地獄のレジスタンス

クラパラ@もう都民じゃない @ClusterPardozer

風呂に入ってる間、「地獄の底の権利運動」という小ネタ電波を受信。

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仏教の世界観かな。地獄の一番下は、確か「阿鼻叫喚」という名前で、特に悪かった奴が送られる。そこでは焼かれたり潰されたり何分割にも裂かれたりして殺されて、だけどその直後復活して、それを何千年も繰り返すとか。

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その最下層の地獄で、ここしばらく異変が続いていた。それまでなすがままに送られて来て責め苦を受けていた亡者達が、集団で抵抗する様になり始めたのだ。彼らは数百人で鬼一体に襲いかかり、確実に倒してしまう。

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そして大鍋や針山も地面に設置されたバーナーもひっくり返して破壊し、数十万人にまで膨れ上がった亡者の列で閻魔庁を包囲しようと、落ちてきた穴を足場を組みつつ上昇する。途中で閻魔の部下達と戦闘を繰り返しながら。

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最後には圧倒的戦力差のある閻魔庁側に鎮圧され、一人残らずグチャグチャに惨殺される事となるが、何せ地獄最下層の亡者なもので、すぐに復活してしまう。基本的に無抵抗でも同じ目に合うのでどうせならって事で、亡者達の抵抗も何度でも繰り返される

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主張しているのは「阿鼻叫喚地獄での亡者達の待遇改善」をメインに、ここに落ちて来る様な亡者にも人間としての尊厳と権利は認められるべきだとかそういう感じのもの。

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「そういう感じ」というのは、やっぱりそこに来るような連中で既に死んでいるってのもあるから、中心に立っている連中以外はあんまり主張が統一されてなくてバラバラだから。どさくさに紛れて「もっと幼女の首を絞めさせろ」とか「国民国家独裁を」とか喚いてるバカもいたりする。

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何度も蜂起しては殺されて生き返ってと繰り返している内に、下っ端ではあるけど閻魔庁の書記官みたいな奴相手に団体交渉とか出来る所まで、抵抗運動は進展してもいた。しかし、そこまで理性的な亡者は別の世界への転生も早いので、顔ぶれが変わるのも早く、話自体はあまり進まない。

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そもそも誰がいつ、どうして「最下層地獄での権利運動」なんてものを考え付いたのかは鬼達にも当の亡者達にも謎のままだった。何となく「現世でそういうものが出て来たから、時代の流れって奴だろう」でみんな納得していたってのもあった。

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ここ数十年、抵抗運動のリーダーはその地獄には似つかわしくない雰囲気の美少女の亡者だった。彼女は先頭でも目立ったけど、亡者達への蜂起を呼び掛けて参加者を増やして行く事に力を注いでいた。多くの亡者がここにいる事も責苦を受けている事も「自業自得」「罪への当然の報い」で納得していた。

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彼女は「それは違う」と説得して行く。「何も考えず苦痛を受け入れているだけでは罪は償えない」「本当に罪を自覚し、それを浄めて行く為の環境が必要だし、私達にはそれを要求する権利がある」とか何とか。

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何でこんな人がこんな場所に来ているのかと不思議がられる事も多かったが、生前、ある小国の王女に生まれて贅沢と悪虐の限りを尽くし、若い内に毒殺された。死後も200年ばかりは黙って責め苦を受けていたが、それに疑問を持って抵抗に加わったとか自分では説明していた。

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もっとも、亡者達に一番効果のあった説得は、やはり「どっちにしても同じ目に会って復活しての繰り返しなんだから、だったら言いたい事言ってやりたい事やってそうなった方がお得じゃない？」というものだったが。しかし、亡者達が抵抗し始めてから出て来た変化と言うものもあった。

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「俺達にすらこれだけ主張して、認めさせられる権利や尊厳があるんだったら、俺達が生前苦しめたり殺したりして来た連中にはもっとあったって事なんじゃないか」という議論があちこちで交わされ始めたという事。

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そこで「だからやっぱり余計な抵抗は止めて刑に服そう」という意見にも「抵抗したからこそ、俺達はそういう事に目を向けられる様になったんだ」と抵抗を続けようと言う意見にも繋がった。そんな中で前のリーダーだった少女はいつのまにか姿が見えなくなり、中心にいるのが別の顔ぶれに替わっていた。

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少女の行方については、「別の世界に転生したんだろう」という憶測が語られただけで、やがて忘れ去られて行った。地獄の底では今日も、自由と待遇改善を求める暴動と鬼達による虐殺が起きていた。