シリーズ「先輩と僕」~恋ってなんですか?~

先輩と僕を中心に、様々な恋愛感が提示される、オムニバスtwnovel。 はっきり言ってしまうと、自分の恋愛感、及び自分が共感した恋愛感を提示しています。 時系列はバラバラ、落としどころは作者自身全く考えておらず、そもそも先輩と僕が全編を通じて同一人物かどうかも明確にはされていません。 そんなまとめですが、どうぞ一度ご覧ください。
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相応恣意 @aioushii

「じゃあ先輩は、恋しないんですか?」「え、私?するわけないじゃん」あっけらかんと言い放つ。意外だった。きっと、得意科目の一つだろうと思ったのに。「だってさ、恋はするものじゃなくて、落ちるものでしょ?」夕陽で朱に染まる先輩の顔を見ながら、僕は恋に落ちる音を聞いた。 #twnovel

2009-11-26 02:02:38
相応恣意 @aioushii

「顔はいいけど、如月先輩はねーよ、椎名もそう思うだろ?」先輩のことを分かってもらえない寂寥感と、先輩のことを自分だけが知っている優越感切なさと心地良さの狭間で僕は答える。「確かにな」だってこの気持ちはもう少し忍んでいたい。せめて先輩の前で形にするその日まで。 #twnovel

2009-11-28 22:48:33
相応恣意 @aioushii

「実は俺、好きな人ができたんだ」「好きな人って、お前に?」「ああ」「そうか、もう告白はしたのか?」「ああ」「結果は?」「だめだった」「そうか、じゃあ来年はもう少し笑える嘘を頼むな」「やっぱりばれてたか」今日は四月一日。一年に一度、笑えない過去を笑って話せる日。 #twnovel

2009-12-10 00:39:31
相応恣意 @aioushii

「俺に言わせれば、お前は立派に恋をしてるよ」「さっきまでの話、聞いてた?僕は恋ができないって話をしてたんだけど」だが直斗は不敵に笑う。「だからこそさ」「え?」「お前は恋ができないんじゃない、単に、恋に求めるハードルが高すぎるんだよ。つまり恋に恋してるってわけだ」 #twnovel

2009-12-20 11:22:48
相応恣意 @aioushii

俺はお前が恨めしい。振られても、今までと変わらず接してもらえるのだから。俺は今では、まともに言葉を交わしてももらえないというのに。こんな様では、もう一度告白なんて夢のまた夢。後悔はない。けれど、あの日をなかったことにできないかと考えてしまう。俺はお前が恨めしい。 #twnovel

2009-12-18 23:06:03
相応恣意 @aioushii

僕は君が羨ましい。彼女の態度で振られたことが痛感できるのだから。確かに今まで通り接してもらえるのは幸せなことかもしれない。でもだからこそ、あの日のことは彼女の心に響いてないのでは?そう思えて仕方ないんだ。いっそもう一度振られれば楽なのだろうか。僕は君が羨ましい。 #twnovel

2009-12-18 23:07:55
相応恣意 @aioushii

「なんでお前は、俺に彼女がいないって分かるんだ?」ムッとした顔で直斗が睨む。「だって、実際いないでしょ?そんな怖そうな顔しなくても」「確かにいないが、それが当然の前提のように話が進むのが気に食わないんだよ」言って、ぷいとそっぽを向く。そうか、その発想はなかった。 #twnovel

2009-12-21 20:49:54
相応恣意 @aioushii

「あなたの気持ちを知ろうとなんて、しなければ良かった。そうすれば、こんな思いをしなくて済んだのに」知るということは不可逆な現象。忘れることはできても、知らなかったことには絶対できない。そしてあなたの誠意を踏み躙った自分の愚かさを忘れられるはずもない。 #twnovel

2010-01-17 22:52:41
相応恣意 @aioushii

「でも僕は、先輩の気持ちを知ることができて良かったと思います」確かに僕が口を噤んでいれば、こんなことにはならなかったかもしれません。でも、想いを形にすることで得たものだってあるんです。だから先輩、失ってばかりだと嘆いて、そんな悲しそうな顔するのはやめてください。 #twnovel

2010-01-17 22:53:08
相応恣意 @aioushii

『アドレス変更しました』久々の先輩からのメールは、素っ気ない、らしい文面だった。どうしたものだろう。未練がましいと思われたくないし、返信せず失望させたくもない。迷った挙句、返事は一言『了解です』先輩は僕の逡巡には気づかないだろうけど、きっとそれでいいんだろう。 #twinovel

2010-01-30 18:44:24
相応恣意 @aioushii

@aioushii 『了解です』随分と素っ気ない返事だった。がっかりすると同時に、そんな自分に気づいて苦笑する。今更何を求めているのだろう。振ったのは私の方なのに。ダミーの宛て先を織り交ぜて、一斉送信のふりまでして。私がこんな気持ちでいること、あいつは一生知らないんだろうな。

2010-01-30 20:38:57
相応恣意 @aioushii

私のことを好きになっちゃだめだよ? だって私は、自分が汚くて嫌なヤツだってことを、誰よりもよく知っている。ほら、今だって君は、そんなにも悲しそうな顔をしている。私がダメなヤツだから、君にそんな顔をさせちゃうんだ。ね? だから、私のことを好きになっちゃだめだよ? #twnovel

2010-02-12 18:36:52
相応恣意 @aioushii

@aioushii どうして先輩は、そんなに自分を卑下するんですか?先輩が自分の汚くて嫌なところを誰よりも知っていると言うのなら、僕は先輩の素敵で綺麗なところを、誰よりも見つけられるやつになってみせます。だから先輩……好きになってもいいですか? #twnovel #koifumi

2010-02-12 18:38:36
相応恣意 @aioushii

「はい、これ、椎名もどうぞ」手渡されたのは一包みの袋に入ったチョコ。「僕の分もあるんですか?」「あるから渡したんでしょ。ま、義理チョコとはいえ貰えるだけ感謝しなさい」言われなくとも嬉しかった。家族以外から初めてもらったチョコの味は、思っていたよりスイートだった。 #twnovel

2010-02-14 23:54:55
相応恣意 @aioushii

期待してなかったと言えば嘘になる。でも今日は休日で、先輩は受験生で、ましてやあんなことがあったとなれば……できることなら、去年の幸福だった僕から、あのチョコを奪い取ってしまいたい。空想の中で去年のチョコを噛みしめてみる。その味は首を傾げたくなるほどビターだった。 #twnovel

2010-02-15 00:08:34
相応恣意 @aioushii

僕の気持ちを伝えたら、きっと先輩を困らせてしまう。先輩は優しくて、でもどこか脆い人だから……そう、自己満足のためにこの思いを口にするくらいなら、僕はこの気持ちに蓋をするべきなんだ。 #twnovel 仮にその話が真実だとしても、お前のそれは優しさじゃないよ。単なる臆病の裏返しだ。

2010-03-04 20:07:42
相応恣意 @aioushii

なんで俺に彼女がいないかって?分かりきったことを聞くなよ。彼女を作ろうとしてないんだから、できるわけがないじゃないか。 #twnovel いや、確かに俺は彼女が欲しいし、そういうことに興味はあるぜ。でもな、彼女が欲しいってのと、彼女を作ろうとするってのは、全然違うことなんだぜ?

2010-04-11 21:37:37