原爆－２年前の夏のつぶやき

和田浩明💉6/ HiroWada #現場に感謝 @spearsden

アメリカにいたころ、被爆者の人たちがやってきたことがあった。スミソニアン博物館でエノラゲイが展示されたことに対する抗議署名を手渡すためだ。展示会場まで同行して、実物を前にしてちょっとお話をしたのだが、「ちくしょう、って感じですよ」と仰られていたのが忘れられない。

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ちなみに、当時、エノラゲイの説明版には「戦前における米工学の精華」といった類の賛辞が書かれていた。「誇り」なのだ、あの飛行機は。展示場所はDC郊外のダレス空港の近くだったが、開館式には、チェイニー副大統領と、レンキスト最高裁判所判事が招かれていた。国家的プロジェクトだった。

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95年にスミソニアンがエノラゲイ展示を企画し、大圧力団体でもある退役軍人諸団体が強く反発して中止に追い込まれるという事件があったが、911と前後して、アメリカの空気はさらに大きく変わったのだと思う。このへんは肌感覚がないので、よくわからいのだが。

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数年前、ミネアポリスであるおじいさんに話を聞いたんですが。フィリピンで旧日本軍の捕虜になって、大村の炭鉱で強制労働させられていた人。彼に、広島、長崎に原爆が投下されたのを知ったとき、どう思ったか聞いたんですね。ちょっと考えた後、済まなそうな顔をして「これで生きて帰れると思った」

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おじいさん、当時は原爆のことなんか何も知らなくて、終戦後にやってきた記者（バーチェットね）に「radioactivity（放射能）がいっぱいだから長崎には近づくな」といわれたとき、「radio（無線）がいっぱいって、どういうことだ」といぶかしんだそうな。

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個々の米軍兵士にとり、原爆投下がもたらした（ように見えた）終戦は、自らを死から解放したと感じられたという話は、それはそれで、すとんと胸に落ちる話でした。米国政府の「原爆投下は日本降伏を早め、本土決戦を回避し、米兵の犠牲を減らした」という主張は、そのあたりを織り込んだかと思う。

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いうまでもなく、被爆者や遺族にとっては、きびしい話であるわけですが。

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ただ、忘れてならないのは、原爆投下に対しては、米国の宗教界などからも、かなりきびしい批判が出ていたことです。その非倫理性に対して。それもあって、先のRTで言及した公式スタンスを、米政府関係者だったか政府委員会だったかのメンバーが、たしかThe Atlanticに寄稿したんですね。

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何年か前に米国でやった世論調査では、たしか３分の２は、核兵器は無いほうがいいと回答していました。個々のレベルでは、NOが多い。でも、それが政治的にメインストリームのアジェンダになるかというと、これはきびしい。まず、ふつうの人が語る話題ではない。一部の例外をのぞいてね。

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上院の軍事委員会の公聴会でしたか、核兵器について「無いほうがいい。しかし、それをなくせる時期は当分こないとも思う」という趣旨の発言をする議員もいました。オバマさんの前の時代ですね。米国の力の源泉の一つですから、削減はしても、廃絶に至るには、相当な国民的議論が必要になると思います。

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核兵器の最大の保有国は米ロですが、他に英、仏、中、イスラエル、印、パキスタン、北朝鮮がある。イランは否定しますが、保有に向かっているように見える。保有しながら放棄したのは南アフリカだけ。恐怖に裏打ちされた力への信仰は、自己破壊の危機と隣りあわせで、今の世界に強固に根付いている。

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人間存在の極めて深く暗い部分に根ざしていると思えるこの信仰を、どうすれば無力化できるのか。この問いに対する答えを、僕はだらだらと探し続けているところですが、未だに見当すらつきません。核兵器開発技術と表裏一体ともいえる原子力技術の拡散が続きそうなところも、追加の懸念材料です。

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一方で、ヒロシマ、ナガサキの恐怖が知られている場所も確かにあります。イラク戦争が始まる前のバグダッドで話を聞いた大工さんは、迫っていた米軍攻撃に対する心配について、「ヒロシマのように原爆を落とされたらどうしよう」と語っていました。まったく予想していない発言だったので、これも絶句。

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核兵器の恐怖。海外でも、ある程度知られているとは思いますが、日本人の一般常識水準には、残念ながら届かない。「敗北を抱きしめて」を書かれたジョン・ダワーさんは、「イメージはキノコ雲止りで、下で何が起こるか分かっていない」と話していました。熱と衝撃波と放射線が人から何を奪うのかが。

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被爆者やその支援者の方々は、海外でも語り部活動やパネル展示を営々と続け、原爆が我々から何を奪うのかを伝えようと努力されています。昨年はカイロでもそうした機会がもたれました。ただ、そういう場でも「軍国主義に走った日本だから仕方がなかったのでは」という質問が出たりしました。

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伝える、ということは、極めて難しい。その内容がdismalなものであればあるほど。「嫌なもの」を進んで受け入れる人は、なかなかいません。ましてや、それが自分の罪悪感や隠し持つ恐怖を刺激するものなら、なおさらです。伝える側は、赦しや救いもメッセージに込める必要がある、と思います。