【ニンジャスレイヤー二次創作】 帰ってきた女 #1
おれか?おれはむかし、マッポだった。そのあとひとを付け回してかねを貰う仕事をしていたんだ。その仕事も上手くいかなくなって、こうやって食い詰めもんのヨージンボーさ。それ以上がしりたきゃそこらのヨタモノにききなよ。 1 #テキストカラテ
2012-09-23 21:25:32おれ自身の話をおれよりよっぽど上手く話してくれるぜ。客観的事実ってやつさ。 で、なんだってこんなになっちまったかだって?それはコイツのせいだよ、この甘い毒のせいだ。猛毒なのにとびきり甘い。性悪な女に似てる、離れたくても離れられない。 2 #テキストカラテ
2012-09-23 21:26:31まあ色々あるんだ、男には。それでも帰る場所を見つけられた。マンホールの下の湿って、小便臭い隠れ家だ。穴だらけのボロを着ちゃあいるが、仲間もできた。 3 #テキストカラテ
2012-09-23 21:38:23おれはクズだが、だれかを守る仕事を続けてるんだ。それだけはデッガー時代と変わらない。今でもおれはデッガーだ、マンホールの下のデッガーだ。 4 #テキストカラテ
2012-09-23 21:40:53あんたがどうにも食いつめて、明日の食べものにも困るようになったら家を売るといい。なに、しばらくしたら屋根のない生活にも慣れる。銀行でもなんでものき先を借りれば屋根のある寝ぐらも見つかるだろう。 6 #テキストカラテ
2012-09-26 01:36:12もっとも、太陽が昇る前にはそののき先も出ていかなきゃならない、さもなきゃ出勤してきたサラリマンにケツを蹴り上げられる。悪くすりゃ警備員にたこ殴りにされちまう。 7 #テキストカラテ
2012-09-26 01:38:55そんな生活てもかねを手に入れる方法はいくらかある。さしあたって、今日は病院でかねを稼ぐことにした。血液を売るんだ。俺のようにアンコ中毒でも、ズバリ中毒でも血液はうれるんだ。何せどんな混ざりものがあろうとも、オーガニックな血液というだけで価値はあるもんだ 8 #テキストカラテ
2012-09-28 01:58:44血を抜いた後はバイオウナギをおあがんなさい、と看護婦は言うが、それじゃせっかくのかねがあらかたなくなっちまう。代わりにタマゴかマグロでもつまんで、サケなりケモビールなり好きなものを飲めばいい 9 #テキストカラテ
2012-10-19 02:09:58というわけでおれは献血ルームに来たわけだ。当然ながら看護婦はおれの身なりを見て眉をしかめた。だがそれもほんのちょっとだ。自分の血を売ろうなんてやつは飲み台にこまったマケグミサラリマンかヨタモノ、さもなきゃおれみたいな宿なしばかりだ 10 #テキストカラテ
2013-01-09 23:39:07一人用タタミに寝そべると看護婦がおれの腕に輸血パックの針を突き刺していった。輸血パックには「とても悪し」と書かれている。だか、「とても悪し」以外の文字が書かれることはあるのだろうか?血は貴重だ、ネオサイタマでは血液を税金代わりに支払うこともできる #テキストカラテ 12
2013-01-13 14:18:18ぼんやりと輸血パックに流れる血をみていると、となりの男が俺を見ているのに気付いた。男は痩せていて顔は垢とぶしょう髭で判然としなかった。こいつは俺のひげっつらの向こうに何をみているんだ?しばらく待ったが男は無言のままだった。 #テキストカラテ 12
2013-01-20 00:26:46「ドーモ、インターラプター=サン」男がやっと口を開いた。開いた口からは意外な言葉がでてきた。「シーホースです」 #テキストカラテ 13
2013-01-26 00:16:07「あんた、俺の横に座ってたんだぜ手打ちの時に…」 シーホースと名乗った男の顔をまじまじとみて思い出した。確かにマルノウチ抗争の手打ちで俺の隣にすわった男だ。だが、その時はニンジャ装束を着、メンポをつけていた。 #テキストカラテ 14
2013-01-26 01:21:03だが今、目の前にいる男は半神的存在とも言われるニンジャとはほど遠かった。ただのやせっぽっちでうす汚れた男でしかなかった。おまけにその目はバリキかアンコか、なんらかの薬物でにごっていた。その目はこうも言っていた。 15
2013-02-28 23:45:49おれはうなずき返すとそれ以上なにも質問しなかった。言うべきことなど何もない。話がしたいのなら話したいやつがやればいいのだ。俺がシーホースにすべきことがあるなら、その話を聞くことだけだ。 17
2013-03-03 13:59:10「どうだい、おれ、変わったろう」シーホースがいった。 「そうだな、モータルに見えるよ。ヤク中そのものだ」 18
2013-03-03 23:02:30「スリケンは作れるのかい」シーホースがたずねた。 「もちろんだ」俺は手のひらを開き、スリケンを生成した。シーホースはニヤリと笑った。俺の手のひらの上のスリケンはフライパンにのせたバターみたいにすぐに崩れて消えた。拳を握り込むと指の隙間から粉になったスリケンがこぼれ落ちた 19
2013-03-09 14:34:54血を抜き、その代金を受け取った俺とシーホースはまずスシソバを食い、金を出し合ってサケとウイスキーを買い込んだ。それから早々に店じまいした銀行の軒先で酒もりをした。日が変わる前にケイビインに軒先から蹴り出されると、ツチノコ・ストリートの道ばたで気を失うまで飲んだ 21
2013-03-16 16:38:34昔ならウイスキーを三本空けたところで倒れることなどなかった。ニンジャ分解力がいくらでもアセトアルデヒドをやっつけてくれた。だが、いまや俺の体には、どれだけ血中カラテが残っているか?安酒場の飲み放題で出されるカクテルのアルコール濃度より低いのではないか? 22
2013-03-30 21:30:57けれども、それがなんだっていうんだ?目の前のこの気狂い水は、きのうも今日もあすのことも関係なくさせてくれる。それもたった一瓶でだ。 23
2013-03-30 21:53:37翌日になり、目を覚ましたシーホースは俺にこれからどうするのかとたずねた。残った金でオハギを買いに行くのだと答えるとシーホースは笑った。 「タノシイドリンクはやらないのかい?」 俺はやらないと答えた。 24
2013-04-03 22:36:48「ほんとかよ。いいもんだぜタノシイは。アンプル一本でこの世の悩みとはオサラバさ。それに俺達はニンジャだからな、ニンジャ解毒力があれば中毒にもならない」 半ば自分に言い聞かせるようだった。俺は首を横に振った。 「悪い気にならないでくれよ、俺にはアンコがよくきくってだけなんだ」25
2013-04-03 22:41:56