松江市教委が、漫画「はだしのゲン」小中学校での閲覧制限問題

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武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

朝日新聞高松総局デスク。かつて広島支局やソウル支局で勤務し、核軍縮、戦争と平和、日韓関係の話題が多めです。JR全線に乗車し、鉄道にも関心があります。投稿内容は朝日新聞社を代表しません。( )はとりわけ私的な感懐です。背景写真は高知県・窪川駅で発車を待つ予土線。アイコンは2022年5月に韓国・光州で撮影。

asahi.com/sp/

武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

松江市の小中学校での「はだしのゲン」閲覧制限について報告、討議される市教育委員会議の会場です。報道関係者、市民らのほか、ネット署名を呼びかけた大阪の樋口徹さんも駆けつけています。開架を求めるネット署名は19000人を超えたそうです。 http://t.co/kbuSj0q9i5

2013-08-22 10:27:04
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武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

はだしのゲンの閲覧制限措置を討議した松江市教育委員会議、結論は26日の臨時会に持ち越しになりました。

2013-08-22 12:07:53
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

松江市教委が、中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を市内の小中学校に求めていた問題で、現地に3日間出張した。たまたま、山陰中央新報が特報した日、社会部内勤だったのが縁だ。結果的には松江総局の皆さんの頑張りで、私は足を引っ張っただけになったが、現地ならではの発見もあった。1

2013-08-22 23:16:46
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

現地で取材する前は、今回の問題は、市教委が外部の政治的圧力に屈してゲンの利用制限を決めたのかと、ぼんやり想像していた。しかし、限られた期間の取材でわかったのは、そうではなく、閲覧制限は、外部の圧力には踏みとどまった市教委が、独自の検討、独自の判断で導いた結果だったということだ。2

2013-08-22 23:41:43
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

少しややこしいが、市教委がはだしのゲンの利用制限を学校に求めた「発端」は、ゲンについて「誤った歴史認識を植えつける漫画であり、撤去すべき」と主張した男性の陳情だった。これがなければ始まらなかったのは、間違いない。しかし、経過を詳細に検証すると、単純な流れではなかった。3

2013-08-22 23:21:17
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

以下はわずか二、三日の出張中の取材結果であり、「真実」はその通りではないかもしれない。現時点までに関係者を直接取材し、入手した情報を踏まえた仮説に過ぎない。さらに取材が進めば別のストーリーになるかもしれない。そうした限界を踏まえたうえで、一つの記録として記しておきたい。4

2013-08-22 23:22:50
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

今回、はだしのゲンの利用制限の呼びかけを決めた市教委事務局のメンバーは、当時の教育長ら幹部五人だ。この五人は昨年のある時点までは、はだしのゲンを平和教材として無条件に高く評価し、ゲンを撤去せよという外部の要求については断固拒否ということで意見一致していた。ある時点までは…。5

2013-08-22 23:23:47
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

ある時点とは昨年10月、この五人が、陳情を審査した市議会対策として、はだしのゲンの全巻を読んだときだ。この五人には、ゲンを平和教材として授業で使ったことのある元教諭も含まれるが、五巻までしか読んでなかった。そのほかの幹部も、ゲンを読んだことはあったが、途中の巻までだった。6

2013-08-22 23:25:07
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

全巻、具体的には10巻目を読んだとき、五人の心がガラリと変わったという。特に衝撃だったのは、旧日本軍兵士の性暴力の描写だったという。「これが、同じゲンかと思った」。取材に応じた幹部はこう明かした。別の幹部は記者に「あの描写をお子さんに見せられますか?」と問いかけてきた。7

2013-08-22 23:26:28
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

市教委事務局の五人は、10巻を読んだ段階で「子どもに見せるべきでない描写があり、何らか対策をとらないといけない」ということで一致したという。その五人の思いは、昨年12月初め、市議会が陳情を全会一致で不採択とした後も変わらなかったという。ここから、五人の「独断」が始まっていく。8

2013-08-22 23:28:49
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

五人は事実上の「密室」で二つの方針を決めた。まず、対応は、10巻だけでなく、全巻とすることだ。10巻だけを対象とすると、市教委事務局が検閲や墨塗りをしているという印象を与えかねないという意見が出たからだという。ある幹部は「ゼロか百の選択肢しかないと思った」と話した。9

2013-08-22 23:30:14
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

もう一つは、市教委が閉架を強制することになれば学校の自主性や図書館の自由を冒すことになるため、校長への「お願い」とすることだった。当時の幹部の一人は「これは図書の運用を変えるに過ぎず、自由の制限でないと考えていた」と話した。こうした軽い認識のもと、教育委員にも相談しなかった。10

2013-08-22 23:32:20
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

市教委は軽い認識だったが、昨年12月半ば、「お願い」を伝達された校長たちの受け止めは違った。1月、「現場の混乱を避けるため」という理由で、市教委が二度目の「要請」を伝達すると、ゲンは一校を除いて子どもたちの目から「消えた」。多くの校長は市教委の要請を強制と受け止めたのた。11

2013-08-22 23:33:27
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

以上のように、今回の問題は市教委が外部圧力に屈して行ったという単純な構図ではないと思う(現時点での取材では、だが…)。外部の陳情があり、議会が審査し、その対策として市教委事務局が「勉強」する中で、独自に問題点を「発見」し、独自に対応し、結局、陳情者らの望む方向に進んでいた。12

2013-08-22 23:36:45
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

しかも、そこに重大なことをしているという自覚も乏しかった。私は、単純に政治的圧力に屈したという構図でなかったこの過程にこそ、より深刻さを感じる。また、曖昧な基準と、一見柔らかな「お願い」で一つの作品を丸ごと子どもの目の前から遠ざけ、その権力性に無自覚なことに恐ろしさを感じる。13

2013-08-22 23:39:39
武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

こうした経過から、いくつもの教訓が浮かび上がる。それは、今後記事を書く中でじっくり考えていきたい。できれば、いろんな方の意見も知りたい……そんな思いを胸に、泊まり勤務に就くため、大阪に戻ってきた。14終わり

2013-08-22 23:41:01

※「2」のツイート本来の順番になるようにまとめ作成時に並べ替えました。

武田 肇 / Hajimu Takeda @hajimaru2

すみません。2のツイートを忘れてました。

2013-08-22 23:41:40