ノベライズ版・ルパン三世 五右エ門危機一髪・まとめ
- SHOTIKUBUY
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序章~五エ門は己の未熟さを呪っていた。久しぶりの日本での休暇に気が緩んでいたのかもしれない。お気に入りの温泉で鼻歌まじりにのんびりしていたが、つい斬鉄剣から目を離したのがいけなかった。湯けむりの中に女の影を認め動揺し、急いで湯から上がろうとし、背後の気配に気付かなかった。
2013-09-04 19:24:20②突如背後からワイヤーの様なもので首を絞められた。この時初めて五エ門は刺客の存在に気付いた。しかし不意を突かれても丸腰であっても負けやしない。手刀を払い背後の敵を退けると、湯の中を反対側まで泳いだ。そこには着物と斬鉄剣がある。
2013-09-04 19:28:57③しかし斬鉄剣は消えていた。もう一人の刺客が隠したのだ。「しまった!斬鉄剣がない!」そのもう一人、女の影が五右エ門に近づく。女の影に動揺した五エ門は狙われているにも関わらず、女の裸体を見るまいと目を逸らした。
2013-09-04 19:32:49④その瞬間首筋に針で刺したような感触が…。「不覚…!」眠り薬だ。思った時には五エ門は意識を失っていた。その後の記憶がない。気がつくと両手の親指を紐で縛られ天井から吊るされていた。おまけに左足首には鉄球の重りが。遠くの方でギターの音が聞こえた。
2013-09-04 19:37:15⑤2人の刺客はウルフとローズというらしい。もちろん本名じゃないだろうが。殺しの世界で名を上げようと自分たちを狙って来る者は多い。自分だけでなくルパンも次元も同様の理由で過去何度も狙われた。今回は自分の番というわけか。朦朧とした意識の中で五エ門は一人思った。
2013-09-04 20:00:49⑥だが五エ門はこの2人に対する怒りはなかった。むしろ不意を突かれ弱みに付け込まれた己の不甲斐なさに怒りを感じた。普段の鍛錬も修行も何一つ自分の助けにはなってなかった。どれほど己を律しても結局最後は精神的な未熟さが出てしまうのだ。
2013-09-04 20:05:47⑦そして2人の真の狙いが自分ではなくルパンにあると知ったっとき、ますます自分に対して腹が立った。己の未熟さゆえにルパンを危険にさらすかもしれない。体が自由であったなら腹を切って死んで詫びるところだ。だが生憎両手はふさがっている。
2013-09-04 20:18:35⑧もう既に両腕は痺れて感覚がなくなっている。女の方、ローズとやらが鞭で何度も体を打ちつけて来ている。腕に顔に足に、鞭が食い込む瞬間だけ、痛みというより焼けるような熱さを感じた。だがこの程度の痛みになら耐えられる。耐えてみせる!
2013-09-04 20:19:46⑨昨夜拉致されてからおよそ20時間が経過していた。飲まず食わず、眠る事すら許されず攻め続けられ、普通の人間だったら肉体的にも精神的にもとっくに限界を超えているだろう。だが五エ門には皮肉にもそれに耐えられるだけのものが備わっていた。
2013-09-05 18:42:51⑩とうとう根負けしたのか鞭を持つ腕を止めるとローズは肩で息をしながら聞いてきた。「どう?少しはしゃべる気になった!?」さすがにまともに言葉は出ないが屈するはずもない。五エ門はわざとバカにしたように笑うとゆっくりと首を振った。
2013-09-05 18:46:55⑪あからさまな態度にローズはヒステリックに叫ぶ。「貴様、そんなに死にたいのかい!」怒りに任せ鞭を投げ捨てると、五エ門の足にぶら下がっている鉄球を持ち上げ、下に落とした。鉄球と全体重が指先に食い込む。さすがの五エ門も悲鳴をあげた。
2013-09-05 18:51:12⑫「指がちぎれるよ!」ローズは楽しむかのように2回、3回と鉄球を落とした。その時ウルフがギターを弾くのをやめた。そして五エ門に憐れむように言った。「頑張っても無駄だ五エ門。どんな男だってローズにかかれば赤ん坊のように泣き喚くことになる」まるで他人事のような物言いだ。
