返歌まとめ(原 沙良葉・藤崎しづく)

しづくさんと原の返歌を纏めました。 個人的記録です。
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楡の木陰で会いましょう(未完)(2012年7月の空想の街企画にて・なりきりリレー短歌小説)

しづくさん→朽木修(釦屋)
原→ハイディ・アルバトリア(釦屋の客・女子高生)

しづく @siduku_xxx

@ura_kato 夕刻の事である。仕事に飽きたボタン屋は、楡の木に寄り掛かって、ぼんやりとある少女のことを考えていた。浴衣にくるりと巻いたストールにとめつけた硝子ボタンを指先でくりくりといじる。硝子にはうつるだろうか俺の待つ無邪気なほどのきみの足音 #空想の街 #楡

2012-07-13 23:37:11
加藤レイ @ura_kato

チャイムがこだま。また縫い物?と呆れて聞く友人に一度だけ頷いて、教室を精一杯の早さで飛び出した。まだ、いるかな。いつもの木の下に。 夕焼けに溶けるどきどき楡の木に今日もあのひとはいるでしょうか  @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-13 23:41:54
しづく @siduku_xxx

@ura_kato 先日彼女が買って行ったのは、街の糸屋の七夕限定商品、"願望の糸"で刺繍をほどこしたボタンだった。学生だろうにしょっちゅう来てはボタンを眺めたり購入したりしていく。手芸が好きな子なのだろう。 やわらかく細い指先きみの手は誰を思って紡ぐのだろう #空想の街 #楡

2012-07-14 00:00:24
加藤レイ @ura_kato

走ると目立っちゃうから目立たないくらいの速さで歩く。あの人いるかな、いるかな、いるかな。急ごうとする足をゆっくりにするのはとても難しい。角を曲がって大きな楡の木、あ、いた! ローファーに翼がついているような。ふわふわ浮かぶこころとれんぼ。 @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-14 00:09:11
しづく @siduku_xxx

@ura_kato たたた、っと速めの足音に、ボタン屋は顔をあげた。彼女がきたようだ。*楡の木の遮る光 きみばかり輝いている飛び立つように #空想の街 #楡

2012-07-14 00:17:37
加藤レイ @ura_kato

半分走りながら駆け寄ると、彼が顔を上げて慌てて目を伏せた。眼鏡の奥の切れ長の目を、正面から見れたことは多分一度もない。「こんにちは、」小さな、小さな挨拶。*きらきらの硝子のボタン身に着けて佇む彼に熱くなる頬 @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-14 00:24:46
しづく @siduku_xxx

@ura_kato 風鈴のような声が、「こんにちは」と音を転がす。ボタン屋は目を伏せたまま頷いて、ボタンを並べつけたストールを少女にさしだした。単に、恥ずかしいのである。*こんにちは一つ言えない俺なのにどうしてこの子はわらうのだろう #空想の街 #楡

2012-07-14 00:36:08
加藤レイ @ura_kato

じゃら、とストールが鳴った。どきどきしてた胸がボタンを見てふわりと別の方向にやわらぐ。あ、あのボタンいいな。ボタンに触れようとして布越しに彼の体温を感じて、赤面した。*わざとではないけど 選ぶ釦たちは彼の指に近いものたち @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-14 00:45:04
しづく @siduku_xxx

@ura_kato 多くのボタンの上を少女の視線がふらりふらりとさまよう。迷っているようだ。ボタン屋は懐から新作の硝子ボタンとできたバレッタと、貝細工のボタンに革紐を通したアンクレットを取り出した。*蝶のごとさまよう視線 指先が近づく事に慣れない睫毛 #楡 #空想の街

2012-07-14 00:59:09
加藤レイ @ura_kato

差し出されたバレッタとアンクレットがとても好みで、わぁ、と思わず小さく声を上げてしまう。「えと。これ、は?」商品なら欲しいなあとじっと見つめてしまった。*夏の陽を纏うきらきらバレッタはなんだか姫の王冠みたい @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-14 01:03:56
しづく @siduku_xxx

@ura_kato わぁ、と声をあげた少女にほどけてしまいそうな表情を戻して、ボタン屋は少女に向き合う。「つけてみて。……よかったら」*キラキラと光を反射する硝子ボタンにうつる笑顔がほしい #空想の街 #楡

