「平成24年(ク)第984号,第985号 遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件 平成25年9月4日 大法廷決定」についてanonymity弁護士の感想
弁護士(第二東京弁護士会)/『憲法ガール』『行政法ガール』『憲法の地図』著者。直近の単著として『新人弁護士カエデ、行政法に挑む』https://t.co/0moyPRXiCu…
- 平成24年(ク)第984号,第985号 遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件
平成25年9月4日 大法廷決定
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130904154932.pdf
平等原則の憲法適合性の有無に関して、伝統的通説は、①差別取扱いの有無、②14条後段列挙事由、③権利性質の確定、④目的手段審査等の審査を行い、②③の論証を通じて審査基準論を確定します。
2013-09-04 19:24:38これに対して近時の有力説の三段階審査論者は平等権については保護範囲を観念できないとして三段階審査の適用を否定し、伝統的通説に準拠して判断する見解と、保護領域を観念し前記②③を審査密度決定機能として重視します。
2013-09-04 19:27:02このいずれの見解も理論構成は違えど、やっていることはほぼ同じですね。で、今回の婚外子の意思で決定できない事項により不利益を受けるのは不当だ、という部分については、学説からは審査密度をあげるものとして機能するはずで、国籍法違憲判決も②③論証を重視しているかの判示があるとかいうわけ。
2013-09-04 19:30:21一方で最高裁はあくまで平等原則の領域では合理的理由の有無のみを問う緩やかな基準を採用しており、選挙権領域については審査密度を増しているような判決もありますが、今回の判例はそこは踏み込まなかったなと。あくまで合理的理由の有無を判定する一要素とされているのみですね。
2013-09-04 19:32:49あと今回新しいと思ったのは、婚外子に対する差別意識の助長、すなわちスティグマ論を正式に取り入れた点ですね。記憶で申し訳ないですが、スティグマ論をここまで取り入れたものはない気がするので、スティグマ論者は喜びそうですし、伝統的通説の修正が迫られる可能性もあります。
2013-09-04 19:36:38このスティグマ論がどう作用したのかを分析すると興味深いですね。客観的法効果や欧米諸国と日本の状況の違いなどを踏まえて逆方向の結論に振れそうになるのをスティグマ論で押さえ込んだ、という印象ですね。ま、これをスティグマで読むかは人によりけりでしょうけど。
2013-09-04 19:39:45また最高裁の法令違憲を出す手法として、立法事実の変遷論で乗り切る場合がありますが、今回もそれですね。あとは国際人権法の人には国際人権規約の作用について伺いたいところです。
2013-09-04 19:42:45「法と経済」の観点からの分析が重要と個人的には考えます RT @babel0101 このスティグマ論がどう作用したのかを分析すると興味深いですね。客観的法効果や欧米諸国と日本の状況の違いなどを踏まえて逆方向の結論に振れそうになるのをスティグマ論で押さえ込んだ、という印象ですね(略
2013-09-04 19:44:27今回、特にツイッター上で取り上げられているのが、違憲の不遡及論ですね。補足意見だとオビタディクタムではなくレイシオデシデンダイらしいですが、これ凄いなあと。後者の範囲ってかなり不明確に論じられてきましたが・・・
2013-09-04 19:48:05そもそもレイシオうんたらという観念を判例国でない我が国で受け入れるかの問題があり、受け入れるとしてここまで広範なレイシオを受け入れるのだなという感想もあり。
2013-09-04 19:49:35このへん本文のほうが慎重な書き方をしていて、親族・相続法の特殊性に限局し、そのレイシオの影響力を押さえ込もうとしていますね。
2013-09-04 19:50:39法の不遡及論は色々と深いですね。憲法に対する法哲学の優位とでもいうべきか。法的安定性要求が法の普遍的要請であるという言説。ま、これ自体はとりわけあまりに抽象的であるがゆえに「リスキー」ではないですけどね。
2013-09-04 19:57:22先例としての事実上の拘束力論について金築裁判官は個別的効力説を前提としながらその根拠を憲法14条の平等原則に求め、合理的理由により例外を認めるアプローチをとりますが、不十分かなと思います。ここは千葉裁判官の違憲立法審査権の内容の問題として論じるほうが好きですね。
2013-09-04 20:03:01このへん統治機構の勉強をしていないロー生がいたら反省して欲しいですが、個別的効力説と他の国家機関の拘束力の論点がありますね。
2013-09-04 20:04:16司法権については、憲法76条1項と憲法81条の二重の権能が与えられていることから生じうる問題です。他の国家機関の違憲判決に対する尊重論は、憲法76条1項の司法権の国家権能が個別的効力説の方向へ作用する反面、81条があるから生じるわけです。
2013-09-04 20:06:39そうすると、14条の問題をクリアするだけではなく、千葉裁判官のように違憲立法審査権の立法類似機能との抵触を考察すべきだなと私なんかは思いますね。とりあえず以上です。
2013-09-04 20:08:00