夜の社会心理学者さんの「どうか暖かく見守って、やさしい言葉をかけてください」

・シリーズ第四作目  
心理 夜の社会心理学者 復興 被災地 震災 被災者 津波
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ひだりん @hidarin911
ラズベルトは親密な関係の崩壊を説明するモデルを提出しています。それによると親密な関係の崩壊に影響する第一は「投資量」です。長い時間付き合ったカップルほど,多くの愛情や金銭をつぎ込んだ相手ほど,投資量が多くなるので,別れにくくなります。「くされ縁」も投資量が多いことになりますよね。
ひだりん @hidarin911
第二は,関係の「満足度」です。当然ですが,満足度の高い関係は存続しやすく,満足度の低い関係は解消されやすくなりますよね。会うとすぐにケンカばかりしているカップルよりも,お互いにラブラブで,「今日も楽しかったね!」と,満足のいく時間を過したカップルのほうが,存続しやすいですよね。
ひだりん @hidarin911
そして第三は「代替肢の質」です。ちょっと難しい概念ですが,関係が解消されたときに予想される満足度の高さといった感じかな。「今の彼との関係には満足していないが,別れてしまうと一人で寂しいから別れない」といったときの「別れてしまうと一人で寂しい」という評価が「代替肢の質」になります。
ひだりん @hidarin911
これらの3つが複合的に影響して関係の解消や崩壊をもたらしているというモデルです。だから,満足度が高くても,代替肢の質がもっと満足が高いことが予想されると,関係は解消されるし,現在の満足度が低くても,別れると,もっと悲惨な状態が予想されると,別れることが出来なくなってしまうのです。
ひだりん @hidarin911
以前にもツィートしたことがあったと思いますが,福島には先祖代々福島の地で生活を営んできたり,農地や家を守ってきた人々がたくさんいらっしゃるわけです。「投資量」がものすごく多いことになります。だから,「心配だったら避難すればいい」というアドバイスに素直に従うことは出来ないですよね。
ひだりん @hidarin911
ここのところ強制避難地域の人たちのお話を伺うことがあるのですが,みなさん,「ふるさとはいいところだ」とおっしゃいます。自然が豊かだし,食べ物はおいしいし,近所付き合いなど,コミュニティの人間関係も,とても豊かだったのです。とても満足度の高い生活を送っていらっしゃったのですよね。
ひだりん @hidarin911
ふるさとを離れて新しい生活をしなければならないとき,それが,慣れない土地の狭い仮設住宅であったり,親戚や知り合いがひとりもいない借り上げ住宅であったりするとしたら,その新しい選択肢(代替肢)の質は,望ましい水準まで高いことを期待できないですよね。
ひだりん @hidarin911
避難している人たちは,投資量の多かった,満足度の高かったふるさとを離れ,代替肢の質が低い生活に移行することになってしまっているのです。この人たちの心情を思うと,簡単に,「福島は危険だから,別の土地に移住しろ」とは言えないですよね。
ひだりん @hidarin911
もう一つ親密な関係の崩壊について検討したものにダックがあります。ダックは,関係の崩壊に至る過程を4つの段階に分類しているのです。関係に不満を感じ,関係が衰退しはじめると,衰退の理由を考えたり,親密な行動や会話を減少させたり,別れを正当化しようとする「内的取り組み段階」が生じます。
ひだりん @hidarin911
別れの意思表示がなされ不満が表明されると「関係的段階」に移行します。この段階では,ふたりの関係や不満について話し合いがなされます。もし自分や相手が行動や考えを変えれば,関係は修復されますが,そうでない場合,関係を解消するという決断をふたりですることになります。関係的段階なのです。
ひだりん @hidarin911
親密な関係は,個人的な関係ではありません。ふたりが付き合っていることを友人や家族が知っているでしょう。多くの場合,社会的な関係なのです。だから,関係の解消も公のものとすることが必要になります。これが「社会的段階」です。別れた後のことを話したり,周囲の人たちに別れを伝える段階です。
ひだりん @hidarin911
友人や知人たちは,まだふたりが付き合っていると思っているから,「彼は元気?」などと聞いてきたりします。このとき,「じつは,別れたんだ」と答えていくことになりますよね。この社会的段階が,関係の解消にとって,とても苦しい段階のようなのです。別れが社会的なものとして取り扱われるのです。
ひだりん @hidarin911
