東海道中膝栗毛 三編 下

十返舎一九が1802年に発表した「東海道中膝栗毛」。ここでは「三編 下」を現代語に超意訳しご紹介いたします。意訳ではありますが、ストーリーはかなり原作を忠実に再現しました。 他の「道中膝栗毛」シリーズはこちらからお入りください→ http://togetter.com/id/KumanoBonta 【文中で使用されている表現は、時代背景や作者の意図を尊重しています。ご了承ください】
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三編下は、東海道日坂宿から新居宿までのお話です。

【九日目】日坂宿を出発
江戸から五十四里二十六町四十五間 (215.0 km)

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

日坂宿で迎える朝。 明けがた早くから、宿場の道では忙しそうに荷駄馬が仕事をしている。そのいななきで弥次喜多は目をこすりながら起き出した。 朝の旅支度をしている横では、喜多が寝違えたあの母巫女がふくれっ面をしている。 二人はそれを横目に、笑いをこらえながら宿をあとにした。

2013-08-29 18:53:56
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

誉田の八幡を過ぎると、右に「姑の畑 嫁が田がある。おかしな名前が付けられた田畑だが、ここは昔、意地悪な姑が嫁に「朝飯の前に一反分の苗を植えときゃーよ」と命令し、健気に働いた嫁が疲れから石に腰かけたまま死んでしまった。

2013-08-29 18:54:05
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

そして同時刻に畑にいた姑は、雷に打たれて死んでしまったという言い伝えから名付けられている。ワイドショーがこぞって報道しそうな話題だ。 弥次干からびし しゅうとの畑に ひきかえて 水沢山の 嫁が田ぞよき

2013-08-29 18:54:10
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

やがて塩井川にたどり着いたが、昨日の雨が強かったせいで橋が流されてしまっていた。道中の人達はみな、仕方なく股引を脱ぎ裾をまくって、徒渡りをしている。 弥次喜多もやれやれと準備をしかけたそのとき、座頭が二人やってきた。

2013-08-29 18:54:16
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

座頭「おにいさん、川は膝ぐらいもありますか」 喜多「うーん、そのぐらいはあるね。流れが速いから気をつけないと危ないっすよ」 座頭「本当だ、水の流れる音が速いな」 座頭は石を拾い、川へ投げ込んで考える。

2013-08-29 18:54:23
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

座頭「お、この辺が浅いようだ。おい猿市、二人とも脚絆を取るのは面倒だ。お前後輩なんだから俺をおぶって行け」 猿市「えー、それはズルいっすよ。じゃんけんで決めましょ」 犬市「俺じゃんけん強いぞ?いいのか?」 猿市「イイっすよ。最初はグー、じゃんけんぽんっ」

2013-08-29 18:54:29
@mo_whitedevil

@yajikita_douchu このじゃんけんの話は原作に書いてあるものなのですか?

2013-08-29 19:02:07
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

@o_nagayoshi はい。正確にはじゃんけんに類似した別のゲームです。まだ帰宅前なので、帰ったら詳細をお知らせしますね。

2013-08-29 19:12:33
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

@o_nagayoshi お待たせしました。座頭の二人がやっていたのは「拳」という中国から伝承したゲームで、本拳、狐拳、虫拳などの種類があります。本拳は二人でやりますが、お互いに右手の指を出すと同時に、二人の出した数の合計数を予想して言い、当てたら勝ちだそうです。つづく

2013-08-29 19:52:02
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

@o_nagayoshi 数は唐音で発音するそうで、勝負のときに「さあ来い、サンナムメデ」「リャンゴウサイ」と言って指を出していました。 ひょっとしてじゃんけんのルーツなのかしら?と密かに思っています

2013-08-29 19:52:07
@mo_whitedevil

@yajikita_douchu ありがとうございます。「お!じゃんけんは江戸時代からあったのか!これは新発見だ!」と1人で大いに盛り上がっていたのですが、その反動で今は大いに落ち込んでいます・・・

2013-08-29 23:51:13
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

@o_nagayoshi ぼんたアレンジに騙されるな (。・∀・)ノ

2013-08-30 08:30:52
@mo_whitedevil

@yajikita_douchu 信頼と安定のぼんたブランド・・

2013-08-30 09:35:50
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

二人はじゃんけんの手を出すと同時に、反対の手で相手の出した手を握って確かめる。 犬市「しゃっ、俺の勝ちぃ」 猿市「ちぇっ、じゃあこの風呂敷包みは先輩が担いでくださいよ。はいどうぞ」 猿市が背中を向けたところにちょうどいたのは弥次

2013-08-29 18:54:35
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「(え、おれ?)」 ラッキー♪と背中に飛び乗る。猿市は犬市を背負っていると思い込み、向こう岸へジャブジャブと渡っていった。 犬市「おいサル!早く俺を乗せろよ!」 猿市「は?何言ってんすかぁ?今渡ったじゃないっすか」

2013-08-29 18:54:41
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

犬市「何言ってんすかはこっちのセリフだ。自分だけサッサと渡りやがって猿市「意味わかんねっす」 犬市「先輩に向かって偉そうな口をきくな。いいからさっさと来いっ」 犬市がぎゃあぎゃあと騒ぐので、猿市は仕方なく川を引き返す。

2013-08-29 18:54:45
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

猿市「戻ってきたっす。はい、乗ってください」 背中を向けると、今度はそこに喜多八が。 喜多「(ウホ、俺?)」 ラッキー♪と背中に乗る。 が、今度は川を渡り始めたところで、犬市が声をかけた。 犬市「おおいサル、まだかー」 猿市「え、背中に乗ってるじゃないっすか」

2013-08-29 18:54:50
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

犬市「俺はここだっつーの!」 猿市「えっ?あ、あんた誰?」 喜多「えへへ」 猿市「なにーっ!? どけコノヤロウ!」 猿市は、背中の喜多を川へ突き落とした。 ざっぱぁーーーん

2013-08-29 18:54:56
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

喜多「うわあーったすけてぇぇー」 川の流れが速く、喜多はどんどん流されていく。 弥次「やっべえ、おい、喜多ーっ」 慌てて飛び込み、喜多八の手を取り引き上げた。喜多は全身ずぶ濡れだ。 喜多「ちくしょー座頭のヤロー酷い目に遭わせやがって。ぶぇっくしょいっ」

2013-08-30 19:05:09
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「まず服を脱げよ。絞ってやるよ」 喜多「もとはと言えば弥次のせいだぞ。お前があいつの背中に乗るから俺までつられたんだ」 弥次「はは、俺のせいってか。そりゃ悪かったね~」 はまりけり 目のなき人と あなどりし むくいははやき 川の流れに

2013-08-30 19:05:18
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

喜多「こんなときに悠長に歌なんか詠むな!ううっさぶっ」 喜多は素っ裸でブルブル震えながら服を絞っている。座頭達はとっくに川を渡り終わり行ってしまった。 弥次「ここで服が乾くのを待ってるのもなんだし、とりあえず着替えろ。どっかで火を焚いてもらって暖まるといい」

2013-08-30 19:05:25

掛川宿
江戸から五十六里十九町四十五間 (222.1 km)

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