茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1038回「向こう側には、誰もいない」
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連続ツイート第1038回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、昨日、東京を歩きながらふらふら考えていたこと。
2013-09-18 07:05:38むだ(1)台風一過、ずいぶん涼しくなってきた。東京駅から半蔵門まで、日比谷公園や官庁街を通って歩いた。ある官庁の前で、のぼりを持った人たちが集まって、何かを訴えかけていた。経産省の前のテントは、敷地内だと閉鎖されていたが、それでも、何人かの方々がいらした。
2013-09-18 07:07:42むだ(2)人間は、「向こう側」を創り出してしまう。そして、「こちら側」と「向こう側」の間に、大きな距離があると考えてしまう。たとえば、首相官邸前に集まって、何かを訴えるというとき、官邸の中と外では、違う世界、異なる時間が流れている、と思ってしまう。
2013-09-18 07:08:59むだ(3)ここに、一枚の写真がある。先日、九州滞在中に2020年の東京オリンピック開催が決まった。その時、西日本新聞が発行した号外に、招致委員会の方々が発表の瞬間立ち上がって喜んでいる様子が映っている。そこには、安倍首相や、森元首相がいらっしゃる。
2013-09-18 07:11:06むだ(4)安倍さんも森さんも、ロゲ会長が「Tokyo」と言った瞬間、立ち上がって、子どものように喜んでいる。そのような様子を見ていると、当たり前だが、安倍さんも森さんも人間で、「権力」という「闇」の中にいる「向こう側」の人ではない、ということが認識される。
2013-09-18 07:12:17むだ(5)半蔵門に着く少し前、最高裁判所の前を通った時、通用口で初老の人が何か訴えていて、それに職員の方が対応しているのが見えた。初老の方は「最高裁がある!」とばかり押しかけているのだろうし、職員の方は懸命になだめている感じだった。しかし、本当は最高裁の「向こう側」はない。
2013-09-18 07:13:48むだ(6)最高裁とか、最高裁判事とか言えば、神秘のベールに包まれているようだが、敷地内に入って、生身の人間としてその中にいる人を見れば、ただ普通の人間がいるだけである。中央官庁も同じこと。財務省も外務省も、その中に入ったら、格別な人間が歩いているわけでは、全くない。
2013-09-18 07:14:54むだ(7)「向こう側には、誰もいない」というか、最初から、「向こう側」などない。国家のような強力なフィクションは、あたかも権力というものの「向こう側」があるような幻想を与えるけれども、本当はそんなものはないわけで、ただ、普通の人間がいるだけの話だ。
2013-09-18 07:15:55むだ(8)もっとも、「向こう側」があるという幻想を抱かせていた方が、それを利用できて便利だ、と考える人たちもあるかもしれぬ。「向こう側」と「こちら側」の緊張感や、差異、そこで生じる力学を利用した方が、自分自身の欲望を満たし、世の中を動かすテコを使える、という判断もあるかもしれぬ。
2013-09-18 07:17:28むだ(9)「現実」も、また「幻想」であるという一般論から言えば、「向こう側」もまた「現実」であると言える。肝心なことは、たとえ「向こう側」を使うにしても、それが「幻想」で、あるのはただ生身の人間だけであるということを、知っておくことだろう。それでこそ融通無碍で自由になれる。
2013-09-18 07:18:44