頭タイプは確認されていたが、隠し首を持つ物は初めてだ。 10

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口からしか光線を吐かないからと油断していた。 だが一射目が丁度止まったので、二射目を防ぎに行く。 盾も張り直し、残り数秒の照射には余裕で耐えられる。そう思っていた。 三つ目の首が現れるまでは。 二つ目のやや上のそこから三射目の気配。 戦闘機への直撃コース。 11

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両手で盾一つに魔力を注いでいる為、二枚目は出せない。 他の手段で逸らすにはもう遅い。 ―反射的に体を盾にしていた。 魔力の篭る肉体は魔力光線に対し軍艦並の耐久を持つ。 ドラゴンの光線は軍艦も数瞬で貫通するが。 戦闘機は逃げ切れた。 危険な新種は国防軍が倒した。 12

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最近はＵＡＲ関連で予想外の苦戦が続いていたから、とフォームド相手に油断していたのは否めない。『不調』以前の問題だ。 死者こそ出なかったが、何億円が無駄になったろうか。 後一週間もせずに「ＵＡＲとは」決着だというのにこんな調子ではダメだ。 全力で休まねば…。 …違和感。 13

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…ベッドの下に、誰かがいる… 14

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エバー・ラスティング・アロー ミストルティン編 第十八話　壊縁 ♪ ～ホワイトのショータイム～インディヴィジュアリスツ・エイム～ #3　幻想曲 ♪ ワン・ウーンド ##evlst

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→　中断　→→→

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エバー・ラスティング・アロー ミストルティン編 第十八話　壊縁 ♪ ～ホワイトのショータイム～インディヴィジュアリスツ・エイム～ #3　幻想曲 ♪ ワン・ウーンド #evlst

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（エバー・ラスティング・アロー　ミストルティン編十八話までのあらすじ） （企業・社会人向けのロボット競技大会アクトボット。 工業界で注目の高いこの大会に、中学生のみで優勝すべく 2013年4月　再開発区・新渡町に13人の子供達が集められた） （第0話）

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（練習試合やプレゼンテーションが行われる中、主要人物の一人、浅空勇矢は■■■と接触する。 ■のもたらした預言書、通称『Ｍ文書』は10月までの半年の未来の出来事は告げるものであった。 Ｍ文書は告げる。 魔術師組織ＵＡＲの儀式により、邪神が復活し関東一帯を滅ぼす、と。）

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（それがきっかけで第三次大戦が起こり、世界が…恐らく破滅する… 荒唐無稽な内容であったが、勇矢にはそれを信ずるだけのいくつもの理由があった。 最大の要因が、彼もまた魔術師であるということであった。） （第1・2話）

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（常日頃から、謎の科学戦士『ホワイトナイト』として、人類の敵『フォームド』と戦っていた彼は、 これでアクトボットや修行に加えて四足以上のわらじを同時に履く羽目になる。 4月は手始めに二度に渡って派遣された計二十名ほどのＵＡＲを血祭りに上げ、ＵＡＲとの戦いが始まった） （三・四話）