2013-09-05 18:57:42⑬「五エ門、今のうちにしゃべった方がいい、ルパンの弱点を」結局狙いはそれか。殺しの世界のナンバーワン。それに何の意味があるのか。五エ門はこのウルフとローズの2人が哀れになった。だが言葉で言っても聞くまい。昔の自分の様に。ルパンを殺すことだけが世界の全てだった時の様に。
2013-09-05 19:04:38⑭「たわけ…ルパンを倒せる者など居ない」五エ門はかつての自分を思った。自分はルパンに殺しの腕で負けたのではない。ルパンという男の大きさに負けたのだ。それが分からぬ奴は決して勝てない。同時にいつかルパンを殺すのは自分だと誓いを立てたことを思い出し、少し可笑しくなった。
2013-09-05 19:33:52⑮「居なかったと言ってもらおうか!」ローズは言うとヘッドフォンを五エ門の耳に当てた。「ゆっくり聞かせてやるさ!」ウルフはエレキギターを手に取る。電子音を大音量で五エ門の耳にかきならした。「言うんだルパンの弱点を!」ただの音楽ではない。それは神経を麻痺させる信号だった。
2013-09-05 19:39:52⑯ウルフは執拗にギターを弾き続ける 。頭の中をひっかきまわされるような衝撃に五エ門は気が狂いそうな感覚を覚えた。今までの様な体で直接感じる痛みなら耐えられるが、体験した事のない攻撃に五エ門の意識はだんだんと遠のいた。いったい自分は何のために耐えているのだ…。
2013-09-05 19:46:21【お詫びと訂正】物語の舞台を日本と書きましたが…。みんな忘れてくれ!とりあえず続きからはスペイン郊外ってことで!では再開!「ルパン・ザ・サ~ド」で~ん!
2013-09-05 22:28:34⑰引きずりまわされ、鞭で打たれ、既に着物は擦り切れ、体中も傷だらけ。視神経も相当のダメージを負っていた。にもかかわらず五エ門は一度も2人に対して制止も懇願もしなかった。また不思議と助かりたいとも思わなかった。ただもし死ぬのなら武士らしく潔く死にたい…と。
2013-09-05 22:30:25⑱2人の狙いがルパンである以上、ここで自分が死んでもルパンに害は及ばない。ルパンならこの2人位相手じゃないだろう。既に痛みが感じとれる限界を越え、全てが空虚の様に、ただ時間が過ぎていくだけだった。朦朧としながらも死ぬにしても無様な真似は出来ないとだけ思っていた。
2013-09-05 22:35:50⑲ローズに顔を殴られ五エ門は意識を取り戻した。また気絶してたのか…。混沌とした頭にウルフの声が響く。「もうこんなことはやめにしようぜ、俺たちの狙いはお前じゃない。はいちまいなよ、ルパンの弱点を。楽になれるぜ」しかしそれは五エ門にとって何の意味もない言葉だった。
2013-09-05 22:40:58⑳はなからその選択肢はない。答えは決まっている。「おろかな!ルパンに弱点などない!」「そうかな?ルパンだって人間だ、天下の五エ門が女の前に出るとガキ同然になるようにな」「もしあったとしても拙者がお前などに教えると思ってるのか」やるなら俺をやれ。早く殺せばいい。
2013-09-05 22:46:47(21)「そいつは残念だ、もう少し大人にならねえと長生きできねえぜ」言葉通りひと思いに殺せ。が逆に腕の感覚が一瞬消えた。天井から吊るされていたロープが解かれたのだ。しかし五エ門には立っていられる体力はなくそのまま冷たい石の床に倒れ込んでしまう。どうする気だ?
2013-09-05 22:50:54(22)今まで周りを見る余裕がなかったが、石の床に壁。どうやら田舎の石作りの城の中らしい。おそらく周りには人の気配もない。ルパンと落ち合う予定だった廃業したモーテルの近場にこんな場所があったか…?五エ門はつくづく温泉のことしか考えてなかった自分を呪った。
2013-09-05 22:57:28(23)ローズは五エ門の上半身に固定具をはめ込んだ。両親指は拘束されたまま。どちらにしても抵抗は出来ない。いつの間にかローズの手には電動ドリルが握られている。スイッチが入りドリルの音が静かな古城の中に響いた。「お医者さんごっこはお好き!?」ローズは笑みを浮かべた。
2013-09-05 23:04:20