三六協定(サブロク協定)とブラック企業
三六協定(1)誤解が蔓延しているので明記しておきたい。たとえばある企業の大多数の従業員を組織する労働組合が会社と合意して三六協定を結んで労基署に届け出たとする。そうすると、従業員には三六協定に記載された時間内で残業する義務が生じるだろうか。答えは「否」。
2013-09-25 11:43:27三六協定(2)三六協定とは、過半数組合もしくは過半数代表との間でこれを締結して労基署に受理されれば、使用者は、その三六協定に記載された範囲内での残業を労働者が行っても刑罰を受けない、というだけの意味であり、労働者側に残業義務を生じさせる効果はない。
2013-09-25 11:45:01三六協定(3)したがって、特に大企業などで労働組合が使用者と三六協定を締結し、そこにかなり長い残業時間が記載されていても、その意味は「そこまでの限度なら使用者を犯罪者にはしない」というだけのことである。労働者がどれだけの範囲で残業に応じることにするか三六協定では決まらない。
2013-09-25 11:47:49三六協定(4)労使関係の安定した企業では、三六協定には、緊急の場合まで想定して長く残業時間を記載しておき、具体的にどれだけの残業時間に応じることにするかは、あらためて労働協約できちんと決めている。三六協定に記載された時間の長さは、実際に行われている残業時間には直結しない。
2013-09-25 11:50:28三六協定(5)これは一例である。ブラック企業をめぐる議論を不毛にする要因の一つは、特に経営者や一部の経済学者などが、労基法や労契法の「基本のキ」も知らず、また実態をきちんと把握もせずに思い込みで硬直的イデオロギーを振りまくところにある。POSSEの諸君との差は実に大きい。
2013-09-25 11:53:16三六協定に書かれた残業時間で「大企業こそブラック企業」と主張することに、根拠がないということがわかりやすく説明されています。
2013-09-25 11:56:58追加(1)想定される「まっとうな」反論。「そうは言っても実際には三六協定どおりに長時間残業を容認している労働組合が多いでしょう。それに組合のない所ではまさに三六協定がそのまま実際の残業時間になっているのでは」 そうですね、現場では前ツイのような理解そのものが希薄ですしね。
2013-09-25 11:58:16追加(2)三六協定記載の「残業時間の限度」まで日常的に残業させている企業も多いであろう。しかし、それは過半数労組もしくは過半数代表が「そこまでなら犯罪にならない」ことを容認してあげている限りであり、労働組合が「残業時間をもっと短くしろ」と団交を求めれば使用者は断れない。
2013-09-25 12:03:04追加(3)また、残業時間をめぐって法的争いとなり、法廷や所定の紛争解決機関で議論となった場合には、三六協定が前ツイのような意味しかないことを前提のうえで審理されることは言うまでもない。会社内で経営者も労働組合も「思い込み」にとらわれていても、出る所に出ればそれは通用しない。
2013-09-25 12:05:10追加(4)もちろん課題は大きい。就業規則に三六協定の内容を転記し、それが合理的と認められれば、労働者には事実上三六協定どおりの残業に応じる義務が生じる(労契法7条)。しかし、あまりにも長い残業時間の記載は、三六協定としては受理されても、就業規則規定としての合理性は認められない。
2013-09-25 12:08:01追記(5)ブラック企業問題は、日本の恥部の一つである。関係者は、まずは思い込みやイデオロギーを廃し、現在の法制度、実態等を正確に把握し、冷静な議論を通じて労働現場の改善につとめてほしい。
2013-09-25 12:12:23(補足)
「労働協約は、法令に違反しない限り、職場で最高の規範となる。すなわち、労働協約と就業規則の内容が競合した場合、就業規則は労働協約に反してはならない(労働基準法第92条)。」(笹山尚人『人が壊れてゆく職場―自分を守るために何が必要か』光文社新書 2008年、p.172)
2013-09-25 13:06:33