エンド・オブ・クッキー・ウォーズ ＃１
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劉度
@arther456
（９１式徹甲弾の代わりにスリケンが飛びましたが、#艦これ航海日誌 の長編SSが始まります。#ryudo_ss で実況や感想を書いていただけると、後で作者がｳﾋｮｵｵｵｵwwwとかなります。後でtogetterでまとめるんで、タグは付けずに本編を開始します）
2013-09-23 21:10:17
劉度
@arther456
リランカ島。かつては深海棲艦の泊地であったが、先日の航空戦により奪還、日本軍が接収しカスガダマ沖への前線基地として使用されている島である。奪還直後こそ無人だったものの、今では基地付近に店が建つほどには人が戻ってきている。カスガダマに向かう日本海軍がいい客になるのだ。1
2013-09-23 21:11:12
劉度
@arther456
「ぐぬー……」その艦隊を取り仕切る提督が、基地の一室で唸っていた。顎を乗せる机の上にあるのは、書類の山、山、山。いずれもここ数日のカスガダマ沖での戦闘データだ。勝利こそ重ねているものの、肝心の第一目標である装甲空母姫は取り逃がし続けている。2
2013-09-23 21:14:58
劉度
@arther456
カスガダマ沖の制空権、及び制海権を支配している彼女を撃沈しない限り、西方海域の確保はできない。そしてカスガダマ島にあるクッキーポータルを破壊することもできない。そう、異次元と繋がるクッキーポータルが、この西方海域での最重要目標だった。3
2013-09-23 21:18:51
劉度
@arther456
クッキー次元が発見されたのは、ほんの一週間ほど前のことである。次元に穴を開けてやってきた彼らは、世界に異常な数のクッキーをばら撒き、食糧価格を混乱させた。政府は彼らと交渉したが決裂、クッキー次元は深海棲艦と手を組み、圧倒的工業力を背景に侵略を開始した。4
2013-09-23 21:24:25
劉度
@arther456
深海棲艦が出てくれば、鎮守府もこの戦争に参加せざるを得ない。カスガダマ島のクッキーポータルを破壊するために西方海域の攻略を始めた鎮守府に立ちはだかったのが、装甲空母姫である。堅牢な装甲に加え、多数の航空機、大口径砲、魚雷発射管を備える海上要塞を、海軍はまだ撃破できなかった。5
2013-09-23 21:27:21
劉度
@arther456
「なあ提督よ、まだ出撃せんのか？」隣で茶をすする艦娘は、重巡洋艦の利根である。カスガダマ沖までの先導役、今回の作戦での艦隊の目を務めている。既に武装を終えて、後は出撃するだけなのだが、肝心の提督が未だに命令を下さないため、こうして泊地に留まっている。6
2013-09-23 21:31:12
劉度
@arther456
「案ずるより産むが易し、とにかく出撃してみればよいではないか」「沈められる確率があればそうするがねえ。あの全裸姫、夜戦に入った途端に逃げに回るんよ。こっちの主砲の射程の外に逃げられたら、どうしようもないでしょう？」「む、ぬう……」7
2013-09-23 21:34:19
劉度
@arther456
現在の最大の難点は、夜戦での決定力不足だった。昼間の航空戦、雷撃戦で取り巻きを倒し装甲空母姫に肉薄することはできる。だが夜の間に決定打を放てず、取り逃がしてしまうというのがいつものパターンだ。飛龍や赤城は夜間に力を発揮できないし、夜戦の切り札である北上や島風は潜水艦に阻まれる。8
2013-09-23 21:37:08
劉度
@arther456
「もっとこう、効率的な夜戦方法が欲しいんだよ。深海棲艦殺すべし、慈悲はないって感じの戦い方が」「ふむ……」利根が机の上の資料に目を通す。単縦陣を敷いて一列に敵陣に突っ込み、苛烈な航空攻撃と砲撃で損害を受けて撤退していく戦況図が何枚もある。9
2013-09-23 21:41:10
劉度
@arther456
「無くはないぞ。いいやり方が一つある」「え、マジで？」「うむ。じゃが下準備が必要じゃな。提督よ、響を連れてきてくれ。あと戦艦の者たちに、出撃を準備するよう声をかけておくといいぞ」「分かった！」そう言うと、提督は執務室の引き出しの中から一枚のスカートを取り出し、窓の外に掲げた。10
2013-09-23 21:45:58
劉度
@arther456
「……それは何じゃ」「響のスカートだ」「なんでそれを窓の外に掲げる？」「こうすれば、響がスカートを取りに部屋まで来るだろう？」「自分で呼びに行かんか変態提督がーっ！」「へぶうっ！」利根の美脚による飛び蹴りが、提督の頬に突き刺さった。11
2013-09-23 21:48:44
劉度
@arther456
カスガダマ島。リランカ島を占領し、カレー洋、ジャム島を脅かした深海棲艦東方艦隊の根拠地である。更に現在では別世界へ通じる次元の裂け目、通称クッキーゲートが開いており、深海棲艦の補給拠点にもなっている。13
2013-09-23 21:53:17
劉度
@arther456
そこに向けて飛んで行く物体がある。戦闘機を模した手のひらサイズの物体だ。これこそが、深海棲艦の艦載機である。ラグビーボールよりも小さいボディは、無機物と有機物が魔術的に絡み合った人智の及ばない構造によって、通常の戦闘機と同等の性能と破壊力を中に収めている。14
2013-09-23 21:57:35
劉度
@arther456
「来たわね」そしてそれを感じ取る存在が、この海域には鎮座している。洋上で仄かに赤く光る、一糸まとわぬ美貌の少女。だが彼女の背中からは禍々しい機械の砲塔が生えている。深海棲艦旗艦、人類側のコードネームは『装甲空母姫』。深海棲艦の中でも最強格の存在が、カスガダマ沖に出撃していた。15
2013-09-23 22:02:38
劉度
@arther456
帰ってきた偵察機は彼女の艤装に垂直着陸し、格納される。それと同時に偵察機が収集したデータが彼女に転送された。雲の多いカスガダマの空から、海上の様子を伺った偵察機は、３隻の戦艦の艦娘を発見していた。16
2013-09-23 22:06:14
劉度
@arther456
「戦艦？」それに注目した姫が、訝しげな声を上げる。普段の敵は、空母２隻を駆逐・巡洋艦で守る編成だが、今回は空母の姿が見当たらない。当然、制海権を奪われ航空攻撃にさらされているが、艦娘たちは三式弾を駆使した対空攻撃でそれを凌いでいるようであった。17
2013-09-23 22:08:39
劉度
@arther456
「血迷ったの？それとも、夜戦に賭けてきたのかしら？」指揮艦である彼女の頭脳には、あらゆる海戦データとそれに対する戦術が収まっている。以前の戦闘結果と今回の敵構成から、敵は夜戦によって彼女を撃沈させようとしていると判断した。同時にその作戦は失敗に終わるという計算もできた。18
2013-09-23 22:13:36
劉度
@arther456
「全艦、砲雷撃戦用意。深追いはせず、砲戦による迎撃に留めなさい」眼前に広がる深海棲艦の大艦隊に命じると、深海棲艦たちは彼女の思うままに動いた。駆逐艦、重雷装艦が前衛に壁を作り、後方から巡洋艦が砲撃を浴びせる。いかなる進撃をも弾き返すそれは、もはや海の防御陣地であった。19
2013-09-23 22:17:53