彼女はAC(アダルトチルドレン) 人格はどう形成されるのか

アダルトチルドレン(AC)を自認していた「彼女」について。
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倉沢 繭樹 @mayuqix

 僕は大学時代、授業には出ず、アルバイトだけしていた時期があった。一昔前なら「スチューデント・アパシー(学生無気力症)」と呼ばれたような状態だ。その経験から、ひきこもり問題に関心を持ち、いくつかの支援団体に関わり、支援者や専門家の講演会やイベントにも参加するようになった。

2013-09-29 17:43:26
倉沢 繭樹 @mayuqix

精神科医の斎藤環先生の講演会に行ったこともあった。より専門的な知識を身につけて支援をしたい、と思い、心理学も勉強し始めた。NPOが開く心理学の講座にも通った。

2013-09-29 17:44:20
倉沢 繭樹 @mayuqix

 その講座で、ある女性に出会った。僕より年上だが、話してみると、幼い印象を受けるひとだった。座学だけではなく、ワークショップも行う講座だったが、彼女(以下、Sさん)は講師の先生に、自分で自分の感情がよくわからない、と訴えていた。あるとき、僕はSさんに声をかけ、映画を観に行った。

2013-09-29 17:45:20
倉沢 繭樹 @mayuqix

それから、時々彼女と会うようになった。Sさんの家庭環境を聞いてみると、なぜ彼女は自分の感情がわからないのか、幼い印象を与えるのかがわかった。Sさんの父親はアルコール依存症だった。しかし、祖父母も母親も、父親を強く責めたり、積極的に治したりしようとはせず、

2013-09-29 17:46:13
倉沢 繭樹 @mayuqix

波風立てずに耐えることで「普通の生活」を維持しようとした。父親を刺激しないように、張り詰めた生活が続いた。父親が粗暴な振る舞いをすると、彼女が祖父母や母親から叱責されることもあった。彼女は自分の思っていることを、家族に言えなくなっていった。

2013-09-29 17:47:03
倉沢 繭樹 @mayuqix

彼女がある程度成長した後、母親は離婚し、彼女とふたりで暮らすようになった。僕はSさんからその話を打ち明けられたとき、泣いた。

2013-09-29 17:47:33
倉沢 繭樹 @mayuqix

 Sさんは、父親、そしてその父親を抱え込んだ家族システムの影響を受けていた。Sさんは神経質だった。食事に行ったとき、店内の煙草の臭いがイヤだ、といって、店を変えたことがあった。僕も煙草を吸わないので、臭いは気になる方だが、やや首をかしげた。

2013-09-29 17:48:22
倉沢 繭樹 @mayuqix

 Sさんの誕生日に、ペンダントを贈ったことがあった。つけてあげようとすると、彼女はひどく嫌がった。彼女は手をつなぐことも嫌がった。身体的接触を忌避しているようだった。

2013-09-29 17:48:51
倉沢 繭樹 @mayuqix

 Sさんは小動物が好きだった。特にウサギが好きだった。友達が飼っているウサギの可愛らしさを嬉しそうに語っていた。ペットショップにウサギを見に行ったこともあった。

2013-09-29 17:49:19
倉沢 繭樹 @mayuqix

 彼女も自分の性格や行動の「おかしさ」に気づいていた。本を読んで勉強し、出した結論が「私はアダルトチルドレン(AC)なんだ」であった。彼女が読んだ本には、アルコール依存症者を抱える家族の子どもはACになりやすい、と書いてあったそうだ。僕も一応、彼女のその自己認識を受け入れた。

2013-09-29 17:49:56
倉沢 繭樹 @mayuqix

 僕は何かSさんの力になりたいと思った。彼女も自分を知り、変えたくて心理学を学んでいるようだった。力になる、といっても、「生兵法は怪我の元」。まだまだ初学者である自分にできることは、河合隼雄的に言えば「懸命に聴くこと」だけだと思った。彼女の話に耳を傾けた。

