ルアクコーヒー文献まとめ

自分用まとめ
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Y Tambe @y_tambe

ついでに、コピ・ルワクについて文献でざっと調べた感じ。

2013-08-26 23:11:25
Y Tambe @y_tambe

オランダ植民地時代のインドネシアのコーヒー強制栽培について、最も良く知られた文献の一つが、ムルタトゥーリの『マックス・ハーフェラール』(1860)だが、これにコピ・ルアクに該当する記述は無い。

2013-08-26 23:14:09
Y Tambe @y_tambe

「マックス・ハーフェラール」は文学作品としての側面が大きいが、学術的な史料としては1957に出版されたJS Cramer "A Review of Literature of Coffee Research in Indonesia" http://t.co/tnRoQqYlBi

2013-08-26 23:19:33
Y Tambe @y_tambe

承前)Cramerは、19世紀末から20世紀半ばにかけてJavaで活躍した植物学者であり、現地農園の責任者でもあった。この文献は17世紀から20世紀前半のインドネシアのコーヒー栽培を網羅しているが、これにもコピルワクの記述はない。

2013-08-26 23:21:54
Y Tambe @y_tambe

一方、ジャコウネコとコーヒーの関係については、19世紀エチオピアの文献にある。このエピソードは、ワインバーグ『カフェイン大全』にも引用されてて、そこでもこのエピソードとコピルワクの話の関連性は指摘されている。

2013-08-26 23:25:00
Y Tambe @y_tambe

元になっている文献は、Krapfが1860年に書いた"Travels, Researches, and Missionary Labours, During an Eighteen Years' Residence in Eastern Africa" p.47

2013-08-26 23:27:25
Y Tambe @y_tambe

ちなみにこの文献も、今はオンラインで入手可能。 http://t.co/W6XzDEgiUO p.47に書かれている「アラビアの言い伝えによれば、ジャコウネコ(civet-cat)がコーヒー豆を(エチオピアの)アルシやイッタ=ガラの山に運んできた」というのが、それ。

2013-08-26 23:30:18
Y Tambe @y_tambe

エチオピアに生息するジャコウネコの一種(African civet cat)が、コーヒーノキに登って実を食べているところを目撃した、という昔の情報もどっかにあったはずで、そこからこの伝説が補強されると同時に「ジャコウネコがコーヒーの実を食べる」という話が広まった。

2013-08-26 23:32:57
Y Tambe @y_tambe

コピ・ルワクに関する記録。文献を確認した続き。コーヒー全般に関する文献として名高い、Ukers "All About Coffee"の初版(1922)には、コピルワクに関する記述は無かったが(続

2013-08-27 11:25:31
Y Tambe @y_tambe

1868年に、フランスで出版されたHenri Welterの"Essai sur l'histoire du café" p.48-49に、ジャワのコーヒーに関するエピソードとして、関連する内容が書かれていた。 http://t.co/dIueXqQu8l

2013-08-27 11:28:38
Y Tambe @y_tambe

この"Essai sur l'histoire du café" (『コーヒーの歴史』)は、Ukersが"All about coffee"を書くに当たって随分、参照したと思われる書物の一つ。

2013-08-27 11:31:04
Y Tambe @y_tambe

これによれば、19世紀フランスでは、オランダ領インドネシアで、既に現地の人々がジャコウネコの仲間の「落とし物」からコーヒー豆を集めていたらしいことが伺える

2013-08-27 11:33:20
Y Tambe @y_tambe

この文献では、インドネシアに生息する二種類のジャコウネコ科の動物(パームシベットと、インドジャコウネコ)が、これに関与するという知見が記されている。また「(現地の人々は)ヒトの手で摘んだものを好むが、特別な伝説的価値から採取してた」旨が書かれている。

2013-08-27 11:57:19
Y Tambe @y_tambe

こういった話が1860年代後半のフランスの文献には既に見られる。アンリ・ヴェルテールは、これをジャワのコーヒーの解説の最後に「一つ付け加えておきたいエピソード」として特記しているが、この当時から、一種の伝説的な付加価値がつけられていたことが伺える。

2013-08-27 12:01:37
Y Tambe @y_tambe

この「ジャコウネコとコーヒーの関わり」を考える上では、もう一つ関わってくるものがある。それは「ゴンドワナ要素」。ただし、エドゥアルト・ジュースがゴンドワナ大陸の存在を提唱したのが1861年だから、当初はあまりそれとコーヒー/ジャコウネコの関連は認識されていなかったかもしれない。

2013-08-27 12:05:08
Y Tambe @y_tambe

コーヒーノキ自体の「ゴンドワナ仮説」については、1960年代にルロワが勢力的に行ったマダガスカルの植物調査を受けて、1982年頃に提唱されたものなので、学術上は、直接の繋がりがあるとは言いがたい。また現在Coffea属自体ののゴンドワナ起源説には否定的見解が有力(祖先は該当しそう

2013-08-27 12:12:14
Y Tambe @y_tambe

Ukersの"All About Coffee"(1922初版)に、コピルワクの話はないが、その代わり?に、トリやサルがコーヒーの実を食べる例についての言及がある。 http://t.co/vb5hiDgUfY

2013-08-28 11:14:56
Y Tambe @y_tambe

同書ではインドにある"Monkey coffee"の名前が挙げられている。この部分は"According to Arnold"で書き出されているが、このArnoldはおそらくアメリカで最初に「コーヒー王」と呼ばれたB.G. Arnoldで、出典情報がないため、彼の談話と思われる。

2013-08-28 11:19:18
Y Tambe @y_tambe

B.G. Arnoldについての、All About Coffeeの解説ページ。 http://t.co/LekG4Ks2pT

2013-08-28 11:20:06
Y Tambe @y_tambe

他方、ジャコウネコについての記録があった1868年のHenri Welter "Essai sur l'histoire du café"には、サルやトリによる伝播の話は見当たらないようだ。

2013-08-28 11:21:23
Y Tambe @y_tambe

サルやトリによってコーヒーノキが伝播されたという仮説は、1961年にFrederick L Wellmanが書いた"Coffee: Botany, Cultivation, and Utilization"で言及されたのが、おそらく学術的には最初に当たる(それまではアラブの伝説

2013-08-28 11:24:57