DB601のラ国前夜についてのあれこれ

9
Bunzo @Kominebunzo

ダイムラーベンツ600系発動機と陸海軍との縁は昭和10年にハインケルに設計を発注しようとした十試軽爆機に始まる。けれども1935年のドイツ再軍備宣言で増産中のハインケルは珍しく海軍の発注を断る。十試軽爆機は幻の計画に終わり、He社が代わりに差し出したのがHe118急降下爆撃機。

2013-01-30 20:31:03
Bunzo @Kominebunzo

He118の輸出にHe社は好意的で期待と共にDB600発動機まで売ってくれる。海軍はここでDB600の国産化を決める。ただし在独の川崎と陸軍も動き始める。この時期、小型機用千馬力液冷発動機はそれだけの価値があったということ。

2013-01-30 20:33:32
Bunzo @Kominebunzo

ここでDB社と折衝が始まるけれども、DB社はHe社が極東の新興国に最新鋭発動機を売ってしまったことが非常に不快。DB社は日本に対して終始良い感情を抱いていない。当然、価格交渉は難航。 予算が限られる日本海軍は悩みぬく。

2013-01-30 20:37:23
Bunzo @Kominebunzo

購入条件は製造権に加えて発展型の権利と東アジアでの販売権を含むもの。愛知が前面に立ったけれども、愛知生産の国産DB600を陸軍が装備することには何の問題も無かった。陸軍、川崎もこれに納得して引き下がる。価格交渉は相変わらず難航していたが、ドイツ政府当局に仲介を頼み、合意が見える。

2013-01-30 20:40:24
Bunzo @Kominebunzo

こうして彗星用のDB600は手に入るが、600と601は似て非なる別エンジン。600の国産化計画と試作審査が601より先行して始まる。「アツタ」(カタカナが正式)は600ベースの11型(AE2)と601ベースの21型以降(AE1)の2つの発動機の総称。

2013-01-30 20:44:31
Bunzo @Kominebunzo

昭和13年、601の情報が入り、海軍は大倉を通じて5基の購入するべくさっそく交渉開始。ただしこの時点でDB601に関する情報は限られ、海軍は「それの何処がどのように改良されているのか」さっぱりわからなかった。

2013-01-30 20:46:23
Bunzo @Kominebunzo

燃料噴射装置、流体接手式二速過給器といった新機軸にモーターカノンの魅力が重なって海軍は新機種である局地戦闘機の発動機候補に601を選ぶ。昭和10年代前半の海軍はモーターカノンに大いに期待してDB以外の試作発動機を多数試作中。空冷倒立まで含めて全てモーターカノン対応。

2013-01-30 20:50:28
Bunzo @Kominebunzo

この時期の愛知は寿、光といった空冷発動機の成功と大々的な採用で発動機事業の存続に関わる窮地にあり、海軍の仲介で中島に技術研修を依頼して寿二型改の生産を行い経営を維持する状態。昭和13年度の愛知製寿発動機はこんな事情で出現した。

2013-01-30 20:54:05
Bunzo @Kominebunzo

最新発動機DB601の製造権獲得はまさに社運がかかる事業となる。戦闘機への採用を見込んだ陸軍と川崎の動きも活発化し、海軍は交渉の一本化に乗り出すが愛知の現状が知られるに従い、陸軍は独自の道を希望するようになる。

2013-01-30 20:56:45
Bunzo @Kominebunzo

海軍の妥協案は愛知が前面に立って契約者となり、川崎がその下請として連なる、というもの。けれども陸軍はこの提案を拒否。最新技術を直に導入できる単独契約を希望する。話はまったくまとまらない。海軍はDB600の契約条件(発展型の権利)を持ち出してDB社と交渉し優先権を主張する。

2013-01-30 20:59:44
Bunzo @Kominebunzo

少数機の整備を考えていた海軍と主力戦闘機の調達を見込んだ陸軍との構想の違いから結局、両社が別々の契約を締結することになる。ドイツ側も日本に空軍が二つある、という現状をよく理解して対応。外貨不足で軍備拡大が停止しかねないドイツには嘲笑する余裕など全くない。無事契約締結を祈るのみ。

2013-01-30 21:03:34
Bunzo @Kominebunzo

契約がまとまる昭和14年9月、不測の事態が発生。欧州は戦争に突入してしまった。世界一の英海軍の封鎖を突破して日本にDB601が無事に届くとはとても思えない。交戦国となったドイツも果たして本気で面倒を看てくれるかどうか、おぼつかない。何しろDB社は「日本が嫌い」だから・・・。

2013-01-30 21:54:49
Bunzo @Kominebunzo

もうDB601は届かないかもしれない。日本海軍は本気で心配し始める。研究中の局地戦闘機のモーターカノン発動機としてのDB601は危うい。と思った海軍は局地戦闘機を「火星」搭載に変更する。三菱への内示が昭和14年9月である理由はこれ。計画要求は昭和15年が明けてから。雷電誕生。

2013-01-30 21:57:50
Bunzo @Kominebunzo

海軍は601の入手見込みが危ういと判断した時点で入手済の600を復活する。これなら行ける、という考え。彗星の試作一号機は600搭載で完成。略符号が601のAE1Aに対して600がAE2Aと逆転しているのはこの復活劇が原因。「11型」・・は制式採用後に辻褄を合わせただけのこと。

2013-01-30 22:01:15