- sodaame140
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これは、とある街灯と影の物語です。
街灯には影がありました。光には闇が寄りそうからです。嬉しいと笑うときには影はけらけらしました。楽しいとはしゃぐときには影は囁きました。街灯は今日も光りますが、影は退屈だと唄います。この街は退屈で、生きる価値もないのなら、ああ、僕は。街灯は誰かを待っています。 #街灯と影 (1)
2013-08-25 01:15:03街灯は今日も誰かを待ちます。君はそろそろ離れてくれないか。影はけらけら笑います。お前が動けばいいだろう。街灯は埋まっていて動けません。今夜は月が綺麗なので、働かなくてもいいかな。街灯は少し唄います。影は少しだけ聴いていました。夏は終わり、虫の声が聞こえます。 #街灯と影 (2)
2013-08-25 23:30:45虫の声が聞こえます。君たち仲が良いね。こいつが離れないんだ。何言ってるんだお前が動け。街灯の光に照らされて、影はずっと側にいます。離れることはありません。少し雨が降ってきました。雨の降る夜は生き物の気配がなくなります。いえ、聞こえなくなるだけかもしれません。 #街灯と影 (3)
2013-08-27 00:25:48いえ、聞こえなくなるだけかもしれません。雨が止み、辺りには誰もいません。街灯は今日も道を照らしています。誰かが近づいては去り、そして消えていきます。街灯は動けないので、それを追うことはできません。ただ近寄る者を、照らすのみです。影は側で、うたた寝をしています。 #街灯と影 (4)
2013-08-28 01:30:42街灯は笑いました。どこかでガラスの割れる音がします。鴉が明かりを割っているのです。パリン。パリン。破片が飛び散ります。無駄に光りやがって、誰も見てねえんだよ。鴉は叫びました。見られていなければ、鴉にとって、存在価値はないのです。影は、滑稽だと微笑みました。 #街灯と影 (6)
2013-08-30 02:13:57影は、滑稽だと微笑みました。遠くで明かりが割れています。鴉は高笑いしました。傷付けても、訴えたいほどの、自己を。破壊、衝動、全部、無意味なんだ。壊れてしまえ、平凡な日常など、元通りの空虚を。外界と内界を繋ぐ光を、この手に。鴉は戯れ言を言い、消えていきました。 #街灯と影 (7)
2013-09-01 01:04:27鴉は戯言を言い、消えていきました。辺りは静寂を取り戻します。影は欠伸をし、転がりました。街灯は相変わらず光ります。チカチカ。蛾が周りを飛びます。ふわりと浮かんだ月は、今日も無責任な優しさを振り撒きます。ぼんやりと、街灯は幸せを祈りました。宿る、光を。 #街灯と影 (8)第一部 完
2013-09-01 01:40:19街灯は今日も誰かを待っていて、影は今日も誰かに寄り添い、物語は続きます。
あなたは今日、何をしますか。
あとがき
My new sounds: 街灯と影 http://t.co/HAJNuUug2v on #SoundCloud
2013-09-09 00:17:53テーマソング 『街灯と影』 nasu
朗読 nasu