中世の古文書展はこんなに面白い

国立歴史民俗博物館で10月8日~12月1日まで開催される、空前の総合的中世文書展「中世の古文書」。同館教授の小島道裕さんによる見どころ解説をまとめました。
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中世の古文書 @kojima_sakura
歴博@佐倉 秋の企画展示「中世の古文書」に特設ホームページができましたhttp://t.co/iVuwO4t67v!まだ配布していないチラシも、一足早く御覧になれます。選りすぐりの文書10点をあしらってみましたので、どれが何だか、挑戦してみて下さい。答えは・・・書いてありますw。
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「中世の古文書」展のチラシhttp://t.co/dnXAN0pRrgを少しご解説しましょう。「この文書は誰が出した?」は、「誰が書いた」じゃダメ?とだいぶ言われたのですが、「書いた」だと全部自筆だと思われてしまいます。本人が実際に書いているのは、普通は花押くらいですから。
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チラシのまん中にある、地の部分にも文字がある文書は、これは全部自筆の源義経の書状です。チラシの裏には、署名部分の拡大もあります。内容は八条院(鳥羽上皇の娘)へ所領保護のために伊与守の立場で出した実務的なものですが、義経の全文自筆文書は他には高野山に一通あるだけで、珍しいものです。
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義経自筆書状の裏に文字があるのは、八条院庁で廃棄された後、反故紙として再利用され、仏教書の写本に使われたからです。他の八条院関連文書と一緒に書籍の裏になっていた「紙背文書」ですが、後に価値が見出されて、屏風に仕立てられた。展示では、そんな「古文書」としての面にも目を向けています。
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「中世の古文書」展チラシhttp://t.co/dnXAN0pRrg解説② 右側の、絵の下にある大きめの文書は、源頼朝下文(くだしぶみ)【神奈川県立博物館蔵】です。立派な花押が印象的で、文書の右端(袖)に書かれているので「袖判」と呼びます。文書には相手との関係が表現されますが、
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署名をどこに書くかは最も重要な問題です。通常は日付けの下(日下 にっか)で、これは律令の規定で官位の一番低い人間が署名する位置だったことによるので、そこを敢えてはずすと、相手より優位であることの表現になります。袖判は最も尊大なものですから、将軍が所領を与えるにはふさわしいのです。
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御家人の方も頼朝の袖判下文を有難がったのですが、頼朝は政所を開くと、所領安堵を政所下文に切り替えます。ところが一部の御家人は頼朝の花押がないことに納得せず、別途袖判下文ももらったことが知られていますが、この小山朝政はまさにその一例。同日付けの政所下文(複製)と共に展示いたします。
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頼朝の花押は「二合体(にごうたい)」と言って、「頼」の偏「束」と「朝」のつくり「月」を合わせたものです。今回の展示では花押が重要な意味を持つので、体験コーナーでは実際に花押を書いていただくことにしました。それで頼朝の花押はどう書くのか眺めていたのですが、
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頼朝の花押の書き方は、どうやらこうですね。これであなたも征夷大将軍になれます! http://t.co/UIA4VMi8eG
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歴博@佐倉「中世の古文書展」チラシ解説③ http://t.co/dnXAN0pRrgチラシの左側「企画展示」の上にある文書が「関東下知状」です。「鎌倉殿の仰せにより下知件の如し」という書止めは、将軍の命を受けて執権と連署が発給するという、北条氏による執権政治に適合した様式です。
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承前)署名は「御成敗式目」を制定した北条泰時(武蔵守)と叔父で初代連署の時房(相模守)。署名が「日下」ではなく次の行になっているのは、宛先の御家人に「俺の方が偉いんだぞ」と威張ったわけです。「平(花押)」という書き方は、まだ花押が実名だという観念が健在であることを示しています。
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「関東下知状」の「関東」は、鎌倉幕府の、という意味。六波羅探題や鎮西探題も下知状を出すので、それに対する呼び方です。なお、花押の右上に「北条泰時」「同時房」と書いてありますが、「押紙おしがみ」と言って、田中勘兵衛という収集家が貼った注釈です。これも今日に伝来した古文書の一部です。
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「中世の古文書」展チラシ解説④http://t.co/dnXAN0pRrgチラシのまん中、薄茶色の小さい文書は足利尊氏です。室町幕府は将軍親裁の体制だったので、将軍自身が署判した「御判御教書ごはんのみきょうしょ」が多く残されています。「御判御教書」にはタイプがいくつかありますが、