2012-07-14 01:15:51
加藤レイ @ura_kato

向き直る彼の姿勢に我に返って「いいんです、か?」商品でしょう、と呟く声は小さく視線は落ちたまま。ほんとはもっと可愛く嬉しそうに聞きたいのに。可愛げのある級友の姿が咄嗟に脳裏をよぎった。*臆病なインコみたいに片言の小さな声しか上げられなくて @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-14 01:26:57
しづく @siduku_xxx

@ura_kato 受け取ることを迷っているような少女の表情に、ボタン屋はついに目をそらした。好意の押し売りに過ぎないだろうにと、自嘲。けれど、ボタン屋は浴衣にこのバレッタをつけた少女の姿がみてみたかった。*さらさらと短い髪が風にふわりとかされてゆく彼女の髪が #空想の街 #楡

2012-07-14 01:39:13
加藤レイ @ura_kato

あ。視線が逸れたのを肌で感じて泣きたい気分になった。遠慮ばっかりでほんとに可愛げのない。「あの、」この二つの値段、とか、呟きかけた言葉は尻すぼみに消えた。ああ、恥ずかしい。泣きたい。*気に入ってます!とは言えず桃色の指先ばかり震える言葉 @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-14 01:43:41
しづく @siduku_xxx

@ura_kato 少女の目尻にうっすらと涙が浮かんで、ボタン屋の声はかたくなる。泣かせて、しまった。ボタン屋は後悔しながら、少女に声をかける。「……氷涼祭だろ、明日。浴衣に似合うかと思った」*泣かせたいわけじゃなかった似合うって思った。だけどどうすりゃ伝わる? #楡 #空想の街

2012-07-14 01:55:19
加藤レイ @ura_kato

「え?」予想外の言葉に思わず顔を上げる。ぱちん、と目が合った。その言葉の意味が咄嗟に理解できなくて「私に、です、か?」普段なら絶対に言えないセリフ。*ぽかんって時間が跳ねた滲んでた世界の端が吹っ飛ぶくらい @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-14 02:03:10
しづく @siduku_xxx

@ura_kato 少女は何が起こったか解らない様子でぱちぱちと瞬きをした。ボタン屋は悟る。嫌われたのではないらしい。彼は少女に目線を合わせて、「じゃなきゃストールにつけてる」――結局ひねた物言いをした。*スマートな誘い文句も浮かばない俺でよければどうか一緒に #楡 #空想の街

2012-07-14 02:15:25
加藤レイ @ura_kato

黒い目に覗きこまれて一気にパニックに陥った。言葉の意味を深く考える暇もないくらいに、カアアっと顔に血が上る。「あ、ありがとうございま、す」嬉しいです、と蚊の鳴くような声で。*黒々と宇宙の波に包まれてなんにもかんがえられないくらい @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-14 02:19:41
しづく @siduku_xxx

@ura_kato 小さな鈴がなるように、聞こえるか聞こえないかの嬉しいですの言葉を、もちろんボタン屋は受け止めた。「使い方がわからなかったら、明日祭りに行く前に寄って」*言い訳をひとつ。彼女に会うための理由をつくる。卑怯だろうか #楡 #空想の街

2012-07-14 02:31:47
加藤レイ @ura_kato

はい、と頷いてバレッタとアンクレットを受け取る。ただの親切だって、お得意様へのサービスだって、分かってるけど。ああ、幸せすぎて死んでしまいそう! *使い方分かっても分からなくっても(明日もたぶんここに来るのだ) @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-14 02:37:17
しづく @siduku_xxx

@ura_kato 革紐についた星のチャームがしゃらんと音をたてた。今にも触れそうだった指先を無意識に見やってボタン屋は我にかえる。すきだって言っているようなものじゃないか!*気付かれて会えなくなって嫌われてそしたら俺はどうしたらいい? #楡 #空想の街

2012-07-14 02:53:55
加藤レイ @ura_kato

チャームが音をたてるのと同時に彼が体を強張らせたようだった。え?と思った時には既にそれは消えた。革紐にそっと触れる。明日、一緒にお祭りを回るんだ。胸の中がふわふわして暖かい。*浮かれてる自覚があってもふわふわを抑えることは出来そうにない @siduku_xxx #空想の街 #楡

2012-07-14 03:00:04
しづく @siduku_xxx

@ura_kato 「…明日、いつもの時間くらいには、ここにいる。今日は白鴉のワタリだから、暗くなる前に帰った方がいい」頭上をくわ、と飛んでいった白鴉から、ボタン屋は少女を庇う。*かなしみも笑顔も込めた白硝子くわ、と飛んできみを過ぎゆく #楡 #空想の街

2012-07-14 03:20:15
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