vivivichのお題は「嬉しいちくわ」です。できれば作中で「壁」を使い、ゼイレン究極破壊兵器『ウティマ』を登場させましょう。 #EloSSfes http://t.co/opo3N1UaKL
2013-09-08 23:40:35ずしん、ずしんと足音が迫ってくる。うまく身を隠せたかと息をついたほんの一瞬前の自分を、男は呪った。 確実に、その音は近づいてきている。息を殺し、気配を絶って、どんなに腕の立つ者でも捉えられないはずだというのに、相手は迷いなく距離を詰めてくる。 手元には今にも折れそうな剣だけだ。
2013-09-08 23:46:58男は腕利きの冒険者として名を馳せていた。今回は、新しく見つかった遺跡のような構造物の調査を請け負っている。街と街をつなぐ道からそう遠くは外れていない場所で、何故今まで誰にも見つからなかったのかと不思議に思ったものだ。当然、遺跡の内部にもそう危険はないと踏んでいた。
2013-09-08 23:50:01予想通り、遺跡には危険なトラップも、一匹の鼠すらも見当たらなかった。極めて単純な一本道を男はゆうゆうと進んだ。たったひとつだけ出会ったそれは、ただの壁のようにじっと動かなかった。だからだ。男が一番してはならない油断をしてしまったのは。
2013-09-08 23:54:53男が至近距離まで近づいたとき、それは突然動き出した。駆動音をあげ、猛スピードで迫りながら、見たこともない大爆発を起こす火器をぶっぱなす。 男は必死に応戦したが、相手の鋼鉄の身体には刃は通らず、弾ははじかれ、何をしても効果は見て取れなかった。 矢尽き刀折れるとはこのことだ。
2013-09-08 23:57:09男は逃げまわった。単純な一本道に相手が突進してできたいくつもの穴が通路としてできあがっていた。もはやどちらが出口かもわからず、彷徨い、男はやっとのことで身を隠せたとおもったのだ。 だが今、音は壁一つ挟んだすぐ近くに迫っている。
2013-09-08 23:58:25昨日の晩にくすねたつまみだ。音がいよいよ迫ってくる。 男はしずかにちくわを頬張った。口中に嬉しくなるような風味が広がる。 壁が崩れた。 それが、最後に味わったごちそうとなった。
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