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承前)これは日付けの下に花押を書いた丁寧なもの。内容が「早く味方に来てくれ!」という軍勢催促、つまり依頼なので、そりゃ威張るわけにはいきません。紙の大きさは普通の1/8程で、緻密な紙に細字で書いてあり、密書と思われます。使者は捕まらないように届けないといけない。これがほんとのミッ
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足利尊氏の花押ですが、初名「髙氏」の「髙」に基づくと考えられており、書き方はこうなります。(上島有『中世花押の謎を解く―足利将軍家とその花押―』(山川出版社、2004年)に書き順が出ていました。)これでもあなたは征夷大将軍になれます! http://t.co/rar2RO8cZk
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尊氏の花押を書く時のポイントは・・・ゆっくり書くことです。尊氏の花押は、実は筆跡がいくつもあって、どうも花押まで右筆が書いちゃったものがかなりある。筆が遅くてよろけている花押は、普通は誰かが真似て書いたのでは?と考えるのですが、尊氏に限っては逆で、よろよろしている方が本人の花押。
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ほんとか?と思う人は、チラシの裏を見て下さい。法華経の奉納奥書に書いた、本文ともに間違いない自筆ですが、よろけてるし、実物を見ると、筆が途中で乾いた?と思えるほどゆっくり書いたことがわかります。これが尊氏という人です。外題も、自筆で間違いないと確信できる字です。ぜひ見て下さいね。
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尊氏はものに動じない人物だったようで、夢窓疎石の尊氏評(梅松論)にも、死を覚悟するような場面でも恐れることなく微笑んでいる、とあります。花押の筆の遅さもそのせいでしょう。戦争の時は、軍勢催促や、恩賞の先払い(展示する一つは合戦の前日です)などで大量の文書に急いでサインしなければ
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承前)ならなかったはずですが、慌てず騒がず、相変わらず花押をゆっくりゆっくり書いているものだから、右筆の方がたまらなくなって、「あの、急がないと・・・、私が書いちゃいますよ!」「そうか」みたいなことで、右筆が花押まで書くようになったのではないか、とこれは私の勝手な想像です。
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尊氏の花押の件から、「文書戦」という言葉が浮かびました。戦の時には、膨大な文書が行き交い、それによって勝敗が決し、また戦後のさまざまな動向が決まったはずです。誰を味方に付けるか、どんな恩賞を約束するか、指示を出し、戦功を認め、周囲の領主や権力者に結果を伝え、死んだ家臣を弔い・・・
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時には、敵陣をかいくぐって密書を運ぶ―「髻(もとどり)の綸旨」なんて言葉もあります―「不可能な使命」を帯びた密使が出没したり。戦に文書は欠かせませんし、見方を変えれば、戦は文書が起こし、文書のために行われている、と言っても過言ではないのかもしれません。文書の魔力、恐るべしです。
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「花押を書こう」その三 織田信長の花押は変化が激しいので、展示に複製品を出す永禄10年(1567)10月、岐阜(井之口)攻略直後に出した制札(復元の写真→http://t.co/JYM9ClXTzp)のものを使うと、これは佐藤進一氏が麒麟の「麟」と解明したもので(『花押を読む』)
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 織田信長花押(永禄10年<1567>10月)の書き方は、こうだと思います。 これであなたも・・・ http://t.co/Gm7y14nTDP
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この信長花押、左の方が「麟」の「鹿」、右の方が「米」の部分だそうです。 書いてみたら、③の後半から④にかけては、尊氏の最後の部分と同じであることがわかりました。独自なようでいて、それまでのものも使っている。信長は一足飛びに信長になったのではない、ということが分かります。
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コメント

たろー @hanpa64 2013年10月3日
「行書は手に持って書く」は目から鱗。しかし歴博かぁ。遠いなぁ。
Cal Que El Lulu-rain @senzaluna 2013年10月3日
図録だけでも、、、ゴクリ
Halfricesetitsmore @Halfriceset 2013年10月3日
「歴史というのは、つまるところ既得権をどうするかという問題じゃないかと思うんです。」これは至言!
neologcutter @neologcut_er 2013年10月3日
古文書を解読するのは相当難しそうですね…
甘茶 @amateur2010 2013年10月3日
面白いなぁ。銭をお足という理由はすごく納得。
橋本麻里 @hashimoto_tokyo 2013年10月5日
まとめ更新。ツイッターでの反応がとてもいいため、図録の通販は予約受付を前倒しとのこと。
かーる٩( ˘ω˘ )و @ka_ru0603 2013年10月8日
これ面白いなぁ。歴史好き!ではないけれど、非常に興味深いです。都心からでもすぐ行けるから今週行ってみよう^^
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