ホワット・ア・ホリブル・ナイト・トゥ・ハヴ・ア・カラテ #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ホワット・ア・ホリブル・ナイト・トゥ・ハヴ・ア・カラテ】#3

2013-09-03 21:57:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ:アマクダリ・セクトと同盟関係にある狂気の天才科学者、リー・アラキ先生。彼が率いるニンジャソウル研究組織INWは、ツキジダンジョン地下に秘密ラボを築き、数々の被検体ゾンビーニンジャを徘徊させて防衛体勢を敷いていた。そんなリー先生のもとを、突如ユカノが訪問!)

2013-09-03 22:00:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ニンジャスレイヤーの協力者であるはずのユカノが、何故このような胡乱な場所に? 1対1でインタビューを行ったリー先生は、彼女が神話級存在ドラゴン・ニンジャである事を確信する。そして彼女自身もまた、自分はいまやどの陣営にも属さず、ニンジャスレイヤーとも袂を分かったと宣言したのだ!)

2013-09-03 22:04:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(執事ラヴェジャーはリー先生に危険を告げたが、彼はそれを無視し、ユカノをラボへ招き入れる。果たして彼女の狙いは? ユカノは自我に別れを告げ神話級ニンジャとして覚醒したのか? ラボへ向かう途中、ユカノは飼育セルに囚われた女ニンジャを見る。その検体の名を、皆さんは知っているはずだ…)

2013-09-03 22:08:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ダメだァ……。ウィルスのせいで、全然力が入らねェぜ……!」真っ白な六畳飼育セルの中で、エーリアス・ディクタスは身を投げ出し、ゼエゼエと息をした。ジツもカラテもままならない。ボタンを押せばスシやチャが供されるが、それらには全て微量のタケウチTku8ウィルスが含まれているのだ。 1

2013-09-03 22:14:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

飼育セルは6面のうち5面が白壁、残る1面が透明の分厚い強化樹脂である。ナムサン!ここではニンジャが実験動物めいた存在なのだ!「適温しなさい」の警句が貼られた透明壁の向こうでは、白衣クローンヤクザを連れた研究員ニンジャのブルーブラッドが、彼女の行動を観察しスケッチを取っていた。 2

2013-09-03 22:21:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何かが……何かがおかしいぞ!」ブルーブラッドの指が震え、鉛筆を圧し折る。「先生の様子がおかしい!まるでワオキツネザルみたいに跳ねてたぞ。あんなに喜んでいるのを見るのは……初めてゾンビーニンジャを生み出した時以来…!」彼は頭を掻きむしり、研究ノートを投げ捨ててよろめき歩いた。 3

2013-09-03 22:33:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「リー先生、一体何が……!」ブルーブラッドは酷いショックを受け、壁にもたれかかり夢遊病者めいた足取りで歩き、飼育セル場から離れてゆく。白衣クローンヤクザ達が研究ノートを拾い、彼の後を追った。「イタイ……イタイ……」「出してくれ……」悲惨な有様の検体の呻き声が左右から聞こえる。 4

2013-09-03 22:39:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

日本有数の知性を集めたINWの研究員ではない皆さんには、にわかには理解できないかもしれない。何故ブルーブラッドことトリダ・チュンイチが、これほどの胸騒ぎを覚えているのか。……それは、今日この日まで、リー先生の喜びは常に、隔絶研究環境であるINWの中にのみ存在したからだ。 5 

2013-09-03 22:45:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アマクダリから大規模援助?いや、そんな事であんなに喜ぶはずは無い。あれは先生の知的好奇心が限界を超えた状態……」トリダは頭を抱えながら歩く。「アバー……アバッバー…」横を通り過ぎる大型拘束ストレッチャーの上では、血痕まみれの医療用シーツに隠された大型肉塊が身をよじっていた。 6

2013-09-03 22:53:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

飼育セルの前からトリダが居なくなると、エーリアスは体を起こし苦し気にアグラ姿勢を取った。そして魂の同居人を勇気づけるように、ニューロンの中で独りごちる。(((まだ希望はあるさ……)))だがセルの前を大型肉塊台車が通り過ぎてゆくと、彼女の心臓は再び恐怖で鷲掴みにされるのだった。 7

2013-09-03 23:02:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバー……アバッ!」シーツの下からイカめいた触手が伸び、拘束台車を押す白衣クローンヤクザに絡み付き絞め殺そうとする。セルの壁に血飛沫が飛んだ。スモトリがウイルス注射を打つと肉塊は大人しくなり、喧噪は遠ざかった。(((……ここは狂ってる)))エーリアスは閉じていた目を開いた。 8