そして,最後が,ふたりの想い出を過去のものとしていく「想い出の埋葬段階」です。grave dressing phaseを,どのように訳していいか困って,「想い出の埋葬段階」としましたが,なかなかいい訳ですね。さて,この段階では,別れから立ち直るためのさまざまな試みがなされます。
ひだりん @hidarin911
失恋したら「想い出のペンダントを湖に捨て」なければならないし,「夕陽に向かって叫ぶ」必要がありますよね。ふたりのメールやデジカメの写真を,泣きながら削除したり,付き合っていたときの日記を読み返して,幸せで楽しかったときのふたりの想い出に浸ることも必要です。想い出を埋葬するのです。
ひだりん @hidarin911
想い出の埋葬段階で,さらに辛いのが,ふたりで立てた旅行やお食事の予定をキャンセルしていくことですよね。楽しみにして待ち遠しく思っていたイベントが,悲しいイベントになってしまうのです。「関係が続いていたら,一緒に行けたのになぁ・・」と,なんとも切ない思いをめぐらせてしまいますよね。
ひだりん @hidarin911
肉親や恋人,故郷,財産など,大切なものを喪うことを喪失体験といいます。この喪失体験にともない,感情や行動などにさまざまな影響が見られることがあります。これを悲嘆反応といいます。悲嘆の強さは,喪失したものの大きさによって違いますし,個人によっても異なります。時間的経過も影響します。
ひだりん @hidarin911
悲嘆反応の第一は,感情です。喪失体験をすると,多くの人が,「胸が張り裂けそう」,「悲しい」,「辛い」,「苦しい」といったネガティブな感情が喚起されます。ただ,予期されない,あまりにも大きな喪失体験では,抜け殻のようになって,感情が失われ麻痺してしまったように見えることもあります。
ひだりん @hidarin911
悲嘆反応の第二は,身体的なものです。動悸や血圧が上昇し,震えたり,食欲がなくなったり,眠れなくなったりします。下痢や嘔吐なども起こるかもしれません。体調が悪くなるのです。もちろん,涙が涸れるほど泣くこともあります。ただし,本当に苦しくて,とても悲しくても,泣かない人もいるのです。
ひだりん @hidarin911
第三は,認知的活動です。写真やアルバムを見て過去を回顧したり,想い出にふけったりします。「どうして,こんなことになってしまったのだろう」といった帰属的な認知活動や,「あのとき,ああしていればよかった」,「あんなことしなければよかった」といった後悔や自責的な認知的な活動も生じます。
ひだりん @hidarin911
「自分が悪かった」と内罰的に帰属するのは,とても苦しいことです。後悔するだけでなく,罪悪感を覚えたり,自分を責めたりしてしまいます。かといって,たとえば,「あいつ(東京電力や津波)が悪い」と外罰的に帰属しても,怒りの感情を収めることが出来ず,苦しい思いをすることも多くあります。
ひだりん @hidarin911
悲嘆反応の第四は行動で。想い出の場所を訪れたり,事故現場を訪れたりします。相手がいないから,もう出るはずのない電話をかけることもあります。やけ酒・やけ食いをしたり,車でとばしたり,夕陽に向かって叫んだりします。内省的に手紙や日記を書くこともあります。黒い服だけを着る人もいます。
ひだりん @hidarin911
「一人になって,耐える」こともありますし,「友達や家族に話したり,相談をする」こともあります。医者やカウンセラーなどの専門家に相談する人もいます。ひとりの「孤独な時間」も悲嘆反応からの回復には大切な時間なのですが,だれかに相談して,サポートを得ることも,とても重要なことなのです。
ひだりん @hidarin911
想い出にふけるとき,写真やメールや日記などの具体的イメージが呼び起こされるものがあることが必要になります。津波で,写真や記念品がすべて流されてしまったことは,悲嘆にある人にとって,とても辛いことなのです。だから,写真を手元に戻すためのボランティアは,とても価値があることなのです。
ひだりん @hidarin911
遺児たちがよく教えてくれるのは,「お父さんの顔は,写真があるから覚えているんだ」,「でもね,お父さんの声を忘れてきちゃったんだよ。忘れちゃいけないって思うのに,時々思い出せなくなっちゃうんだ」,「だから,お父さんの声を,もう一度,聞きたいんだ」といったことです。声も大切なのです。
ひだりん @hidarin911
周囲の人たちからの言葉は,かえって悲嘆にある人を苦しめることがあります。「早く忘れてしまいなさい」,「あなたは若いのだから,別の人をみつければ」,「一人は亡くなったけど,もう一人子どもがいてよかったじゃない」,「生きているだけで幸せと思わなくちゃ」。ナイフのように突き刺さります。
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