0.何かを「奪う」というのは力強い物語の構造の1つである。以下、そのパターンをほぼ即興で書いてみよう。
2013-08-31 00:24:581.ヒッチコックに倣って言うと「何か」はなんでもいい。たとえば「主人公がそれと知らずに持っていて敵が欲しいもの」という設定にすると、内容のいかんい関わらず丁々発止の争奪戦が繰り広げられる。物語を始動させる装置、暴走する無意味、これをマクガフィンという。
2013-08-31 00:25:322.それとは逆に、「何か」が明確である物語はどうだろうか。主人公が奪い出そうとするものに主人公の欲望が宿っている場合は、大きく2つに別れる。①奪うもの自体が欲しい ②それを奪うことによって別の何かを得られるから欲しい である。
2013-08-31 00:26:043.①は言葉通りである。金が欲しいから銀行強盗をする。金は誰もが欲しいものではあるが、正直いってこれはあけすけでつまらない。現在、物語は多かれ少なかれ②に傾く。これを分類してみる。
2013-08-31 00:27:124.【取引】腕利きの金庫破りが、その腕を買われてかなりヤバい仕事をやるハメになる。それが首尾よく成功したらそのボスから好きな女を身請けすることができる、というような取引があるパターン。
2013-08-31 00:31:295.【付随するもの】そういう取引はなく「こういうヤバい世界にしか俺は生きられないんだ、好きでやっているんだ」という主人公がいて、そいつが本当に手に入れようとしているのは奪う物品そのものではなく、その行為に付随する“生の実感”等等だというパターン。
2013-08-31 00:35:036.【敵の殲滅】主人公がそれを奪うと、奪われた側は致命傷を被る。だから奪う。物品そのものは、敵の敵に渡したりチャリティに寄付しちゃったりする。敵を倒すために奪うというパターン。
2013-08-31 00:35:417.【正義の遂行1】もともとはギャラで雇われてそれを奪おうとしていたが、雇い主に正統性はないとわかったので気が変わり、正しいところに持っていってしまうというオチを使うパターン。
2013-08-31 00:36:098.【正義の遂行2】ギャラで雇われたふりをしていたが、最初から雇い主を欺くつもりで物品を奪い、本来持つべき人のところに持っていくというオチを使うパターン。
2013-08-31 00:36:549.【着服】もともとはギャラで雇われてそれを奪おうとしていたが、雇い主があんまりいけすかない奴なので、裏をかいて自分(達)のものにしてしまうというオチのパターン。
2013-08-31 00:37:2910.【脱出】これを奪うことによって今の自分の悲惨な状況から抜け出せる。あるいは、妹に手術を受けさせてやれる、自分が世話になった孤児院を買い取れる等という、現状からの脱出が具体的にプレゼンされているパターン。
2013-08-31 00:37:5511.【再設計】奪う側に明確なビジョンがあって、それを奪って再利用することによって社会を設計し直そうとするパターン。世直し強奪。(ただし、「あるべき世直しとはなにか」という点で観客の合意を取り付けるのが難しく大抵は人道主義に落ち着く)
2013-08-31 00:38:1512.【動機がすごい】奪うことの真の動機が最後に「あっ」というものでオチがつくパターン。「そうだったのか」「そういう話だったのか」と目から鱗が落ちるパターン。決まるととてもカッコイイ。個人的に大好き。
2013-08-31 00:38:5514.【仲間割れ1】奪う過程で、仲間割れが起こり、争奪戦の中で、その物品が転々としていく。また奪われた側も追ってきて、組んず解れつの強奪戦に突入するパターン。
2013-08-31 00:41:1615.【仲間割れ2】奪う過程で、仲間割れが起こり、今、その物品を誰がどこに持っているのか、いったい誰が一番悪知恵を働かせているのかという謎で物語をドライブさせるパターン。
2013-08-31 00:42:2916.あと②に戻ると、雇い主はミッションが終わったら殺すつもりでいる、その計画に主人公が気がついて逆襲というパターンがあるが、微妙に今回の思考のレールから外れるのでこれはカウントしない(と言いつつ書いておく)。では、おしまい。
2013-08-31 00:44:06.@chimumu さんの「主人公の“欲しいもの”と観客の反応を考える」をお気に入りにしました。(先日の奪う連ツイは非公開でまとめて復習用に保存しましたごめんなさい(ぐっ)) http://t.co/BeTyt4bLsG
2013-08-31 22:54:49