2013-09-03 23:08:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

次は自分があれと同じ運命を……或いはさらに悲惨な運命を辿るかもしれぬのだ。エーリアスは深呼吸し、ショドーを見て精神を整えた。(((さっきのはきっとユカノ=サンだ。何か様子が妙だが……きっと、俺たちを助けにきてくれた……。そうさ、なあ、もう少しの辛抱だ。シマッテコーゼ…!))) 9

2013-09-03 23:16:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガラガラガラ……大型肉塊を載せた拘束台車は大型スクリーニング室を横切ってゆく。ここでは数十人の白衣クローンヤクザ達が、滅菌ブースを使って培地シャーレに対し機械的ストリークを続けているのだ。台車を率いていたクローンヤクザは、オレンジ色のボブカット白衣女性を発見し、立ち止まる。 10

2013-09-03 23:29:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フブキ=サン、検体が予想以上に痛みを感じて暴れています」白衣ヤクザが電子カルテを見ながら無表情に報告。「危険量まで打って眠らせなさい。今日は忙しいの」PVCナース服を着たその豊満なバストの持ち主は、フブキ・ナハタ女史。リー先生の助手の一人であり、ニンジャならぬ常人である。 11

2013-09-03 23:34:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ヨロコンデー!」白衣クローンヤクザは頷き、台車を押して暗い地下牢へと向かった。厄介ごとを全て解決し終えたフブキは、挑発的なオレンジ色のハイヒールを鳴らしながら、個人研究室へと向かって歩く。「これでようやく、特別な仕事に取りかかれるわ」彼女は上機嫌になり、鼻歌が混じり出す。 12

2013-09-03 23:41:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガコンプシュー!三段ロックドアが開き、圧縮空気が排出される。フブキの研究室は広い。壁の棚には奇怪なホルマリン漬けがオブジェめいて並び、何個かの容姿端麗な男女や動物の生首ホルマリン漬けが、ぼんやりと彼女の動きを目で追った。大机の上には、作りかけのホールケーキとフライドスシ重箱。13

2013-09-03 23:50:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「先生、今年も忘れてるに違いないわ……今日が誕生日だって。あのバカのトリダは、こういう事に頭が回らないし」フブキは滅菌ゲートを潜り、タイトな白ゴム手袋を嵌め、妄想に身をよじる。「アーン!リー先生、そんな……いけませんわ!」彼女の高度な知性はかなり先までシミュレートするのだ! 14

2013-09-03 23:56:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フブキは最後の仕上げを終え、真っ赤なオーガニック・イチゴをケーキに乗せると、スシ重箱とケーキを実験用シーツで隠して金属製台車にセットした。そして鼻歌を歌いながら、リー先生の個人研究室へと向かって廊下を歩き出す。サプライズがあったほうが良かろうと、至極真面目な顔を作りながら。 15

2013-09-04 00:07:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おお……おお……フブキ=サン、なりません!破滅が……破滅が……!ナムアミダブツ!何たる恐るべき夜か!」悲痛な面持ちのラヴェジャーが駆け寄りフブキに追いすがる。「ラヴェジャー=サン、私は忙しいのよ」台車を押し歩き続けるフブキ女史。廊下の反対側からは、壁にもたれて歩くトリダ。 16

2013-09-04 00:12:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「竜が……竜が……滅びを……滅びを……!」ラヴェジャーはフブキ女史に振り捨てられ、廊下で悔し気に涙を流す。二人の助手は同時にリー先生の個人研究室の前に立ち、IRCインターホンを押した。ガゴンプシュー。四段隔壁が開き、リー先生と、見慣れぬサングラスの女ニンジャが姿を現す。 17

2013-09-04 00:19:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「リ、リー先生、そ、その方は?」トリダがどもる。「観察眼!その通り!彼女はドラゴン・ニンジャ=サン!今日から共同研究者としてINWに迎えることになった!」「共同、研究者?」フブキの表情が凍り付く。「討論すべき事が山ほどあるからネェー。時間が無い!君たちは各自で進めておいて」 18

2013-09-04 00:23:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、ドラゴン・ニンジャです」「ドーモ、ブルーブラッドです」トリダはオジギする。ニンジャ頭巾からのぞくルビー色の瞳に、彼は畏れの表情を浮かべていた。彼はリアルニンジャの存在感を感じ取った。楽園に忍び込む蛇を。そして研究者の知性は、内なるニンジャソウルの闇に塗り潰され…… 19

2013-09-04 22:07:06