ノーホーマー・ノーサヴァイヴ #4
(あらすじ:オニタマゴ球場、ウシミツアワー。過去の無茶な人助け行為に用いたハンコが人知れず偽装された結果、闇の無観客野球試合にたった一人で臨まねばならなくなった我らがニンジャスレイヤー。一回表で128点取ってコールド勝ちに持ち込まねば負けが確定し、セプクせねばならない。)
2013-09-13 13:39:46(敵の暗殺野球ニンジャ、サブスティテュートと、キャッチャーを買って出た魔のジョックニンジャ、フォートレス。彼らはカラテで勝てないニンジャスレイヤーをスポーツによって葬るべく、この周到なデストラップを構築した外道だ。だがニンジャスレイヤーにはおとなしくセプクするつもりなどない。)
2013-09-13 13:44:16(野球で戦うことを強いられるならば、野球で戦い、倒すのみ。シンプルな事だ。サブスティテュートの肩をドライブ打球によって破壊したニンジャスレイヤーは、サブスティテュートのサイバネティクス治療中に打点を重ね、108点まで取った。あと20点だ。……ナムサン。20点も残っているのだ。)
2013-09-13 13:48:42(実際、フォートレスに焦りは見られない。ふてぶてしくニンジャスレイヤーにプレッシャーをかけ続けた挙句、強烈なエルボードロップ守備でニンジャスレイヤーに打撃を加え、ダメージを負わせる。耐えるニンジャスレイヤー。そこへサイバネティクス腕交換を済ませたサブスティテュートが戻ってきた!)
2013-09-13 13:53:47(当初は露骨な敬遠球やビーンボールで労せずに勝ちを奪おうとしていたサブスティテュートだが、いよいよ真剣勝負の始まりってわけだ。ポップコーンは持ったか?ビールは?悪いことは言わない、ZBRはやめときな!)
2013-09-13 13:56:50◆「ハァーッ……ハァーッ……」ニンジャスレイヤーはバットを構える。フォートレスは喉を鳴らして笑う。「グフフ……楽しくやろうや。お前の残り少ない人生をよ」「イヤーッ!」スタジアムカーからサブスティテュートが回転ジャンプし、マウンドに着地した。その腕に紫のエンハンス光が宿った。◆
2013-09-13 14:16:22「サブスティテュート=サン、不慮の事故による負傷の治療を終え、続投ドスエ」合成マイコ音声アナウンスが、ロウソクで不気味に照らし出されたオニタマゴ球場に響き渡った。ニンジャスレイヤーとサブスティテュートは睨み合った。 1
2013-09-13 14:17:55「言っておくが、奴は野球のプロ……」フォートレスがニンジャスレイヤーに囁いた。「敬遠球でおとなしく出塁負けしていりゃあ、奴の本気を引き出しちまう事もなかったんだぜ。後悔しても遅い……グフフ」「成る程、姑息な小細工が通じぬ事を学んだか。何よりだ」ニンジャスレイヤーは低く言った。2
2013-09-13 14:22:00「そして俺はスポーツのプロ……ジョックのプロよ。俺の勝利者人生において、ムカつく非スポーツマンはスポーツ権力で必ず叩き潰してきた。わかるか?今の俺は水を得た魚なんだぜ……確かに路上でクズにタックルをかけて殺すのも面白え……だがスポーツで殺すのは何倍も格別の快楽があるんだ」 3
2013-09-13 14:26:02ニンジャスレイヤーはもはや無言。フォートレスの挑発をBGMめいて聴き流すのみだ。サブスティテュートが脚を高く上げた。土煙。そしてボールを投げる!BOOOOM!「ヌゥーッ!」キャッチャーミットに衝撃音!フォートレスは1メートル後ろへ滑った! 4
2013-09-13 14:28:02「ストライク!」アマクダリ審判がジェスチャーして叫んだ。「見えたか?見えねえだろう?」サブスティテュートへボールを投げ返しながら、フォートレスが勝ち誇った。「俺でさえ、捉えるのがやっとの球よ……恐ろしい奴だぜ」サブスティテュートは再び脚を高く上げた。そして、投球! 5
2013-09-13 14:45:24BOOOOM!フォートレスの身体が再び1メートル後退した。「ストライク!」アマクダリ審判がジェスチャーし叫ぶ。「さあ、もう一球でアウトが取られるぜ……」フォートレスが言った。「ちなみにここの審判……わかってると思うが、俺らの手下だ。せいぜい贔屓しようのねえプレーで頑張れや」6
