『言の葉の庭』普遍の物語を現代の感性で描く、とは

新海誠監督の最新作『言の葉の庭』についての自分なりの解説と感想です。
2
へなへなQ @Braumaz

雨の日に会社をさぼって下北沢で「言の葉の庭」を観て映画館出たら雨が上がっていて爽やかな夕闇で、それもセットでとても感動した件について。

2013-07-29 18:42:01
へなへなQ @Braumaz

秒速5センチメートルと言の葉の庭の差は、異性とのコミュニケーションの不可能性に美しさを感じるか、可能性に美しさを感じるかの差のような気がする

2013-08-05 13:24:09
へなへなQ @Braumaz

【豆】『雲のむこう、約束の場所』の制作時、新海監督は制作に相当行き詰まっており、(柔らかい言い回しでくるんでるけど)ストレスでチョコレートしか食べられない日々が続いた。 〜雲のむこう、約束の場所 DVDブックレットより〜

2013-08-12 01:29:44
へなへなQ @Braumaz

『言の葉』の感想を巡回して読んでたけど、「わかりやすい」「わかりにくい」と言う意見が同じ人から同時に出つつ、ユキノの人物造形が批判されるってのがとにかく多いんだな…。僕もしつこいな、と思いながらどこかでまとめるか…。でも45分の映画で既に45分以上なにか語っているような…。

2013-08-12 00:27:35

タカオ、ユキノ視点での物語の解説

へなへなQ @Braumaz

ユキノ視点からみた『言の葉の庭』は、古典が好きで教師になったのに挫折した27歳のユキノが、靴職人を目指す純粋な15歳のタカオに触れることで、15歳の頃の純粋な気持ちを思い出し、自分自身を回復する物語。

2013-08-14 18:24:05
へなへなQ @Braumaz

またタカオ視点からみた『言の葉の庭』は、靴作りを言い出せず、学校(社会)に居場所がないと感じているタカオが、年上の女性ユキノへの靴作りを通じて、将来への目標を定め、学校(社会)に戻る物語。

2013-08-14 18:24:36
へなへなQ @Braumaz

異なる課題と物語を持つ2人が、日常から離れた雨宿りの場所(東屋)で出会うのが物語の基本フレームで、2人の心の動きと葛藤がドラマを構成する。

2013-08-14 18:25:06
へなへなQ @Braumaz

ユキノの心は、27歳の嘘ばかりの私の拒絶 〜15歳の頃のほんとうの気持ち の解放〜27歳なりの私の回復 という流れで動くが、これは過去作品の主人公のものと大きく変わらず、この点で本作はこれ迄のバリエーションである「自分を知る」物語のひとつといえる。

2013-08-14 18:33:03
へなへなQ @Braumaz

対してタカオ。靴作りを通じた彼のユキノへの思いは、靴作りのきっかけを作った家出中の母への思いの埋め合わせ、という意味あいを持つ。しかし学校でのレイプをきっかけで挫折したため男性不信に陥り、27歳なりの自己イメージが崩れた状態のユキノに、彼の思いは届くことがない。

2013-08-14 18:33:32
へなへなQ @Braumaz

彼は物語のクライマックスで、ユキノのほんとうの気持ちを知る事でこれまでの思い(喪失した母への思いの埋め合わせ)を断念し、これからの思い(27歳なりのユキノに追いつく)へと向かう。この「他人を知る」ことでの挫折と成長は、これまでにない特徴となっている。

2013-08-14 18:34:08

描かれる『愛』について

へなへなQ @Braumaz

続いて、普遍と現代を結びつけ、2人を結びつける「愛」について。この作品における愛(コミュニケーション)は、声優による声、リアリティを抽象化する絵画的な画像、コンマ秒単位で設計される時間という、アニメならではの表現により、言葉にできない領域として描かれる。

2013-08-14 18:40:32
へなへなQ @Braumaz

ひとつめの愛を象徴する場面は、中盤の靴の採寸シーンで、以下のビジュアルに象徴される。身体が触れ合う官能のなか、靴の採寸作業を止め、言葉を失ったように2人が見つめあう静的なイメージ。http://t.co/81VnAEmGGR

2013-08-14 18:45:16
へなへなQ @Braumaz

ふたつめの愛は、クライマックス前、以下の台詞の両義性にユキノが気付く、階段へ駆け出す契機(雨の日の庭を俯瞰で捉えた動画に被さるタカオの言葉の集積)、告白、泣く、抱きしめ合う~言葉の解体からの解放というオルガズム、音楽が連なる動的なイメージで描かれる。

2013-08-14 18:45:55
へなへなQ @Braumaz

『裸足で歩く練習をしていた私に あなたは靴を作っていた』 言葉の意味内容において、コミュニケーションは成立していない 『(ほんとうの気持ちを求めていた私に)(あなたはほんとうの気持ちをぶつけてくれた)』 言葉にできない領域において、コミュニケーションは成立していた

2013-08-14 18:46:34

作品のテーマ、全体の印象など

へなへなQ @Braumaz

本作の目論見は、WEBにもある通り、普遍に届くメッセージを現代の感性で描くこと。普遍とは、万葉集をモチーフにした相手への思いの交換を、現代とは、救済よりも癒しのニュアンスが強い、教員の挫折や夢の諦めからの回復の物語を指す。

2013-08-14 18:47:13
へなへなQ @Braumaz

回復はなされると互いの関係はリセットされる為、ever after(いつまでも2人は幸せに暮らしたとさ、おしまい)は保証されない。この構造は雨の日の恋愛を浮だたせる為、作品は中世の宮廷風恋愛(秘められた恋)の印象を持つ。

2013-08-14 18:47:36
へなへなQ @Braumaz

ここに2人の邂逅と官能を表す言葉にできない愛と、タカオの成長物語が重なる事で、前向きなトーンで結ばれることから、作品は古典的で悲しいものでありつつ、多くの観客に開かれたものになっている。

2013-08-14 18:48:07
へなへなQ @Braumaz

ユキノの挫折原因のぼかし方が上手くなく、その後の両者への感情移入に「?」がつく所はあるけど、秒速、星を追う子供といった過去の作品からの発展がありつつ、これまでにない新鮮さがある、とても良い作品だと思います。

2013-08-14 18:48:31