2013-09-29 17:50:28
倉沢 繭樹 @mayuqix

 心の働きや行動特徴の個人差が、どの程度遺伝的か、という問題は、行動遺伝学的に検討されてきた。行動遺伝学的方法には、遺伝的に等しい個体が異なった環境に置かれた場合の行動を比較するものや、遺伝的に特殊な個体が環境によってどのように表現型を変えるかを調べるものなどがあり、

2013-09-29 17:51:28
倉沢 繭樹 @mayuqix

前者の代表的なものが、双生児研究法である。双生児研究法とは、一卵性双生児のペアの間の類似度や二卵性双生児のペアの間の類似度をもとに、遺伝的規定性の強弱を知ろうというものだ。

2013-09-29 17:52:04
倉沢 繭樹 @mayuqix

 われわれの行動特徴の多くは、ひとつの遺伝子ではなく、複数の遺伝子(ポリジーン)によって生み出されると考えられる。ある行動特徴を生み出す遺伝子を多く持っていれば、その個人はその行動特徴を強く持つことになる。この考えに基づけば、

2013-09-29 17:52:52
倉沢 繭樹 @mayuqix

個人差はその行動特徴を生み出す遺伝子の数で捉えられることになる。このように、ひとつひとつの遺伝子の効果が加算的に表れる場合、そのような効果を相加的遺伝効果と呼ぶ。

2013-09-29 17:53:24
倉沢 繭樹 @mayuqix

 行動遺伝学では、行動特徴の類似を見るとき、比較する人々の遺伝的類似度を手がかりにする。例えば、二卵性双生児の遺伝子共有率は平均で50%、一卵性双生児では100%だということを利用する。もし双生児の類似が相加的遺伝効果によるなら、

2013-09-29 17:54:04
倉沢 繭樹 @mayuqix

一卵性と二卵性双生児間の類似の程度は2対1になるはずだ。もし比率がもっと小さくなるものがあるなら、遺伝の効果以上に2人を似せるような働きがあると判断される。それは普通、環境の効果だと考えられる(共有環境効果)。

2013-09-29 17:54:50
倉沢 繭樹 @mayuqix

逆に、比率がもっと大きくなる場合には、加算的でない遺伝の効果があると考えられる(非相加的遺伝効果)。

2013-09-29 17:55:15
倉沢 繭樹 @mayuqix

 ところで、類似の程度は、一卵性双生児でも100%にならないことが一般的だ。これは、相加的遺伝効果や共有環境効果のほかに、それぞれを似せないようにするような環境効果があることを示す(非共有環境効果)。

2013-09-29 17:55:50
倉沢 繭樹 @mayuqix

行動遺伝学では、ある行動特徴の個人差は、遺伝効果+共有環境効果+非共有環境効果として捉える。

2013-09-29 17:56:15
倉沢 繭樹 @mayuqix

 人格特性として様々なものが提起されているが、最も基本的だとされるものに、外向性と神経症傾向がある。宗教性や創造性にはあまり遺伝的影響は見られないが、外向性と神経質では知能や学業成績とともに遺伝による影響が強く見られる。

2013-09-29 17:56:59
倉沢 繭樹 @mayuqix

「心理的形質の遺伝率と共有環境、非共有環境の影響」(安藤、2000)によれば、宗教性=10%(遺伝率)+62%(共有環境)+28%(非共有環境)、創造性=22+39+39、知能=52+34+14、学業成績=38+31+31、外向性=49+2+49、

2013-09-29 17:58:22
倉沢 繭樹 @mayuqix

神経質=41+7+52、となっている。

2013-09-29 17:59:13
倉沢 繭樹 @mayuqix

 ちなみに、神経症傾向に遺伝要因が絡んでいることは双生児研究から明らかだが、遺伝子に関する研究から、神経症傾向と神経伝達物質、セロトニンのトランスポーター遺伝子との間に関連があることが示唆されている。

2013-09-29 18:00:03
倉沢 繭樹 @mayuqix

日本人には、不安傾向の強さと関連するとされるセロトニントランスポーター遺伝子の配列タイプを持つひとが非常に多いことがわかっている。また、日本人には、新奇性を求める傾向と関連するとされるドーパミン受容体遺伝子の配列を持つひとがほとんどいないこともわかっている。

2013-09-29 18:00:50