孤独潜水

1つの身体を共有する「僕」と「君」。僕たちは永遠に触れ合うことができない。僕たちは互いに孤独だ。 とある多重人格者の独り言。
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てい @orztee

海に潜ってお話しようよ。僕と君だけの海だ。両手がハサミになってしまった男の話をしよう。彼の言葉は泡なんだ。君の身体は綺麗な鱗で覆われているけど僕の手では触れない。ざらざらしていて、触ると手が切れてしまう。だから僕たちはお互いに離れていなくちゃいけない。2人だけの海で、遠く、遠く。

2013-09-08 00:58:47
てい @orztee

両手がハサミになってしまった男の話は悲しい。近づきたいものに近づけず愛したものに触れることができない。彼の言葉は誰からも信用されず遂に彼は独りぼっちになる。2人だけの海で、お互いに離れていなくてはいけない、僕と君。僕たちも彼と同じなのではないだろうか。1人と1人。僕たちは孤独だ。

2013-09-08 01:02:23
てい @orztee

僕たちは交代で水面に顔を出す。残った方は1人のまま水上の世界を見つめ続ける。水上の世界は残酷で生きている者同士が激しく摩擦している。そこで散る火花が怖くて、残った1人は目を瞑る。でも、水上に出た1人は目を瞑ることができない。瞑ってしまえば、水上の世界で生き残ることはできない。

2013-09-08 01:08:44
てい @orztee

水上に出て思い切り息を吸い込んだ1人は、やがて海の中へ戻る。疲弊し消耗し、くたくたと海底に横たわる。その時、海の中で待っていたもう1人と再会し、平穏を取り戻す。孤独と孤独は一瞬だけ言葉を交わし、それから役割を交代する。さあ、そろそろ時間だ。次は君がお行き。さようなら。また後で。

2013-09-08 01:14:04