2013-09-13 14:50:34再びサブスティテュートの脚が上がった!「イヤーッ!」紫のエンハンス光が薄闇に軌跡を描く!BOOOOM!「イヤーッ!」……ガキィン!「ストライ……エッ?」フォートレスのキャッチャーミットにボールは無い。アマクダリ審判が周囲を見渡し、それから天を見上げた。フォートレスが舌打ちした。7
2013-09-13 14:57:27ニンジャスレイヤーのスイングは豪速球をバットの端で捉えていた。打球は高く上昇し、聖ラオモトのウキヨエに見下ろされながら、スタジアム後方に落下した。「……ファール」アマクダリ審判がジェスチャーして叫んだ。「シマッテコーゼ!」フォートレスがドスの効いた声を発した。 8
2013-09-13 14:59:39「イヤーッ!」サブスティテュートが投球!BOOOM!ガキィン!「ストライ……エッ?」アマクダリ審判がボールを探した。やはり頭上!フォートレスは後方スタンドに落ちてゆく打球を見た。それからニンジャスレイヤーを再び見た。フォートレスの眉間にはシリアスな皺が寄っている。「テメェ……」9
2013-09-13 15:04:32「実際、凄まじい投球だ。しかしながら勝負事には不可解な偶然もまた付き物」ニンジャスレイヤーが淡々と言った。「もう一球投げればゲームセットできるかも知れんぞ。投げさせるがいい」「……」「尤も、二度ある事は三度四度と続く……そんなコトワザもあるようだが」「テメェーッ……!」 10
2013-09-13 15:08:52フォートレスの心中に積乱雲めいた疑心が沸き起こる。(((バカな……見えてきたのか?奴の投球が?この短時間で……ありえねえぜ)))彼はニンジャスレイヤーとサブスティテュートを交互に見た。(((いや……ありえねえ。奴は立っているのもやっとだ。痩せ我慢してやがるだけだ))) 11
2013-09-13 15:13:19「ニンジャ持久力……その作用……ニンジャのオヌシに敢えて説明するまでもあるまい」ニンジャスレイヤーは低く言った。「休まず遮二無二投げさせるがいい。勝ちを逃さぬように……これまでのクローンヤクザにさせてきたようにな」「……!」フォートレスは唾を飲んだ。「……何だと」 12
2013-09-13 15:23:30(((ハッタリだ……ハッタリに決まってやがる)))フォートレスの眉間を汗が流れ落ちた。(((やつは打ちどおしだ!100点以上もホームランを打ち続けてやがるんだ。エルボードロップも手応えあった!だが……畜生!)))フォートレスは投球を急ぐようサブスティテュートにサインした。 13
2013-09-13 15:25:20これはニンジャのイクサだ。非ニンジャ相手の試合とは違う。ひとたびスタミナ回復の隙を与えれば、ニンジャによってはた易くその持久力を取り戻してしまう可能性すらあるのだ。フォートレスはサブスティテュートに急がせる!「イヤーッ!」BOOOOM!ガキィン!「スト……ああ、ファールです」14
2013-09-13 15:28:25「ヌウウーッ!」フォートレスは苛立ち、己のフルフェイスヘルムを殴りつけた。(早く!早く投げろ!投げ続けろ!)サブスティテュートへサインを送る!「イヤーッ!」BOOOOM!サブスティテュートの投球!「まずい……」フォートレスは目を見開く。モーションが僅かに甘い!……ガキィン! 15
2013-09-13 15:34:04ゴウランガ!打球は後ろではなく前へ飛んだ!「ア……アアアアーッ!」フォートレスが地団駄を踏む!打球はぐんぐん伸びる!センター!観客席へ!うず高く積み上げられたロウソクの中へ打球が落下!途端に液晶パネルに「お祭り」の電光掲示が輝き、続いて「ホームラン」の文字!パワリオワー!16
2013-09-13 15:39:25「……」ニンジャスレイヤーは満足げに息を吐き、バットをフォートレスの足元に放った。フルフェイスヘルムから覗くフォートレスの目元は怒りと困惑にドス黒い!ニンジャスレイヤーは極めてゆっくりと塁から塁へ回った。持久力回復行為である! 17
2013-09-13 15:43:28クローンヤクザが投手であった時、ニンジャスレイヤーは極力試合の回転を速め、サブスティテュートが戻る前に、取れるだけ点を取る必要があった。彼は決して休まず打ち続け、全力で走り続けてきた。だが今はサブスティテュートがマウンドに戻ってきた。取るべき行動が逆転したのだ。18
2013-09-13 15:47:43