夏のひとりついのべ祭

二年ほど前にも一回やったのですが、祭りっていうか、ついのべを毎日最低一つは書こうという夏休みの宿題的なあれです。できの善し悪しはあとで見返せばきっとわかるでしょう(無責任)
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添嶋譲 @literaryace

今日も誰かが玄関に。金星ちゃんだそうだ。大きなお屋敷の前までひっぱられる。「お家の前を通るからビデオにとってほしいの」不思議だったが、言われた通りにした。お屋敷にはたいようと書かれていた。そうか。日面通過か。宿題?「そう。ありがとう」にっこり笑って帰っていった。 #twnovel

2013-08-01 00:06:49
添嶋譲 @literaryace

そういえば、ずいぶん前に遠くにまだ見たこともない友だちを探しに出かけたボイジャーくんから手紙が届いた。そこには小さく小さくうちの絵が描かれていた。「友だちにあげたいから絵を描いて」とねだられて、持たせた絵はまだ持っているのだろうか。ぼくは元気だよ、の文字が光る。 #twnovel

2013-08-01 21:14:34
添嶋譲 @literaryace

満員のバスとか電車とかいつまでたっても慣れなくて、朝っぱらからなんでこんな密着してんだよって軽く殺意感じたりとか、柔道部とかマジ勘弁っていっつも思うんだけど、今朝はあいつが目の前にいて超いい匂いだし、いや、それすげぇまずいんだけど、でもこのドキドキはきっと恋だ。 #twnovel

2013-08-01 22:42:12
添嶋譲 @literaryace

ホースが放つキラキラ光る水が、僕たちのてっぺんから降り注ぐ。きゃーともひゃーともつかない声をあげ走りまわる。夏が来たんだね。僕の顔を見つめて笑う。来たねぇ。待ってた? どうでもいいようなよくないような会話。きっともうこんなことはないかもな。僕は笑い返せなかった。 #twnovel

2013-08-02 19:56:13
添嶋譲 @literaryace

君を好きになって、声をかけて、一緒に帰ったり、ファストフードで過ごしたり。君はいつもよそ見ばかりして、僕の話も半分以下、誰かを探すような、見つかりたくないような、そんな表情。学校で見かけた時、別の人といて、とても安心した顔で。ああ、そうか。僕がやっちゃったのか。 #twnovel

2013-08-02 22:49:43
添嶋譲 @literaryace

泳げないのに来るほうが悪いとばかりに荷物をみんな押しつけて海へ入っていく。タオルを頭からかぶって膝を抱えて荷物番。最初からそのつもりだったくせに。むしゃくしゃする気持ちをビールで流し込む。岩にあがったはしゃぐあいつらを見つけて「バルス!」叫んだ途端に岩が崩れた。 #twnovel

2013-08-03 18:34:28
添嶋譲 @literaryace

男は樹に名前を彫る。小さな集落のすべてのひとの。古くからの言い伝えが本当なら、この樹に名前を彫ればその人はこの世から消えてしまうという。一人。また一人。何日もかけてようやく彫りあがった頃、その集落は大嵐ですべて流されてしまった。男だけが見つからないという。 #twnovel納涼祭

2013-08-04 10:57:37
添嶋譲 @literaryace

近寄ると同じ目にあわすぞ。投げられた椅子が身体を直撃してその場にうずくまる。後頭部を鷲づかみにして、壁に強く打ち付ける。お前だって同じじゃねぇか。誰も助けにこないよ。みんな自分が可愛いからね。鈍い音が何度も、何度も。息が止まる。まだ誰もその場から動かない。 #twnovel納涼祭

2013-08-04 11:47:21
添嶋譲 @literaryace

見知らぬ同級生から手紙をもらう。開けると白紙からにじみ出る血染めの「殺してやる」という文字。まさか夢。吃驚して目を覚ますと体が動かない。馬乗りのそれが僕の首をしめていた。声も出ない。口をつく知らないはずの経文。そのまま気を失う。目を覚ますといつもの朝。 #twnovel納涼祭

2013-08-04 22:47:25
添嶋譲 @literaryace

さっきから彼女、ずっとケータイ見てる。会話はない。暇なので雑誌を読破する。コラムは全文覚えるくらいの。なにしに来たのさ。返事もない。時々笑う。たぶんケータイの文字に。顔を、あげ、ない。コーヒーも減らない。忙しく動く親指。このまま姿を消しても恐らくは。僕のせいに。 #twnovel

2013-08-05 18:13:32
添嶋譲 @literaryace

不思議な音に誘われて中年男がぞろぞろとついていきます。街を一回りする頃には一人もいなくなってしまいました。残されたのものにとってはどうでもいいことでした。なんの役にも立たない中年男がいなくなったのですから! この際イケメンだけになればいいのにといい出す始末です。 #twnovel

2013-08-06 00:16:49
添嶋譲 @literaryace

高校生「おばちゃん、ブタちょうだい」 おばちゃん「おこなの?」 高校生「激おこだよ」 ---20分後--- おばちゃん「はいよ、お待たせー。ブタのお好み焼き、激辛ソースねー」 #twnovel

2013-08-06 19:55:14
添嶋譲 @literaryace

愛してるとか、下の名前とか呼ばれた時はたいていなんかある。欲しいものがあるか、大事なもの壊したとか、浮気とか。先週は携帯壊されて、昨日は他に好きな人ができたと言ってきた。勝手にすれば?そういうと必ず悲しい顔をする。何でもあたしの許可がないとダメらしい。バカか。 #twnovel

