夕焼け・土方歳三はゆく【シナリオ版】第六章(最終章)「北の夕焼け」
おまたせしました! 「夕焼け・土方歳三はゆく」【シナリオ版】第33回 第六章(最終章)「北の夕焼け」第1回 ゆるゆると始めて行きたいと思います。 #試衛館の青春
2013-08-25 19:10:42① 母成峠・東軍陣地 歳三が床几に座っている。 斎藤一が入って来る。 歳三「容保公に、援軍を求めてくるように命ぜられた」 斎藤「仙台ですか」 歳三「まず庄内へ行く、それから仙台だ」 斎藤「間に合うかな」 歳三「おそらく、無理だ」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:12:26斎藤「戻って来ないつもりですね」 歳三、答えず、斎藤を見詰め、寂しく微笑む。 斎藤「わかりました。なら、千代ちゃんと俺は、時期を見て、仙台へ・・・」 歳三「いや、千代は連れていく」 斎藤「えっ、そうなんですか」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:16:41歳三「それに、斎藤、お前は会津に残れ。最後まで会津の人達と行動を共にしてくれ」 斎藤「最後までって・・・」 斎藤、戸惑った様子。 歳三「京以来、新撰組は会津藩には義理がある。落城寸前の会津を見捨てていく訳にはいかない」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:18:04斎藤「それで俺が残るんですか」 歳三「そうだ」 斎藤「自分はさっさと行っちゃうくせに」 歳三「そうだな。随分と虫のいい話だ」 斎藤「ホントですよ。・・・どうして、俺なんですか」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:18:59歳三「他に誰がいる?」 斎藤「それは・・・。いつもそうだ。俺ばっかり・・・」 斎藤、拗ねた様子。 歳三、微笑んで、 歳三「役に立ちすぎるんだよ。役に立つから、ついつい便利に使っちまう」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:20:21斎藤「ちょっと手を抜いとけば良かった」 歳三「斎藤・・・」 歳三、斎藤をじっと見つめる。 斎藤「俺、最後まで土方さんと一緒だと思ってたのに。平助や総司には申し訳ないけど、土方さんと千代ちゃんと三人で、最後まで戦うんだって・・・」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:21:44歳三「らしくないぞ。斎藤一は、いつも、一人だったはずだ」 斎藤「平助や総司だったら、一緒に連れて 行きますよね。土方さんの中で、あいつらと俺、どこが違うんですか」 歳三、からかうように、 歳三「可愛げかな」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:22:51斎藤「可愛げ・・・。俺って、そんなに、可愛げないですか」 歳三「自分で、あると思うのか」 斎藤「そりゃあ・・・、ない・・・です」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:24:37歳三、優しく微笑んで、 歳三「うそ、冗談だよ。お前だって、充分可愛いよ。今こうやって駄々をこねてるとこなんて、可愛くて、抱きしめたいくらいだ」 斎藤「えっ、それはちょっと・・・気持ち悪い」 歳三「お前が言うな」 歳三、笑う。 #試衛館の青春
2013-08-25 19:26:25斎藤、つり込まれて微笑む。 歳三、真顔に戻り、 歳三「お前だけだ。俺の代りに新撰組を率いて行けるのは・・・」 斎藤「そんな、無理ですよ。俺に土方さんの代りなんて」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:27:29歳三「ばか、もうやってるじゃないか。宇都宮からこっち、新撰組の隊長は誰が務めたんだ?」 斎藤「あっ・・・、俺」 歳三「それ見ろ」 歳三、愛しげに斎藤を見る。 斎藤「どうしても残れって・・・」 歳三「そうだ」 斎藤「命令ですか」 歳三「命令だ」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:28:53斎藤、大きく溜息をつく。 斎藤「最後までって、落城まで。鶴ヶ城と運命を共にしろということですよね」 歳三「いや、違う。戦って命を落すのは仕方ない。でもな。間違っても、腹なんか切るんじゃない」 斎藤「だったら、いつまで。どうしたらいいんですか」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:30:35歳三「会津藩がなくなるまで。会津藩の人達と一緒に・・・」 斎藤「西軍に捕われろと?」 歳三「そうだ」 斎藤「殺されますよ」 歳三「会津藩士、何人いると思っているんだ?家老が何人か腹を切って終りだ」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:31:44斎藤「そういうもんなんですか」 歳三「それでも、もし万が一、切腹や死罪の沙汰が下ったら、その時は・・・」 斎藤「その時は・・・」 歳三「逃げろ」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:33:08斎藤「えっ、それって矛盾してませんか。会津への義理だてのために、俺、残されるんですよね。なのに、そんな土壇場で逃げるなんてことしたら・・・」 歳三「うるさい。お前は余計な事考えなくていい」 斎藤「土方さん・・・」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:34:37歳三「安心しろ、そんな事にはならん」 歳三、優しく微笑む。 斎藤、大きく溜息をつき、頷く。 暫くの沈黙の後、 斎藤「千代ちゃんより先に、死なないでやってくださいね」 歳三「えっ」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:35:56斎藤「俺が平助を連れて帰れなかったばっかりに、油の小路、あんなことになって、それに、近藤さんも源さんも総司も、千代ちゃん一人で看取って、千代ちゃんばかりに辛い思いさせてる。この上、土方さんの死水まで取らせるなんて、あまりにも可哀想すぎますよ」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:37:54歳三、大きく溜息をついて、 歳三「そうだな。お前の言う通りだ。考えて見れば、お前と千代には、辛い仕事ばかりさせてきたな」 斎藤「俺の事は、いいんです。俺は、男だから・・・」 歳三、斎藤を見つめ、微笑む。 #試衛館の青春
2013-08-25 19:39:36少し間を置き、 歳三「でもな、千代はこの先、新しい世の中の為に役立つ奴だ。死なせたくないそれが、あいつにとってどんなに辛い事か解っているが・・・」 斎藤「だったら、土方さんも死ななきゃあいい」 #試衛館の青春
2013-08-25 19:41:11歳三「斎藤・・・」 斎藤「ずるいですよ。自分だけ楽になろうなんて」 斎藤、歳三に微笑みかける。 歳三、微笑み返す。 #試衛館の青春
2013-08-25 19:42:03② 仙台、寒風沢への道 千代と歳三が、並んでゆっくりと馬を進めている。 千代「無事だよね、斎藤さん」 歳三「ああ、あいつの事だ。滅多な事で死んだりはしないさ」 #試衛館の青春
2013-08-26 18:05:20千代「今頃、どうしてるだろうな。案外、もう、仙台に来てるかもね。先に、寒風沢に行ってたりして・・・」 歳三「いや、あいつは来ないよ」 千代「えっ」 #試衛館の青春
2013-08-26 18:06:26歳三「来るなと言っといた。会津の人達と動を共にしろと・・・」 千代、驚いて、思わず馬を止める。 千代「なぜ?」 歳三、構わず馬を進める。 #試衛館の青春
2013-08-26 18:07:36千代、歳三の背中に 千代「どうして?」 歳三、答えない。 千代、馬を走らせ、歳三に追いついて 千代「どうして、斎藤さんだけ・・・」 歳三、ゆっくり話し始める。 #試衛館の青春
2013-08-26 18:09:21