【twitter小説】暗中模索#1【ファンタジー】

魔法使いの街、帝都の政府機関『教導院』へと呼び出されたメルヴィ。そこで彼女は自分の夢の秘密を知らされます。小説アカウント @decay_world で公開した物語です。この話は#4まで続きます
減衰世界 ファンタジー Twitter小説
rikumo 585view 1コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-06 17:41:54
     メルヴィは冬の柔らかな朝日を受けてゆっくりと目覚めた。窓の外はくすんだ曇り空で若干薄暗い。木造アパートメントはすっかり熱を失い彼女の息は白かった。メルヴィはゆっくりベッドから這い出すと、部屋の中央にある鉄製ストーブに火を入れる。 1
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-06 17:48:06
     部屋が温まるまで、メルヴィは毛布を被り電影機を見ることにした。電影機のスイッチを入れると、いつものように朝のニュースが流れていた。ニュースキャスターは淡々と今日の一般市民の犠牲者を告げる。魔法使いに殺された市民たちだ。 2
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-06 17:55:03
     そう、ここは人類帝国の首都、帝都なのだ。街は魔法使いが支配し、重機や工場が不気味な機械の駆動音を響かせる。排ガスが空を曇り空に染め、重粒子の霧が都市を包みこむこの灰土地域最大の街……。 3
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-06 17:59:47
     ニュースキャスターは淡々と政府機関の連絡先を告げ、次のニュースの記事を読み上げる。死んでしまっても身寄りがいて死体が残っていれば政府が蘇生をしてくれるのだ。ただ金がかかる話ではあるが。その仕事は神の力を借りる。 4
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-06 18:05:04
     人類帝国政府の神の管轄は教導院だ。そして……メルヴィはいまその教導院の制服に袖を通す立場だ。 「今日も仕事多そうだなぁ……たくさん死んだしなぁ」  あらかたニュースを見たので、電影機を消し朝食の用意をする。 5
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-06 18:09:59
     キッチンの鍋には煮込みキノコの残りがある。鍋を温まってきたストーブの上に置き、キノコを加熱し始めた。しばらく時間がかかるので、メルヴィは洗面所へ足を運ぶ。鏡の前に立つと、メルヴィはため息をついた。 6
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-06 18:17:20
     メルヴィは魔法使いらしく、その青い前髪で目を隠している。髪から飛びだすのは長くとがった耳。彼女は遥か南方に生きる種族、耳長族の一人だ。若干疲れの見える頬を彼女は引っ張り、変な顔を作った。 7
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-06 18:23:10
     若さが失われていく感覚が歳を経るごとに強まっていく。メルヴィは今年で30歳になった。もう10年も帝都で変わらぬ日常を過ごしているのだ。帝都に着いたら月へ行けると信じていた。しかし現実は政府の閑職で事務仕事に追われる日々だ。 8
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-06 18:27:28
     いや、ミクロメガスが……メルヴィを何かと助けてくれる謎めいたこの青年が丁度教導院の所属の者で、メルヴィに仕事を斡旋してくれたからなんとか安定した仕事につけている。これは幸運なことではあったし、今の生活も悪くはないものだ。 9
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-06 18:31:17
     メルヴィはキッチンから皿を持ってストーブに戻り、暖まった煮込みキノコを食べ始めた。それを窓から眺めている一つの影があった。それは窓の物干し竿にぶら下がってメルヴィをじっと見ている……巨大な黒い蝙蝠だった。 10
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 20:05:20
     キノコをほおばりながらメルヴィは時間だけが過ぎていく感覚を感じていた。今までの10年がずっと続いていくような、そんな感覚。何も変わることなく、何も進むことなく歳をとっていくのだろうか。メルヴィは身震いした。 11
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 20:10:49
     じっと目をつむり襲いかかった悪夢に耐えた。私は進んでいるはずだ……実際彼女の秘密裏に作っている機械だっていつかは完成する。砂粒だって積み上げれば山になる日が来る……メルヴィはそうして生きてきた。だが、10年が過ぎてしまった。 12
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 20:16:06
     そうやって苦しみながらキノコを食べているメルヴィをじっと見ていた黒い大きな蝙蝠は、しばらく迷った後窓ガラスを翼で叩いた。メルヴィはようやくその蝙蝠の存在に気付き、恥ずかしそうに応える。 13
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 20:21:07
    「あ、アーサー、いつの間に……おいで」  メルヴィは窓を開け蝙蝠を中に招いた。蝙蝠は甲高い声で返事をする。 「メルヴィのお嬢さん、なかなか話しかけるタイミングが掴めなくて……」 「それで今日は何の用事?」 14
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 20:25:59
     この大きな黒い蝙蝠……アーサーはミクロメガスの伝令だった。帝都には電話があるが、こういった安いアパートメントなどにはまだ電話線が通っていなかった。そのため、魔法使いはよく蝙蝠やカラスを伝令として何匹も飼っているのだ。 15
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 20:34:25
     アーサーは足首に赤いタグがつけてあるのが目印だ。ミクロメガスはメルヴィを呼びつける際いつも彼を伝令に使う。ミクロメガスがメルヴィを呼びつける時は、いつも決まって変な用事の時だった。事務仕事など回ってきたことは一度も無い。 16
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 20:39:31
    「教導院の地下第七セクションで待っているそうです。すぐ来てほしいとミクロメガス様からの命令です」 「また仕事をキャンセルして呼び出すのね……ミクロメガスってそんなに偉いの?」  こういった用事がある時はいつも仕事が休みにされるのだ。 17
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 20:43:49
     忙しい部署ではあるが、こういった用事で急に仕事のシフトが変わることが良くある。メルヴィだけでなく、他の同僚が急に呼び出されて代わりにメルヴィが休日出勤したことも数え切れない。教導院とはそういう所なのだ。 18
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 20:48:22
     神との交渉、儀式全般、あらゆる神について教導院はその権限を持つ。教導院のエージェントは秘密裏に神と交渉し、その利益を帝国にもたらす。それが教導院だ。表向きは市民の蘇生をやっている閑職だが、その実態は構成員であるメルヴィにも掴め切れない。 19
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 20:56:20
    「そもそも第七セクションがあるなんて初めて聞いたわ……アーサー、案内してくれる?」 「お安いご用で。メルヴィお嬢。おや、着替えですが、では玄関で待っていましょう」  メルヴィが制服を取ったのに気付いてアーサーは飛んでいってしまった。 20
  • 減衰世界 @decay_world 2013-09-07 21:07:08
     メルヴィはいつものように教導院の制服に袖を通した。欠伸をしながら帰ったら何をしようかぼんやりと考えていた。今回の用事も、いつものようにすぐ済むものだと疑いも無く信じながら。 21

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