Nitoro's Strange Show　『ついてる』

nitoro（一日三錠） @NeoYoshikun

Nとは例のN少年のことだ。彼ももう成人している。 久しぶりに会ったのにNは相変わらずうさんくさかった。 僕はめっきり不思議なことは起きなくなったが、そっちのほうはと聞くと「俺自身ではないけど、こんなことがあったよ」と話をしてくれた。

nitoro（一日三錠） @NeoYoshikun

「この間、京都行ったんだよ。寺とか見にね。んで、たまーにだけど境内の中に占い屋あるんだよ。建物の角にさ、屋根あって寺の一部みたいな部屋で、占いやってんの。で、俺が行った寺にまさにそれがあったわけ。俺は寺見終わったあとにそれ見つけたから占い屋の死角でずーっと人の占い聞いてたんだよ」

nitoro（一日三錠） @NeoYoshikun

「どうも占ってるのはおばちゃんみたいで、しわがれた声で”アンタはこうだ、だからこうしなさい”とか色々言ってるのよ。まぁ、ああいうのって大体当たり障りのないこと言うだけで、そのおばちゃんもそうだったよ。特に面白いことはなかったんだけど」

nitoro（一日三錠） @NeoYoshikun

「まぁ暇つぶしだからそれでも聞いてたけど、ある時、様子が変わったんだよ。そのおばちゃんが結構大きな声で『ハァー、ついてる。アンタついてる。ほんとに、ほんとについてる』って占い相手に言ってたんだよ。俺、びっくりして、思わず部屋の様子見ちゃったんだよ」

nitoro（一日三錠） @NeoYoshikun

「どんな幸運な人なんだろうってんじゃなくて、何か様子が急に変わって不穏っていうか、そんな感じだったから見たんだけど。おばちゃんがさ、占い相手の、あぁ、若い女の人だった。その人の手を両手で包みこんでさすりながら頭を手にかなり近づけて拝むみたいに、ずーっと”ついてる、ついてる”って」

nitoro（一日三錠） @NeoYoshikun

「ずーっと言ってたんだよ。で、女の人は困っちゃってさ、占って欲しいみたいなんだけど、おばちゃんは『ついてる、ついてるから心配いらない』ってずっと言ってんの。女の人は困ったままで、俺と目が合ったんだけど俺どうしようもないから、知らん振りして死角に戻ったんだよ」

nitoro（一日三錠） @NeoYoshikun

「結局、占って貰えなかったみたいで。お金はいいって、そのまま女の人は嫌そうなつーか不安な顔して去ってたんだよ。俺、まだ死角にいたから聞いてたんだけど去り際にさ、おばちゃんが言ってたんだ。『お大事に』って」

nitoro（一日三錠） @NeoYoshikun

「まぁ、怖い話でもなんでもないんだけど、おかしくねぇ？ツイてるんだろ？お大事にって言うか？俺は不思議に思って、その後、おばちゃんの様子見たらさ、女の人の去ってく背中をずーっと見てたんだよ。真顔でさ。俺のこと気づいてたと思うんだけど、ずーっと見てて」

nitoro（一日三錠） @NeoYoshikun

「いやまぁ、単純に言ったらついてるって憑いてるってことなのかなーって…だけど、俺、おばちゃんがさ、アレ、あの女の人に自分の何かを憑けてんじゃねぇかなぁって。最後まで自分から離れたのを確認してたんじゃねぇかなぁ、って。そんだけだけど」