『図書館戦争』のリアル 佐久間美紀子さんの”松江市『はだしのゲン』事件について”
松江市の『はだしのゲン』事件について 1 書庫に移したのは昨年12月とのこと。半年以上たってからの問題化だった。なぜ今だったのか不明だが、だれか匿名で外部に情報を発信してくれたのだろうか?(しかしこの辺はそっとしておいた方がいいのかもしれない)。
2013-08-21 10:59:092 同様の事態は全国にはまだまだあるはずだ。現に鳥取であった。以前の話だが、静岡県内の学校図書館でも校長の指示で書庫保存になったところがあると聞いた。
2013-08-21 10:59:243 ある本が図書館の本棚にない理由は幾つもある。貸出中とか、分館に移動とか、破れたので廃棄とか、盗難とか。30万冊の中から100冊がひっそり姿を消しても、麻生じゃないけど、静かにやったのなら検閲とはなかなか気づかれない(検閲者は成果を誇示したがるものだけど)。
2013-08-21 11:00:124 誰かが何かの本を探して、どうしても見つからなくて「あれ、変だなあ、もしかして?」となったとき、そうした情報提供の受け皿として、知的自由に関する情報のハブとなるような所がどこかにあれば、ずいぶん違うと思うのだが。
2013-08-21 11:00:295 アメリカ図書館協会作成の『図書館における知的自由マニュアル』には、『宗教右翼の検閲に対抗する』と言う項目がある。そこで紹介されている事例。
2013-08-21 11:00:446 キリスト教連合の会議で、公立図書館における「不道徳」資料を何とかできないか、との質問に「識者」が答えた。「親は有害と思われる図書を借りて返却しなければよい。図書館が罰金を徴収しようとしても,無視すればよい」
2013-08-21 11:00:527 著者は、「公立図書館で働く人は、宗教右翼の扇動する誹謗運動では世論を変えることができないと、絶対に思ってはいけない。」と書く。これは日本でも同じだろう。世論は容易に変えられると覚悟しておくべき。
2013-08-21 11:01:018 図書館蔵書に対する異議申し立ては、当該書籍への対応だけで終わるものではない。たとえば堺市立図書館のBL本排除要求事件。あれは問題にされた書籍すべてが原状復帰されて、事件は決着したように見える。
2013-08-21 11:01:1310 『ハレンチ学園』以来の低俗攻撃を経て、図書館へのマンガ導入がやっとある程度進んできた時のこの事件だ。今後の選書がどうなるか、図書館利用者の側から長いスパンでの注目が必要だ。
2013-08-21 11:01:3911 「図書館の自由宣言」に「図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る」とあるが、この「われわれ」は図書館職員だけを指すものではない。知的自由を必要と思うすべての人が、当事者たる「われわれ」のはずだ。
2013-08-21 11:01:4712 もちろん、図書館職員がまず率先して自覚を持ってほしいし、図書館業務を請け負った以上、武雄市図書館のツタヤ職員にも「この“われわれ”には私も含まれる」と思ってもらいたいのだが。
2013-08-21 11:01:5913 その「われわれ」、ことに図書館関係者以外の人が、児童ポルノ法も、「風立ちぬ」タバコ描写も、今回の事件も、等しく知的自由の問題だと受け止めてくれた。図書館の自由は、もっと広い知的自由の下支えがなければ維持できないものなので、図書館の外にこうした「われわれ」が広がるのは心強い。
2013-08-21 11:02:1014 図書館蔵書への異議申し立てや検閲のたぐいは、戦後ずっと、毎年のようにどこかで事件になってきた。その意味で図書館にはある程度経験や知識がある。がその図書館の職員が、役所のルーティーン人事や専門職忌避や非正規化やらで弱体化しているので、経験の蓄積はあやうい。
2013-08-21 11:02:2315 しかも最近のクレーマーは直接図書館に行かず、もっと上層部に訴えてそこから図書館への命令を引き出そうとする。今回そうだったように。つまり行政全体の問題となる。そうした時の働きかけのノウハウを「われわれ」として持つようにすべきではないか。
2013-08-21 11:02:3516 先に挙げた米の自由マニュアルに『図書資源への懸念にたいする処置』と言う項目がある。そこにあがっている方法。「苦情取り扱いのために、明確に定義づけられた方法を維持する」「苦情は書面で受け付ける」「知的自由のための積極的公報プログラム」
2013-08-21 11:02:5117 「コミュニティの市民団体・宗教組織・教育団体、それに政治組織と意思の疎通を維持する」「必要に応じて、地元の市民団体に事実を知らせ、支持を求める。否定的な圧力には、肯定的な圧力で立ち向かう」
2013-08-21 11:03:0118 「アメリカ図書館協会知的自由部、および州知的自由委員会に報告する。そして、これらの団体の支持や、他の機関の助力を求める」
2013-08-21 11:03:0919 日本の図書館は、この「外部に助力を求める」ということをなかなかしない。それをすれば、松江市の事例のようにネット署名が1万も集まるかもしれないのに。そういう意味で、今回の事件は良い前例になるかもしれない。
2013-08-21 11:03:17