(mosuke氏の絵) RT : *** : 山城祭りしてたから精一杯滑りこんでみた。10分ぐらいで #艦これ版深夜の真剣お絵描き60分一本勝負 http://t.co/9TfrnpRJMa
2013-08-17 01:32:32昔むかし、あるところに扶桑ねえさまと山城うさぎがおりました。ふたりはとても仲良しで、とくに、山城うさぎは扶桑ねえさまが大好きでした。
2013-08-16 23:30:52あるとき、山城うさぎがおうちで留守番をしていると、傷だらけになった扶桑ねえさまが帰ってきました。山城うさぎは大慌てで、扶桑ねえさまの元へ駆け寄ります。
2013-08-16 23:36:37「ねえさま!」「大丈夫よ、山城うさぎ……ちょっと、被弾しただけだから」そういって山城うさぎのふわふわの頭を撫でる扶桑ねえさまの綺麗な服はぼろぼろで、白い肌にもいくつもの傷ができていました。山城うさぎは悲しくて悲しくて、また悔しくて、ぽろぽろと涙をこぼしました。
2013-08-16 23:39:42扶桑ねえさまの入渠も無事終わり、抱きかかえられて毛を梳かされ、いつもなら、気持よさそうにしている山城うさぎでしたが、今日は様子が違いました。「ねえさま。わたしも、『かんむす』になります」扶桑ねえさまはびっくりして、思わず山城うさぎを落としてしまいそうになりました。
2013-08-16 23:43:48「……あなたが、こんな大きな大砲を背負ったら、私はもうあなたを抱きかかえられないわ」「……かまいません。わたしは、扶桑ねえさまに抱きかかえられなくなるより、頭を撫でてもらえなくなるより、手足がなくなるより、身体が傷つくより、扶桑ねえさまがボロボロになるのが耐えられません」
2013-08-16 23:51:15扶桑ねえさまは、三日三晩悩んだ末に、ついに山城うさぎを「かんむす」にする事を決意しました。扶桑ねえさまも、山城うさぎに傷ついて欲しくなかった。けれど、扶桑ねえさまは、それよりも、山城うさぎの想いが嬉しかったのです。
2013-08-16 23:53:35山城うさぎはびっくりしました。ねえさまは、いつもこんなに重いものを背負って、「わるいやつ」にボロボロにされてしまうのか、と。山城うさぎは、それはとても不幸だと思いました。
2013-08-16 23:57:54「かんむす」となった山城うさぎは、「ていとく」に、「しゅつげき」を命じられました。もちろん、扶桑ねえさまと一緒です。山城うさぎは、その鼻をひくひくさせ、はりきっていました。扶桑ねえさまを守ってあげられる。もう扶桑ねえさまが苦しむことなどないのだ、と。
2013-08-17 00:01:11しかし、敵の情け容赦のない攻撃は、山城うさぎをボロボロにしていきました。主砲は折れ、装甲は傷つき、ついには弾薬も底をつきました。逃げようにも、撤退命令が出ていない以上、「かんむす」には、戦いから逃れる事は出来ません。山城うさぎは、ボロボロになりながらなお敵の攻撃に晒されます。
2013-08-17 00:06:50額から、瞳と同じ色の真っ赤な血が流れてきました。山城うさぎはふらふらになりながら、扶桑ねえさまの後を追います。ドカン!と大きな音がした後、山城うさぎの目の前に、敵の砲撃が飛んできました。
2013-08-17 00:11:06扶桑ねえさまはひどく後悔しました。ああ。どうして私はこの子を「かんむす」にしてしまったのだろう。この子にいらぬ心配をさせ、あまつさえこの子を傷つけてしまった。扶桑ねえさまは、山城うさぎの前に飛び出しました。
2013-08-17 00:15:28山城うさぎには、自分の前に飛び出してきた誰かが、泣いているように見えました。でも、笑っているようにも見えました。山城うさぎはあたたかい気持ちになり、重たいまぶたを閉じました。
2013-08-17 00:19:22山城うさぎが目を開けたのは、水の中でした。山城うさぎは、まだ「かんむす」になる前に、扶桑ねえさまからきいた話を思い出しました。扶桑ねえさまは、「かんむす」だから、もしかしたら自分は、いつか海の底に沈んでしまうかもしれないということ。そして海というのは、水がいっぱいのところ。
2013-08-17 00:24:01「かんむす」になった山城うさぎは、きっと海の底に沈んでしまったのだろう、と思いました。辺りを見回すと、扶桑ねえさまの姿は見えません。山城うさぎは、とても寂しくなりました。扶桑ねえさまが居ない海の底という場所は、こんなに怖くて心細いのか、と。
2013-08-17 00:27:45山城うさぎはかなしくてかなしくて、ぽろぽろと涙をこぼしました。涙は、身体を包み込む水に溶けていきました。今度は、高い声をあげてわんわんと泣きました。
2013-08-17 00:31:29山城うさぎは、その赤い目を泣きはらして、ますます赤くしてしまいました。山城うさぎはいよいよ疲れ果ててしまいました。ぼろぼろの身体と、壊れた装備を、扶桑ねえさまを思い出しながら優しく撫でました。山城うさぎは、扶桑ねえさまの事を考えたらすこしだけ元気になりました。
2013-08-17 00:36:01扶桑ねえさまは、いつか海の底に沈んでしまうかもしれない、と言っていました。つまり、ここで待っていれば、扶桑ねえさまとまた会えるかもしれない、ということです。山城うさぎは、扶桑ねえさまを想いながら、もう一度、深い眠りにつきました。
2013-08-17 00:38:37「山城うさぎ」山城うさぎの大好きな、優しい声。扶桑ねえさまの声です。やった!と、山城うさぎは思いました。扶桑ねえさまが来てくれたんだ!山城うさぎは、ぱっ、と目を開き、身体を起こしました。するとそこには、傷だらけの扶桑ねえさまが居ました。けれどここは、海の底ではありませんでした。
2013-08-17 00:42:18「最上さんと時雨ちゃんがね、運んでくれたのよ」山城うさぎが目を覚ましたのは、「どっく」という所でした。「かんむす」は、戦いで傷付くと、ここでその傷を治すのだそうです。確かに、ボロボロだった背中の主砲も、傷付いた装甲も、元に戻っていました。
2013-08-17 00:51:14「扶桑ねえさまは、まだ『どっく』に入らないのですか?」山城うさぎが聞くと、扶桑ねえさまはくすくすと笑って、「だって、あなたの修理が終わるのを待っていたんだもの」と言いました。「ごめんね、心細かったたわね」山城うさぎは恥ずかしくなって、顔を真っ赤にしました。
2013-08-17 00:59:18「背中の主砲が邪魔で、もうねえさまに抱っこはしてもらえませんね」山城うさぎは、悲しそうに言いました。「そうね。でも、こうしたらいいんじゃないかしら?」扶桑ねえさまは、山城うさぎを正面からぎゅっと抱きしめました。「こうすれば、あなたを抱きしめられるわ」
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