大湊への赴任

本拠地を移すことになったある提督と艦娘の物語。 もちろんモデルになってるのは某おしい市在住の俺提督です。
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カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

俺達は今、房総半島の沖合を航行している。いつもは多くて6隻の艦隊だが、今回は40隻近い巨大艦隊。しかしこれでも減らした方だ。

2013-08-08 17:30:36
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

出撃中に洋上を彷徨う迷い艦娘達を保護するのはしょっちゅうのことで、一時は100隻にも達し港から溢れんばかりだった。その中で提督のお眼鏡に適って出撃のお供や遠征を任される艦は半分にも満たない。だから今回は、思い切って置いてきたのだ。

2013-08-08 17:31:03
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

ある者は武装を残る者へと受け継ぎ、ある者はそれを工廠で分解して資源にして。そうして一介の少女に戻って、街の雑踏へと消えていった。特に別れを気にかけない者、名残惜しそうに何度も振り返る者、感極まって泣き出す者もいた。

2013-08-08 17:31:29
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

彼女たちと再び出会うことは、おそらくないのだろう……あの街とも。

2013-08-08 17:31:37
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

「提督……」 いつまでも航跡を眺めている提督に、かける言葉が見当たらなかった。ああ、そろそろ北に進路を変えないとな。

2013-08-08 17:32:05

カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

近場で良かったよ、それが提督の口癖だった。聞けば我々のいた鎮守府から故郷まで汽車で一時間程らしい。さしたる訓練を受けることもなく、いきなり一個艦隊の総司令官として着任した提督のことだ、ひとつふたつ隣の町とはいえ、地元に近い街が本拠地であることに安心感を覚えていたのかもしれない。

2013-08-08 17:33:40
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

俺だってこの鎮守府は好きだった。波の穏やかな内海はキラキラと陽光がよく映えたし、提督の話では雨の降る日も少なく嵐も滅多に来ないらしい。理想的な鎮守府でこれからこの提督と過ごしていけるのか、ない胸を期待にふくらませたりもした。

2013-08-08 17:34:01
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

しかし平穏な日々は思ったより早く終わりを告げてしまった。三日前にあの忌々しい辞令が提督のもとに届いたのだ。

2013-08-08 17:34:56
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

鎮守府が手狭になったため新しく設置される警備府に赴任せよという命令だ。噂じゃ着任したばかりの新人提督ばかり送られるらしい。理不尽なことだが、年功序列は絶対だった。

2013-08-08 17:35:23
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

それからの三日間は慌ただしかった、と普通はなるのだけれどここは鎮守府だ。家財なんて大した量があるわけでもないし、必要なものはあっちにだって置いてある。

2013-08-08 17:35:42
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

結局執務室の壁紙や布団、畳を荷造りして、あとは資源と一緒に皆で手分けして持つだけで引越しなんて出来てしまう。今まで過ごした執務室があっという間に着任当初の様子に戻り、提督はどこか寂しそうな笑顔を浮かべていた。

2013-08-08 17:35:59
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

鎮守府を離れてから、提督はずっと後ろを向いている。馴染んだ故郷を去ることへの、そしてこれから赴く警備府に対しての不安でいっぱいなのだろう。聞くところではあの警備府はかなり厳しい環境だそうだ。冬には大雪が降るし海も大いに荒れる、これまでとは正反対の土地。

2013-08-08 17:36:48

カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

「不安……なのか?」気がつけば提督を後ろから抱きしめていた。いつもはこいつの方が俺に抱きついてくるのにな。そんなことを考えるうちに、急に前の鎮守府で過ごした日々が懐かしくなってきた。

2013-08-08 17:37:22
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

なんの変哲もない少女だった俺が鎮守府の工廠で装甲を身にまとい、軽巡洋艦「木曾」の魂を受け継いだ艦娘として生まれ変わったのは提督が鎮守府に着任した直後のことだ。

2013-08-08 17:38:07
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

あれからずっと提督の指示に従って出撃してきた。それこそ最初の頃は被弾してドックに入っている時でなければ旗艦として駆逐艦や後輩の軽巡洋艦を伴って戦いに赴いた。

2013-08-08 17:38:21
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

最初は資源のやりくりに苦労したっけな。配給される燃料が貯まるまで出撃を見合わせたりしたっけ。燃料が満タンじゃない状態で出撃して全力が出せずに苦労したこともあったなあ。

2013-08-08 17:38:39
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

見るに見かねた提督が先任提督たちの作った指南書(Wiki)を使い始めて、遠征の報酬で燃料をもらうようになって大分楽になってきたんだ。それからはとにかく出撃を重ねて、みるみるうちに練度(レベル)が上がっていったなあ。

2013-08-08 17:38:59
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

重巡や水母、戦艦に空母まで揃ってきて、時には俺抜きで出撃することも出てくるようになった。でもあいつらはとにかく修理に時間がかかって、その間に俺が呼ばれたりするからいつも成績は俺が一番だ。

2013-08-08 17:39:27
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

真っ先に改造を受けたのも俺で、ひとたび改造を受けてからはたくさん近代化改修までされて、いつしか下手な重巡よりも強くなってしまったな。

2013-08-08 17:39:39
カーシャ・オリンスキィ @exhell_resident

これからもきっと、俺はこの艦隊の主戦力であり続けるのだろう。ひょっとしたら全く歯の立たないような敵が現れて、戦艦や空母ばかりで出撃するようなことも出てくるのかもしれない。でも、それまでは提督の力になりたいんだ。

2013-08-08 17:40:09