2013-08-06 22:37:42
添嶋譲 @literaryace

えっと、現在個人的夏の試練、ついのべ千本ノック的な何かを実施中。お題いただければ書きます、できる範囲で。 #twnovel そんなこと言って大丈夫なんすか。かき氷食べながら後輩はいう。大丈夫でしょ。基本ぼっちだからあんまり見向きもされないし。するとダメじゃんこいつ使えねぇ、の声。

2013-08-06 22:49:38
添嶋譲 @literaryace

部員勧誘のときに小走りでやってきていきなり抱きつくと「すき☆」と言い放った彼もすっかり部に馴染んでいます。で、抱きつかれたほうはまだ認められないようです。よりにもよって男子とは! 俺の! 部活ライフは! 「薔薇色じゃん」机に突っ伏したままピクリとも動きません。 #twnovel

2013-08-07 21:07:04
添嶋譲 @literaryace

緊張するから見にくんな、って言われて。でもやっぱ野球やってるとこ見るの好きだからこっそり見にきた。打席に立ってピッチャー睨みつけて、うん、かっこいいよ。 #twnovel あっという間の夏が終わるってこういうことかな。あんなに頑張ったのに報われないなんて。そう思うと涙が出てきた。

2013-08-08 21:57:37
添嶋譲 @literaryace

飛行機雲の行く先を知りたくて一人で自転車を走らせる。砂利道をまっすぐに、どこまでもどこまでも。笛吹男に攫われたみたいに二度と戻れなくてもいいと思った。あの雲だけが僕を僕の知らないどこかへ運んでくれるのだ。夏に一人は必ず町から行方不明になる理由がわかる気がした。 #twnovel

2013-08-09 22:56:03
添嶋譲 @literaryace

はしゃぐ誰かを遠巻きに見るのが好きだ。というかそれしか自分にできることはなかった。文化祭のときも、遠足のときも、体育も、放課後も。顔には出さない。まぶたの裏で笑う。声も出さない。耳の奥ではしゃぐ。そうして一通り波が過ぎるまで堪えるのだ。涙がしみて泣かないように。 #twnovel

2013-08-09 23:03:08
添嶋譲 @literaryace

ぎゅっ。「え」「なに?」ぎゅーっ。「わっ」「ちょ」疾風のように現れて抱きついては消えてゆきます。「コネコ、コイヌ!」気がついたソエジマさんが二人を呼びます。何やってんのさ。「今日はハグの日だわん」「にゃ」だからっていきなりだとただの怪しいヒトだよ。 #コネコビト #twnovel

2013-08-09 23:16:52
添嶋譲 @literaryace

花火の音に紛れてさよならと言われた。何事もなかったみたいに二人で並んで見てた。「あ、ニコニコしてるー」スタンプみたいな花火が上がるたびにきゃーきゃー言って俺なんかどうでもいいみたいだ。そりゃそうか。ふられたんだし。「誘えばよかったな」最初からしたらよかったのに。 #twnovel

2013-08-10 19:55:13
添嶋譲 @literaryace

トランク引きずって駅から家まで歩いた。迎えに来てもらえばよかったのかもしれないけどそこはなんか意地だった。途中、祭の神輿とすれちがった。子どもの頃背負ったやつ。あんな小さかったっけか。過ぎるまで見ている中にあの頃のあたしと同じ目をした子がいた。帰ってきたんだな。 #twnovel

2013-08-11 20:34:00
添嶋譲 @literaryace

下駄の鼻緒が切れた、みたいな古めかしい小説のようなこともなく、交通整理のバイトを淡々とこなす。彼女があいつと通りすぎてもこっちに気づく様子もない。「車通りまーす」声をあげる。馬鹿面したヤンキーの車。死ねよ。心の中で毒づく。彼女がふりむく。つないでいた手が離れた。 #twnovel

2013-08-12 19:13:26
添嶋譲 @literaryace

#twnovel 部屋に鍵をかけラジカセのボリュームをあげ「やりたい」って言ってきた。うわなにこの昭和の漫画みたいな状況って思った。力は向こうのが強いからどう考えたって負ける。どんどん冷静になってく自分と奴の鼻息の荒さのギャップ。しかたない。覚悟を決めてめんどくさいBLの始まり。

2013-08-13 12:54:39
添嶋譲 @literaryace

たまにしかうちに来ないけど、来たら必ず膝に座らせてくれる。ぼくはそこで丸くなるのが好きだ。大きな手で背中をなでてくれてでもむやみに話しかけてきたりはしない。そうこうしてると眠くなってくるんだ。できたら毎日うちにいてほしいにゃあ。ぼくのお嫁さんにならないかにゃあ。 #twnvday

2013-08-14 12:55:19
添嶋譲 @literaryace

来る日も来る日も窓口で眠っているだけが私の仕事だそうだ。ときどき偉そうな帽子をあてがわれ、カメラの前に出される。流れ流れてここに居着いただけなのに、気がつけば誰よりも必要とされていた。私目当ての客人も、仲間も増えた。「たま駅長、取材ですよ」やれやれ、行きますか。 #twnvday

2013-08-14 23:20:35