臨床レベルの染色体検査まとめ

原発事故にからんで染色体検査の話題が出ているので、日常的に検査を利用する立場からまとめてみました。ちょっと専門的すぎたかも。
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枇杷 @loquat_priest

臨床レベルで一般に利用可能な染色体検査としては、分染法とFISH (fluorescence in situ hybridization) 法がある。#染色体検査

2013-09-28 10:19:38
枇杷 @loquat_priest

分染法は、特定の色素で染色体を染めて、色素の濃淡で観察される縞模様(バンド)のパターンをもとに形態的に異常を検出する。ギムザ染色を使うG-分染法が一般的。必要に応じてQ, R, Cなどの分染法もある。#染色体検査

2013-09-28 10:19:54
枇杷 @loquat_priest

分染法はすべての染色体について、数の異常、大きな欠失または付加、主要な転座などを検出できるので、主にスクリーニング検査として用いられる。#染色体検査

2013-09-28 10:20:32
枇杷 @loquat_priest

弱点として、染色体が形態的に観察できなければ検査そのものができないので、分裂像が得られない場合は検査不能。また、バンドパターンの判別には熟練を要するし、微細な異常は検出できない。異常染色体が認められても、その由来が判定できないこともある。#染色体検査

2013-09-28 10:21:04
枇杷 @loquat_priest

FISH法は、特定の塩基配列を持つ短いDNA(プローブ)に蛍光色素をつけ、これを細胞のDNAに結合 hybridize させて、色素の発する蛍光(シグナル)を目印に染色体の異常を検出する方法。#染色体検査

2013-09-28 10:28:16
枇杷 @loquat_priest

FISH法ではプローブの配列の組み方とか、色素の異なる複数のプローブの組み合わせによって、いろいろな検査が可能になる。#染色体検査

2013-09-28 10:31:49
枇杷 @loquat_priest

例えば、5番染色体の短腕にあることが分かっている遺伝子の配列に対応する蛍光プローブを作って、これでFISH検査を行うと、正常細胞には2本の5番染色体があるので、観察したすべての細胞で2個の蛍光シグナルが認められる。#染色体検査

2013-09-28 10:36:09
枇杷 @loquat_priest

このとき、2個あるはずの蛍光シグナルが1個しか観察されない細胞があったら、その細胞の5番染色体のうち片方は短腕が欠けている(欠失)ことが推定される。#染色体検査

2013-09-28 10:41:34
枇杷 @loquat_priest

15番と17番染色体にある2つの遺伝子に対応するプローブを、それぞれ緑色と赤色の蛍光色素で作りFISH検査を行うと、正常なら緑と赤のシグナルが2つずつ認められる。もし緑赤1個黄色1個のシグナルがあれば、この2つの遺伝子の近くで染色体の転座が起こっていると考えられる。#染色体検査

2013-09-28 10:52:26
枇杷 @loquat_priest

FISH検査の利点。観察するのは蛍光シグナルなので、細胞分裂像が得られなくても間期核で検査ができる。分染法より短時間で可能。また分染法より多くの細胞を容易に観察できるので、定量性(異常を持つ細胞の割合を計る)に優れている。分染法で観察できない微細な異常も検出可能。#染色体検査

2013-09-28 10:59:31
枇杷 @loquat_priest

FISH法の弱点は、狙った特定の異常しか検出できないので、スクリーニングには向かないこと。また、形態が見られないので、染色体異常の推定はできても確定はできない。#染色体検査

2013-09-28 11:05:03
枇杷 @loquat_priest

さっきの5番の例で言うと、「短腕の欠失が推定される」と書いたが、短腕だけじゃなく5番全体まるごとの欠失かもしれない。#染色体検査

2013-09-28 11:06:47
枇杷 @loquat_priest

あとFISHの細かい欠点として、蛍光顕微鏡ではシグナルの重なりを立体的でなく平面で観察するので、結果には偽陽性が含まれること。黄色のシグナルに見えても、実際は奥行きの離れた緑と赤のシグナルの可能性がある。#染色体検査

2013-09-28 11:12:54
枇杷 @loquat_priest

FISH法の例。2番染色体にあるALKという遺伝子の中で、ほんの少しだけ離れた赤と緑のプローブを結合させた。正常な染色体は赤+緑で黄色のシグナルに見えるが、染色体異常でこの遺伝子が切断されると赤と緑が別々に見える。#染色体検査 http://t.co/yc8MKK2q4b

2013-09-29 22:24:59
枇杷 @loquat_priest

同じくFISH。15番と17番染色体にあるPMLとRARa遺伝子に対してプローブを結合させた。2つの遺伝子が融合するような染色体異常があると、黄色のシグナルが観察される。#染色体検査 http://t.co/bYMw6yMyvj

2013-09-29 22:30:14
枇杷 @loquat_priest

FISHの応用展開としてM (multicolor)-FISHやSKY (spectral karyotyping) がある。全染色体を多色の蛍光色素で染め分ける混合プローブを使って、1本1本の染色体をほぼ完全に同定できる。#染色体検査

2013-09-28 22:32:48
枇杷 @loquat_priest

SKYでは、分染法で検出できなかった小さな転座や、由来不明の染色体断片(マーカー染色体)も同定できる。すべての染色体を染めるのでスクリーニングにも使えないことはない。#染色体検査

2013-09-28 22:37:27
枇杷 @loquat_priest

最強の染色体検査と思えるが、SKYにも弱点はあり、染色体単位の染め分けなので同一染色体内の重複や欠失、逆位、相同染色体どうしの転座などは検出できない。分染法と同じく分裂像が得られない場合は検査できない。分染法を行った上でより詳細な解析が必要な場合に用いられる。#染色体検査

2013-09-28 22:41:34
枇杷 @loquat_priest

SKY法画像。右側に多色に染め分けられた染色体の蛍光画像が見える。左下は分染法同様に染色体別に並べ替えたもの。左上の色の混ざった球は分裂期でない核の像。#染色体検査 http://t.co/R69nqGOpKG

2013-09-29 22:47:36
枇杷 @loquat_priest

ヒトの目ではどの染色体がどの蛍光色素で染まっているか判別は難しいので、SKYの結果は蛍光スペクトルをコンピュータで解析し、この右下のような画像で報告する。#染色体検査 http://t.co/hRLywFg00O

2013-09-29 22:57:06
枇杷 @loquat_priest

どの染色体検査でも、ある程度の数の細胞を分析していくつに所見がみられたかを必ず記載する。#染色体検査

2013-09-28 23:23:45
枇杷 @loquat_priest

分析したすべての細胞で同じ所見が認められた場合、その所見はgermline(生まれつき)のもので、子孫に引き継がれうるものと考えられる。ただし、血液の病気の患者さんの血液細胞を分析したような場合を除く。#染色体検査

2013-09-28 23:28:28
枇杷 @loquat_priest

一部の細胞だけに所見がみられる場合は、その所見は体細胞で生じた変化で先天的ではなく、子孫に引き継がれることはないと考えられる。#染色体検査

2013-09-28 23:38:18